第153話 帰還事業の準備 伝統貴族達との会合編 9月上旬

<<サイレン>>

さて、今日は午後からもお仕事だ。


バルバロ邸での会合を終えた俺とツツは、一路タマクロー邸に向かっていた。

あそこには『ラボ』があるし、ディーもいる。


今から我が移動砦の様子見兼、ディーに日本人帰還事業の相談をする予定だ。


「ここからでも見えるな。あの移動砦。ん? 『ラボ』に竜車が何台か止まってんな。どうしたんだ?」


「あのマークはブレブナー家とランカスター家ですね」


「そうだな。他にも何台かあるな。敷地にテーブルと椅子を並べてお茶してる。自由人だな結構」


「そうですね。何でしょう」


どうやら野外で茶会を開いている様子。う~む、アルセロールがいる。あいつ目立つし。

ちなみに、今はスマイリーセットはもう止めている。


「お? 誰か走ってきた。あれはフランだな」


・・・

<<ラボの手前100mくらい>>


「はぁはぁ・・艦長。伯爵様達がお集まりになられてて、あの、艦長をお待ちです」


「はあ? 目的は俺か。何の話だろ」


向こうを見ると、ドネリーが手を振っている。ディーもいるな。

何なんだよまったく。


とはいえ、走って行くのも何か変に思ったので、100mの道のりをフランと一緒に気持ち早歩きする。


「フラン、あそこにいるのは誰と誰だ?」


「はい。ブレブナー伯爵と、ランカスター伯爵、タイガ伯爵にライン伯爵です」


「最初の2人は分かるけど。サイレンの伝統貴族だし。他は何用だろう」


そういえば、ライン伯爵は少し前に遠くで目にしたな。


「用事は私には分かりません」


「タイガはともかくラインはどういうつもりだよ。全く。まあいいや。直接話しよう。今日は色々と用事があったのに」


しかし、あれがタイガ伯爵かぁ。デカい。魔王くらいのサイズがある。アルセロールの父親なだけはある。


・・・


テーブル近くに着くと、ブレブナー家のドネリーが切り出す。


「よう。タビラ。待ってたぜ。そこに座ってくれ。堅苦しくするな。お前が貴族の礼儀など知らないことは皆分かっているつもりだ」


「おうドネリー。座るのはいいんだが、今日は一体どうしたんだ? ここは『ラボ』で借りてはいるけど、タマクロー家の土地だぞ?」


そう言いながら、椅子にドカッと座る。この辺、俺もイセに似てきた。尻は太くないけど。


しょっちゅう体を入れ替わっているからか、動作が似てくるようだ。

古城にいた時にも、夜とかはちょくちょく会っていたし。


「タビラ。伝統貴族伯爵家が話があるそうだぞ? さて、どうする?」


「ディー。お前までどうしたんだ」


「いや、ここを貸してくれというもんでな。天気もいいし、外で茶会だ」


野外だというのに、メイドさん達がきびきびと茶会のために動いている。


「ふむ」


「思った以上に肝は据わっておるようだ。何、日本出身の英雄殿に一度ご挨拶をと思ってな。ブレブナー伯爵だ。よろしく、タビラ殿。少佐と呼んだ方が良いか?」


実はイセの真似をしているだけで、そこまで肝は据わっていない。だけど、日本のサラリーマンを舐めるなよ? 偉い人との打ち合せ、プレゼン、これまで乗り越えてきたのだ。


「よろしくお願いします。ブレブナー伯爵。少佐はマ国での階級なのですが、どうぞご自由に」


とりあえず、近くにいた長身の御仁と握手を交す。ドネリーとオルティナの父親だろう。


「がはは。わしは少佐と呼ばせてもらうよ。ランカスター伯爵だ。息子と娘がお世話になっておる」


背は俺より少し高い位だが、背筋がシャンと伸びた老紳士だ。隣にネメアも座っている。


「タイガ伯爵けろ。今日は娘が其方そなたにお世話になっていると聞いてな。彼らと共に来てしまった」


タイガ伯爵近くだとさらにデカい! 高さは桜子と同じくらいだけど、横にも大きい。


「ライン伯爵です。その節はどうも。グ国とうちとの関係は取り調べ結果が全てだ。どうか信じて欲しい。私も、勘当したとは言え娘が転がり込んだ先が気になってな。迷惑を掛けていないだろうか」


ライン伯爵は少し小太りだ。娘達の不祥事のせいで絞られたのだろうか、若干やつれて見える。


「ああ、はい。皆さんの娘さんがたは確かにこの移動砦のクルーとして働いて貰っていますね。大変助かっておりますし、先日の神聖グィネヴィア帝国との移動砦戦では見事に打ち勝ってみせました」


「そうだ! その話を聞きたかったんだ。妹に聞いても機密があるかもしれないって、教えてくれないんだぜ?」


「機密? ああ、航続距離とか機動性とかは機密だ。だけど、戦いの話とかなら別に話してもいいと思う」


「よし。まずはその話から聞かせてくれ。おい。タビラ少佐にお茶を出さないか!」


お茶が出てくる。もう逃げられないだろうな。うちのクルー達の女性陣は移動砦の方に行ってしまった。


「ふぅ~~まあいっか。ツツ、マ国側でまずい話があったら止めてくれよ。じゃあ、まずは・・・」


・・・


「と、言うわけで、砲撃戦の末、敵移動砦の弾幕を削った後、私が接近して魔力を抜いて湖に沈めて鹵獲完了です」


「がははは。その時の移動砦の指揮はブレブナー家のオルティナ嬢、操縦士はバルバロ家のフランシスカ、通信士は我がランカスター家のマシュリーが務めたと申すのか。よし! でかした! 流石はランカスター家の娘だ。で、どうだった? 娘は。その戦いぶりは」


「ああ、はい。彼女、綺麗で良く通る声ですよね。戦闘中も落ち着いていました。移動砦って、通信士が良くないとちゃんと動かないと思います」


「そうかそうか。あの子がのぉ。近衛に入ったと思ったら首になって、そうしたら今度はネメアの知り合いのところに就職するとかでな。それがなんと移動砦のクルーだった時は驚いたもんだ。しかも、ラメヒー王国の軍人でさえもほとんど経験していない対移動砦戦闘で見事勝利するとは。武人の誉れだ」


マシュリーの父親であるランカスター伯爵は、結構なご高齢だと思う。その御仁が涙を流しながら喜んでいる。娘の活躍が嬉しいらしい。


「ごめん、タビラ。うちは武家なんだ。だから嬉しくてたまらないんだよ」とはランカスター家次男のネメアの言。


「対移動砦戦闘を経験したクルーは貴重だ。しかも完全勝利に近い形で終えている。そこにはマ国の百鬼隊や貴方を始めとする日本人達がいたのは確かだが、それでも、その艦の副艦長を我が娘が務めたとはな」


「はい。戦闘中、操縦室のキャプテンシートに座っていたのがオルティナです。戦闘中、一糸乱れず移動砦の統制が取れていたのは、彼女の能力や人柄あっての事でしょう」


オルティナは副艦長の任を負ってから、乗組員皆の体調や精神状態に常に気を配るようになった。先の言はリップサービスではなく、7、8割は本心だ。あの移動砦は、間違い無く彼女で回っている。


「ほほう。少佐殿にそう言って貰えると父親として嬉しいな・・・」


ブレブナー伯爵は感慨深げに瞳を閉じる。


「あ、あの、うちのアルセロールはどうだったけろ? お役にたてたのだろうか」


それは少し答えにくい。桜子と入れ替わっていたし。


「アルセロールは、当時特務に就いていました。移動砦戦ではなく、別のところで活躍していました」


本当は大使館でごろごろしていたみたいだけど。まあ、ちゃんと最後は駆けつけてきてくれたし、その後の内業では大活躍してくれた。それに、あいつがいたから、桜子にいい思い出を残してやることができた。


「特務けろか。対移動砦戦は経験していないけろか・・・」


「そうですね。ただ、訓練を依頼したウスピラさんが言うには、彼女は万能タイプで、キャプテン、操縦士、通信士、どこの席も勤まるそうです。普段の彼女の役目は、誰かの休憩中にそのサポートに入るような立ち位置を考えています。それから書類仕事が得意なので、結構助かっています」


「ウスピラ氏・・・そうですか。うちの娘が迷惑になっていないだけでもよしとするけろ」


「・・・あ、あのぉ・・・うちのバカ娘は、その、いや、勘当はしたのですが」


「ああ、彼女ですか。彼女は年長者として皆をよく纏めてくれています。移動砦戦では雷系の魔術で大活躍でした。書類仕事でも良く私をサポートしてくれています」


まさか、お前の娘の糸目は俺の大事な魔石をおもちゃ代わりにして毎日ナニしてます、何て言えない。


「そ、そうですか。それなら良いのですが」


さて、これで話は一巡したのかな? もう解放してくれるのかな?

でも、皆解散しようとはしない。まだ話足りないのだろうか。


「親父、言いにくいなら俺から切り出すぜ。幾分いくぶん虫のいい話だからな。タビラよ、落ち着いて聞いてくれ」


「何だよ、ドネリー。言いにくいってよ」


「実はな、武功を立てたあいつらをよ、実家に戻したいって要望があるんだ。あいつらが近衛兵を首になったとき、勘当寸前までいったあいつらを2つ返事で拾ってくれたのはタビラだ。そして、自費で訓練してくれて。先の戦闘もお前がいたからこそ無事に勝ち戦を経験できた。それは分かっている」


「・・・移動砦のクルーが必要なのか?」


「知っているんだろう? マ国からユフイン戦線の移動砦10基を譲り受けて、さらに先の戦闘で鹵獲した2基もラメヒー王国が運用する。人手はいくらあっても足りない。そこに、実戦証明付きの大貴族家出身の武人がいてみろよ。放ってはおかないだろうぜ」


事情は分かる。クルーの質の面で言うと、俺の移動砦はかなり贅沢だ。だが、少し身勝手すぎやしないか? いや、ひょっとして、日本人帰還情報のせいなのか?


「一応、言っておくと、俺は日本には帰らない。いや、一時帰国とかはするかもしれないけど、基本的にはこの世界にいるつもりだし、あの移動砦も今後運用し続ける」


「タビラ・・・」


ビンゴか。いずれ帰る俺に娘を付けておくよりも、実家の役に立つ使い方をしたいというのは理解できる。おそらく、この国に移動砦が12基も増えたら、伯爵クラスなら1基ずつは回って来るのだろう。

公爵と伯爵、それから辺境伯で10家しかないのだし。


さて、どうしよう。どうしたらいいのだろうか。足りない頭で考える。


俺の目的は長寿モンスターの魔石ハント。それから優秀な彼女らを手放したくない。

それに、リスクの分散。俺は別に富を独占したいわけじゃない。

ならば、彼らを味方にする。そのためにはエサだ。


エサなら、ちょうどいい物がある。


ツツ。ヤバイ話があるなら止めてくれよ? と心の中で念じる。

ふぅ~~今日は、ディーに会いに来ただけなのに・・・


「この国の中枢は、中央集権化について何処まで本気なんだろうか」


「ぶふ! 何をいきなり・・・・」


「何? 中央集権化だと? どういうことだ?」


「ふん。我がラインやヘレナに対する態度をみたら明白だろうに。この国は中央集権化をしたがっておるよ。異世界との外交も始まるしな。で? それがどう娘たちのことに繋がるんだ?」


「タビラ、あのなぁ、中央集権化っていうのは、国家として多かれ少なかれその野望は持っているもんだ。それは分かって欲しい。一方で、早急な中央集権化は血が流れることも分かっている。だから、それはすぐにはしないだろう」


「理屈は分かるぞ、ティラネディーア殿よ。しかし、タビラ殿が何故ここでこの事を話題にしたのだ?」


「ああ、もう。だろう。マ国にとっては秘密じゃないけど、今のラメヒー王国にとっては秘密なんだ。どうすんだよ全く」


ディーに、にらみつけられる。顔が綺麗なのでにらみつけられても全く嫌な気がしない。


「タビラさん。マ国としては、ラメヒー王国に対し『魔王の魔道具』は別に秘密ではありません。ここにいらっしゃるのは上位貴族。あの話をされても問題ないでしょう」


「ツツ殿。どういう事でしょうか。それに魔王ですと?」


「私は、優秀なあの子達とこれからも一緒に仕事をしたい。はっきり言いますと、寿が欲しいのです。そして、同時にここにいる人達からも協力も得たい。その2つが望みです。そのための方策があります」


「長寿モンスターの魔石か・・・タビラ殿よ。その理由と、方策を聞かせてくれないだろうか」


テーブルの向いでは、ディーが苦笑いの表情で『やれやれ』のポーズをする。どうやら話していいらしい。

俺は、本日二度目の『魔王の魔道具』の解説を始めた。


・・・


「なに? 本当なのか? それでは、あらゆる生産活動が効率よく・・・いや、とりわけ、移動に掛かるコストが極端に少なくなるのか。そうか。それで中央集権化が進むと。分かったぞ。その魔力変換装置に長寿モンスターの魔石が必要なんだな?」


「そうですね。私はその長寿モンスターの魔石ハントに出かけたい。皆さんの協力が得られれば、さぞかしはかどるでしょう」


「ぐふふふ。とんだ策士けろ。その話が本当なら、今後はその魔石の保有量で国力が決定すると言っても過言ではないけろ。だから、ラメヒー王家では極秘裏に魔石ハントを進めようとしているけろ」


「なるほど、合点がいった。なぜ、私達に低空飛行型の移動砦を押しつけたのか。そして、なぜ自分たちであの高高度飛行が可能な2基を独占したのか。それに、その移動砦のクルーは極秘で集めていると聞く。低空型の移動砦では険しい山岳地帯には入れぬ。全ては巨大魔石確保に先手を打つためだったとしたら・・・」


「なるほどのう。私達が与えられた低空旧式艦おもちゃで遊んでおるうちに、自分たちは本当の利益を得る訳か」


ここで、ダメ押しをしておこう。


「『魔王の魔道具』は、私が魔王に頼めば、直ぐに造ってくれます。もちろん材料とお金があればですけど。今、ネックになっているのは長寿モンスターの魔石なのです。お金は魔石があれば何とでもなりますので。だから私は、優秀なクルーと魔石ハントに出たいのです」


「ぐふふふふ。もちろん、私達も魔石が欲しいけろ。それがあれば、膨大な輸送力を保持できる可能性があるけろ。いや、私も国家が強くなるのに協力は惜しまないけろ。だが、今まで積み上げてきた一族の誇りを奪われる訳にはいかないけろ。例え、この国が中央集権化した新政府に移行しても、そこでの影響力を保持したいけろ。タビラ殿、もう、自分の移動砦のクルーとして、娘を返せとは言わないけろ。というか、嫁に貰ってほしいけろ。魔石ハントの協力も政治的なバックアップもするけろ。だから、長寿モンスターの魔石を少し分けて欲しいけろ。出来ればその魔道具が造れる魔王殿に渡りを付けてほしいけろ」


「おい、タイガ伯爵よ。抜け駆けするなよ。我がブレブナーも同じ気持ちだ。というかな。貴殿が早く娘をお手つきにしてくれていたら、こんな話はしなかったのだがな」


「ランカスターも同じだ。どうだ? わしの娘はおっぱいが大きいぞ。うん?」


「あ、あの、わたしは、その、娘の糸目はすでにタビラ殿に処女を捧げたと主張しているのですが、いや、はい、嘘ですか、そうですか。でも、私もですね、娘を出すのと同程度以上のことは援助いたしますので。はい・・・もし、可能なら、魔石をと・・・」


ライン伯爵も、無事にここに居て、ここに呼ばれている時点でそこまで怪しい人物ではないのだろう。


糸目とその姉が変だっただけで。


「よし。ここで一つの方針が示された。我々伯爵4家は、娘をクルーとして、希望に応じて嫁として出す。さらには、求められれば政治的なバックアップも行おう。お主へのバックアップのことは、息子を助けて貰ったり娘を拾って貰った時点で考えておったことだがな。そのバックアップの程度が飛躍的に上がったと思って貰って結構だ」


「そうだ。ブレブナー家も同じだ。その代わり・・・」


「はい。魔石の利権は、支援に応じて分配したいと思います。正直に言いますと、欲をかいてこんなものを独占すると身を滅ぼすと思っていたところでして。だから、利権を分配、いや、リスクが分散できて私も安心しています」


「ぐふふふふ。よし。今日の所は解散するけろ。タビラ殿、今度タイガに来るけろ。たらふくご馳走するけろ」


「がはははは。じゃあ、私達も帰るとしよう」


「あ、あの、私も仲間ってことでいいんでしょう、か?」


「ライン伯爵、まあ、はい」


「そうですか、安心しました。では、私もこれで。ラインを通過される際には是非お寄りください。補給から何からいたしますので」


伯爵4人組とその息子達が帰って行き、テーブルにはディーと俺の2人が残る。

ところで、ルクセンとケイヒン、それからバルバロは仲間ハズレでいいのだろうか。まあ、バルバロは配慮しようかな。お世話になっているし。


・・・


「ふぅ~~。流石に伯爵家が4人も集まると結構な迫力だな。まあ、この枠組みは、お前も損はしないんじゃないか? 信頼出来るクルーとバックアップがあるからこそ、そんな高価な魔石を集めることができる」


俺に富が集中することのリスクは考えてはいたけど、今日、一気に前進した感じになった。


「そうだな。そうそう。元々ここに来たのは日本人帰還の話だったんだ。異世界と繋がる『パラレル・ゲート』を、一時的にせよこの国のどこかに作りたいのと、転送の透明性を示したいのでラメヒー王国にもゲート・キーパーを出して欲しいのと、そもそもラメヒー王国が日本人の帰還や日本国との国交についてどう思っているのかを確認したいんだけど」


「ああ、待て待て、その辺は兄上を呼ぼう。まったくせっかちなヤツだ。まあ、せっかちなのは嫌いじゃないが」


ディーにせっかちと言われるとは思わなかった。


その後、ディーとディーの兄3人で話し合った。ゲートの設置、ゲート・キーパーの派遣等、国に根回しして貰えることになった。


・・・

<<温泉アナザルーム>>


俺は、ディーと2人でここの温泉に浸かっていた。

あの後、ディーの兄、タマクロー領主代行との会談を終え、バルバロ邸で有志がお帰りなさい会を開いてくれて、夜も更け、今ここにいる。


ちなみに、今の俺の体はイセだ。

イセは俺の体に入るとさっさとどこかに転移してしまった。

今、マ国は神聖グィネヴィア帝国中の人類未踏の地に飛んで行って、長寿モンスターの魔石を狩りまくっているらしい。


最初は近場ではなく、敵国の周りから魔石資源をぶんどるつもりのようだ。


「ふ~~~あいかわらず、いい湯だな」


ちゃぷん。 湯船でディーがうつ伏せから仰向けになる。


「そうだな、ディー・・・まあ、ラメヒー王国が日本国と友好関係を結びたいって思っててくれて良かった。これで異世界にいる日本人600人が板挟みにわなくて済む」


「当然の結論だ。異世界にある技術や知識は、国家としてとても魅力的だからな」


「そっか。ゲート・キーパーの派遣と『パラレル・ゲート』の設置についても前向きな回答だったし、後は承認をもらうだけか」


「ははは、その辺は律儀なことだな。別に言わなくてもばれなかっただろうに」


「まあ、裏でこそこそやりたくないというか。こういうことはちゃんとしておかないと」


「日本人は真面目だな。で、だな・・・お昼の話、もちろん、タマクロー家の分け前はあるんだろう?」


ディーは再びお湯の中でうつ伏せになると、こっちに寄ってくる。


「そうだな。ロングバレル2挺はタマクロー家からの貸与品だし。それに、お前の・・・むぐ」


「ふふふん。あいつらが娘を差し出したんだ。うちも出さなきゃな」


いや、今キスしたの、イセの体だぞ? 

でも、思わず、ディーの背中に手を回して少し抱き寄せてしまった。


「そうだな・・・まあ、今はゆっくり温泉を堪能させてくれ・・・」


ぷかぷかと温泉に浮かびながら、満天の星を楽しんだ。

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