第80話 潜入! ケツ協会 7月中旬

お披露目会は、お開きに。


今度の日曜日に再集合する約束をして解散。


で、俺はなぜだか目久美先生に呼ばれて弓道場にいる。もう夕暮れだというのに。


「あの、先輩、いや、多比良さんの奥様から、やっと、許可をいただきまして。今回は私のわがままにお付き合いいただきまして、ありがとうございます」


は? またぞろ嫁が勝手に何か約束したのか? 前回は動くまと

今回もか? そういえば思い出してきた。この先生、人を弓で射るときに興奮する変態だった。


だいたい、なんで、俺の事を嫁が勝手に許可するんだよ。

ちょっと、イライラしてきた。


「私、彼氏が出来なくって。他の先生達は、みんなここに来て恋人作ったのに。聞いてくださいよ。殆どの先生が生徒に手を出してるんですよ? でも、私はぜんぜんモテなくって。だって、体育の先生だなんて、この国にニーズは無いんですもの。それで、奥さんに相談したんです」


「え~つと。どういう意味です?」


「ですから、私と、その一晩だけ恋人になってくださるって。八重先輩、多比良さんの相手するの嫌で、ずっとレスなんでしょ? だから、代りにって。その、あたなだったら、私も嬉しいし、あなたも私と気持ちいいこと出来るんだし、WinWinでしょ?」


「それを、うちの嫁が許可したと?」


「はい」


「俺は・・・不倫はしない主義だ」


「これは不倫じゃありません。お互い補完し合うというか。だって、奥さんが許可してるんですよ? いいですよね。やったって。この世界。魔術で避妊できるんだし。元の世界にだって、スワッピングとかありますし」


「え? そうなの?」


魔術避妊は知らなかった。


「いいですよねぇ。お金持ちの奥さんって。先輩にはツバメがいるし。しかも結構人気の人。私には。誰もいないんです。この世界で体育なんて謎学問ですし、私、美人じゃないから。だから、だから、先輩にお願いして、溜ってる旦那さんを分けて貰おうと・・・」


考えるな。あまり考えてはいけない。考えては・・・冷静になれ。何も、考えてはいけない。


一瞬で思考を0にする。


「後ろを、向いて」


「は、はい!」


先生は嬉しそうに後ろを向く。


「手を、膝の上に」


「はぁ! な、何故? 何を!?」


「『何を』じゃ無いだろ? 早くして」


「は、はい!」


「障壁を、消して」


「は、はぃい!」


俺は、目久美先生の顎の下に手をやり、少しだけ魔力を馴染ませる。


「か! かは。な、なんですか? これは、どうなって。は、はぁ」


「先生は、何処がいいんですか? 脇腹ですか? つま先ですか? それとも・・・・お尻ですか?」


「は、はぁん! どこって? ああ!」


「言わないと止めます」


「お、お尻。お尻です。ですから、お尻を!」


パアン! 軽く叩く。


「あ、ああ。もっと、もっと強く! つよくぅ!」


ゴス! 軽く後ろからお尻に膝蹴りを入れる。


「あ、ああ、凄い。でも、もっと、強い方がいいです」


俺は、魔力をもう少しだけ強く出し入れする。


「が、はあ、ぁぁあああ。ああ!?」


そして、耳元でささやく。


「貴女のお尻は、むずむずですか? それとも、ぴりぴりですか?」


「わ、わたしはぁ! 両方、両方です!」


なるほど。


「分かりました。貴女には、こうです」


目久美先生の体から手を離し、魔力障壁が生えてくるように。


そして・・・


「ひぃ!? な、何を、なにをぉ!!」


俺の手には植物の茎。それには、リバーサーペントの皮が、はめてあった。


目久美先生が嬉しそうな声を上げている。


反重力、注入・・・


植物の茎から触手が出現する。


太さはバット。形はメイス。


今回はサービスで柔らか仕様だ。


「あ、ああはあぁ!? それ、それでぇ!? 何を、何をする気なんですかぁ?」


「ケツを、ぶつ」


「ああ、ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。やっと、やっと、理解者が。ああ、わたしを分かってくれる人がぁ。あらわえたぁはあぁ」


この人も、業を背負っている。


そう思うと、俺は何だか、この人を憎めなくなった。


人は一人では生きていけない。だから、人は、同じような人達で連んで生き抜いていく。そして、この人は何処にも行き場が無く、最後に何故か俺を頼ってきた。


「障壁を張れ。最大限だ」


「は!? はい!」


俺は弓道場のギミックを作動させる。

瞬時に網型の触手が展開される。


俺は、バットサイズメイス型触手を目久美先生の魔術障壁に当てる。


「は、はぁなにを。これはぁ!?」


触手に送る魔力を小刻みに変えてみる。


「あ、ばばあっば、かはあ。な、なに、ああを。あ。」


俺は、触手を目久美先生の障壁に絡みつける。


何度も、念入りに。


時間をかけて十分馴染ませる。こうやると、もう、触手と相手の障壁は離れない。


バットサイズの触手を両手で持つ。


「オラア!」


そのままフルスイング!


目久美先生の体が宙を舞う。

先生の魔術障壁は、俺のメイスに残ったまま。

すなわち。


「おっほほほほおおおおおおお!!」


障壁を一瞬で剝かれた先生は、円弧を描き、最後はゴルフ用の網に引っかかる。


「ちぇすとぉ~~!」


反重力で加速。目久美先生の尻を目がけ、上段の一撃!


ゴズゥ!


「かっ・・かは・・・・・・・・・・っ・」 


目久美先生は、網に引っかかったまま、体をびくんびくんと痙攣させ始める。

そして、ズボンの色が変わっていく。


「先生・・・」


俺は、気絶した先生を抱きかかえる。


「先生・・・貴女は、変態なんかじゃありません」


そして、夕焼けの、サイレンの上空へ飛び立った。


・・・・


あ、目を開きそう。


「大丈夫ですか? 先生」


「あ、ああ、多比良さん、ですか? ここは、私は? あのとき」


「ああ、あの時は、まあ、忘れましょう。あの時のことは」


「あ、あははは。そう、そうですよね。私みたいな変態なんて、何処にも行き場なんて、ないですよね・・・」


「ん? いえ、忘れて欲しいのは、先生がおしっこを漏らした事です」


「はあ? あ、そういえば、そんな気も。でも、濡れていませんけど?」


「まあ、それは洗浄魔術で」


「あははは。では、あれは、あの、お尻をぶってくれたことは、事実なんですか?」


「事実です」


「では、あの、私の、その、性癖のことは?」


「はい。解っています。貴女は、別に特殊性癖の持ち主ではありません。普通です」


「は、はああ。ありがとうございます。私。もう、どうしようもなくって。お尻が、お尻をぶたれるのが良くって。だから、ずっと、彼氏も出来なくて。うう、うううぅぅうう」


目久美先生が泣きそうだったので、胸を貸してあげる。

先生は、俺の胸の中でわんわん泣いた。

それにしても、この人のこの性癖。異世界に来てからではなくて、元々だったのか。


少し落ち着いたところで声をかける。


「目久美先生。ここの人達と、出会ってみませんか? ここの、協会の人達に」


「協会? 多比良さん・・・協会とは? それに一体、ここは何処ですか?」


「ここは、ケツ協会」


「ケツ協会?」


「お尻に、思うところのある人達の、集まりです。では、今から案内しましょう」


・・・・・・・


「タビラ。キミはやっぱりヒーローだったね」


「おう。お前はやっぱりすげぇやつだぜ。参加者全員を、一撃だ」


「・・・急にすまなかったな」


「いや、急だったからこその、良さもあるのさ。みんな楽しい思いをした。それは、キミのおかげだ。感謝しかないよ」


「目久美先生はどうなった?」


「彼女の才能は凄いよ。今は取り合いになっているようだ。不思議な方法で勝者を決めているみたい。確か、『じゃんけん』?」


じゃんけんか・・・・まあ、彼女が良ければ、それもよし。


「彼女は、お尻で感じる自分を、どこか特殊な物として恥ていたようだ。そこが不憫で・・・」


「いや、タビラ。よくぞ、彼女を紹介してくれた。彼女のことはおれ達に任せろ。もう大丈夫だ。絶対に悪いようにはしない」


「ありがとう。ドネリー」


「ああ、タビラ。今日のお前の一撃も効いたぜ。そして、触手を応用した技の数々。お前こそ、ヒーローだ」


「だから、わたしは初めから言っているでしょ。彼には才能があるって」


「ああ、ネメ。疑って済まない。一番は俺と思っていたんだがな。お前には負けたぜタビラ。お前が、今のケツ協会のヒーロー役ナンバーワンだ。間違いないぜ」


まさか、俺にこんな才能が隠れていたとはな。


「・・・ありがたく受け取っておくよ。ドネリ-。そしてネメア。彼女のことは、頼む。今まで自分が何でお尻なのか、散々悩んできた人なんだ」


「心配するな。おれ達に任せろ。彼女の居場所は、ここだ」


「良かった」


俺は、何とか彼女の居場所を作ることができた。


強く生きて欲しい。

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