第22話 さようならダンジョン!我々の冒険はこれにて終了!
森の中にある遺跡に足を踏み入れた3人は、その内部を探索することにした。
「本当に、何もない感じね・・・」
遺跡の中は、他の石造りの建物と変わらず、石畳の廊下に、外の壁に施されていた装飾品とうが飾ってあり。
古代の文字なのか絵なのかよくわからないものがいっぱい飾ってあった。
「なんか、よくわかんない美術館に入ったみたいな感覚ね・・・」
マリエラは壁画を見ては、それが何であるかを考えてみるが。
なんなのかはさっぱりわからなかった。
スマホで調べようとしたが、この遺跡関連のwilkiならび情報サイトは
文字数が多く、いちいち読んでると、頭が痛くなるので、正直調べる気もあまり起きなかった。
「どうだ?楽しいか?」
ウーノは2人に問いかけた。
「全然・・・」
「わたしは、それなりに」
メイリンも遠慮気味に言っている辺り、まあここが何であれ、あまりおもしろい場所ではないのは、ウーノ自身がよく知っていた。
幸いモンスターの類は居らず、3人は安全に遺跡内を見てまわれた。
トラップなどの仕掛けがしてあるのかとも思いきや、特に罠はなく、逆にそれがこの遺跡には何かお宝があるというわけではないということを来訪者に伝えているようだった。
クソつまんねぇなあ。
それがウーノの感想だった。
遺跡を見て回っていると、ふと目に入った壁画に、メイリンは足を止めた。
「どうした?メイリン?」
ウーノも一緒になってメイリンが見つめる壁画を目にすると。
どこかで見たような気がするものを見つけた。
「ねえ、これって・・・竜王ファブニールじゃない?」
メイリンはこの壁画に描かれている、竜のようなモノが、火を吹いて何かを焼き払っている様子から、自身が体験した竜王ファブニールを思い返していた。
確かに、最初に来た時は気づかなかったが、メイリンがいうようにファブニールにも見える。
「ね、ねえ・・・よく見たらさ、ここに祭壇みたいのない?」
マリエラは何かに気づいたのか、2人に呼びかける。
マリエラが気づいたその祭壇は、以前何処かで見かけたものに似ていた。
「これって・・・あの焼け焦げた髑髏があった祭壇に似てない?」
その言葉を聞き、3人は急にこの遺跡から嫌な物を感じ取るようになった。
確かにこの祭壇はあの髑髏があった祭壇に似ている・・・。
ウーノはギョロギョロと周りを見渡すと、ふうぅと一息ついた。
「お、脅かすなよ、一瞬あの髑髏があるんじゃないかと探したじゃないかよ」
少しおどけてみせたが、それでも冷や汗は止まらない。
メイリンを見ると、明らかに顔がこわばっている。
「よし、もういいだろ!スマホも見つけたしさ!ここに居てもしょうがないから帰ろうぜ!」
帰還を提案すると、メイリンもマリエラもそれを直ぐに受け入れた。
「わ、忘れ物ないな?また取りに来るなんてまっぴらごめんだからな」
ウーノは2人に忘れ物がないかを訪ねた。
「だいじょうぶ、もしスマホをおとしても、あたらしいの買う」
「わ、私もそうする・・・」
「よし、じゃあ帰還の巻物を使うぞ!!」
ウーノはカバンから帰還の呪文が施された巻物を取り出す。
あとはこれを広げて、帰還の呪文を声に出せば、ダンジョンから抜け出せて地上の神殿へと転送される。
早速、巻物を広げようとした瞬間だった。
「グルルルルル」
低い唸り声のようなものが上から聞こえてきた。
ウーノは勢いよく上を向くとそこには、大きな天窓から首を覗かせるグリーンドラゴンの姿があった。
「げっ!!」
ウーノが思わず声を上げると、それに気づいたドラゴンは、大きく口を開け始めた。
「マズイ!!アイツここで火を吐くぞ!!」
3人は一目散に、走り出した。
間一髪、炎は回避できたが、ドラゴンは天窓から身体をくぐらせて遺跡内に侵入してきた。
「そうか!あいつここを根城にしてるんだ!だからここに他のモンスターがよりついてないんだ!」
走りながらウーノはその事に合点がいった。
本来このような遺跡は何かしらのモンスターが住み着くものであるが。
道中にその気配が一切なかったのは、明らかにそれらを捕食する凶悪なものが住み着いているからに他ならなかった。
たまたま最初にここを探索した時、ドラゴンに出くわさなかったというだけで、ウーノはここが安全だと勘違いしていた。
「とりあえず遺跡の出口まで走るぞ!」
ウーノ達は全速力で走る。
後ろを振り返ることはしないが、近づいてくるドスンドスンという足音と
時折感じる、熱気に、すぐ近くまでドラゴンが迫っていることがひしひしと伝わってくる。
足を止めたら死ぬ。
遺跡の出口を目指して走っていると、少しだけ開けた場所に出くわした。
「お前ら、そのまま走れ!俺がなんとかする!!」
ウーノはここが2人を逃がす最後のチャンスだと、振り返り、ドラゴンの方に対峙する。
ウーノが振り返ると、高さは4mはあろうドラゴンが口をあけて見下ろしていた。
「ウーノ!」
「良いから走れ!なんなら途中で帰還の巻物使っても良い!!」
帰還の巻物は人数分ある、一人それぞれ1本持ってる。
ならあいつらが、帰還することを信じて、ここは少しでも時間を稼ぐしかない。
ドラゴンは勢いよく首を前に突き出し、ウーノを噛み砕こうとしてきた。
ウーノは身軽さには自信がある、回避に専念するだけなら問題はない。
ドラゴンの噛み付きを素早く
なるべく、距離を離しておきたいからだ。
ウーノにはドラゴンを攻撃するすべがなかった。
剣は落とし、トライデントはクラーケン討伐時に使ってしまい、今は何も武器を持っていない。
だが、それが幸いして、避ける事に専念はできる。
いざとなれば、このまま逃げてきた方向に逆走して、ドラゴンが入ってきた天窓まで駆け上がれば、外には脱出できる。
ただ、そこまで体力が持つかが問題だ・・・。
ドラゴンは口を開けると、鼻で息を吸い込みだした。
「よし、ブレスだ!」
ドラゴンのブレスは息を吸って吐くまでの予備動作がある、それまでに一旦距離を離せばドラゴンから逃げれるぞ。
ウーノはすぐに駆け出し、ドラゴンから距離をとった。
しかし、ドラゴンはウーノではなく、メイリンとマリエラがいる方向に向かって火を放ったのだ。
「なにいいい!?」
なんでそっちの方向に火を放つ!?
あいつら逃げてないのか!?
ウーノは思わず叫んだ
「メイリン!!!!」
だが、炎の向こうからはマリエラが突っ込んできたのだ。
炎はマリエラだけを綺麗に避けるようにして2つに別れている。
「その首もらった!」
マリエラは勢いよく飛び上がり、ドラゴンの首めがけて剣を突き立てる。
しかし、竜の頑丈な骨に阻まれ、あと一歩足りなかった。
「そんな、鱗の隙間は通したのに!?」
マリエラは突き刺さる剣を抜こうとするも、すぐにドラゴンが首を振り壁に叩きつけられた。
「がはっあ!!」
叩きつけられた衝撃に血を吹き出す。
なんで逃げなかったんだ、とウーノはすぐに、マリエラの元に向かう。
「グガガガガアアアアアアア」
とドラゴンは怒り狂いながら、地面に倒れ込むマリエラに向かって爪を突き立てる。
このままでは間に合わない、それでもウーノは走り、滑り込むようにしてマリエラに覆いかぶさる。
ダメだ、ふたりとも貫かれて終わる。
そう覚悟した時、まばゆい閃光と共に、ドラゴンめがけて高威力の魔力の槍が放たれた。
「わたしをわすれないで」
メイリンはドラゴンに対して、貫通力のある槍状にした魔力のエネルギー攻撃を浴びせる。
特に属性のある攻撃ではないが、それでも単純な威力は術者の魔力に比例する。
メイリンの魔力ならば、竜の鱗を貫くことは容易だろう。
ドラゴンはメイリンに向き直ると、羽を広げ、風圧を利用して飛びかかってきた。
流石にドラゴンの質量をもってすれば、メイリンの魔術だけではどうしようもできない。
メイリンは下敷きこそ免れたが、ドラゴンのボディプレスの衝撃に吹き飛ばされてしまう。
もはやここまで、とメイリンも諦めかけたが。
ウーノはまだ諦めていなかった。
ウーノは壁を蹴り、勢いをつけてドラゴンの首に飛びついた。
マリエラが刺した剣がまだ喉元に刺さっている。
それを掴むと、今度はドラゴンの首を蹴り、その反動で剣を引き抜いた。
剣は抜け、そこからドラゴンの血が勢いよく吹き出る。
「マリエラ、借りるぞ!」
ウーノはマリエラの剣を握り、ドラゴンに向き直る。
両者共ににらみ合いが続く。
どちらも、うかつに動くことはできないでいる。
ドラゴンもまた、深手を負っており、先程までの勢いは鳴りを潜め。
小さいながらも、油断はできない相手と認識していた。
両者が睨み合ってからどのくらい経っただろうか
先に動いたのはドラゴンだった。
しかし、ドラゴンはウーノに襲いかからず、踵を返すようにしてウーノ達から離れていった。
どうやら、お互いこれ以上争うのは無駄であると、ドラゴンは悟ったのであろう。
ドラゴンが去ったことで、緊張の糸がほぐれ、ウーノは膝から崩れ落ちる。
危なかった、本当にここで全滅するところだった。
ウーノはメイリンに近寄ると、腰が抜けただけで大丈夫だと言った。
対するマリエラは、ドラゴンに叩きつけられたことで、身体の骨が何箇所か折れているようだった。
メイリンはすぐに、回復呪文とアイテムを併用してマリエラの傷を癒やす。
「なんで、火の中に突っ込んできたんだよ・・・」
マリエラに向かってウーノは呆れたように言う
「あんた・・・武器、もってないでしょ・・・それに、メイリンが炎にたいする呪術を使ってくれたから・・・」
なるほど、それでドラゴンのブレスがマリエラに当たってなかったのか。
ある程度の回復が終わると、ウーノはすぐに帰還の巻物を広げた。
「もうコレ以上はごめんだ、例え何かを落とそうが、命じゃなかったらそれでいい」
「上手い事、言ったつもり?」
「うるせえ、お前は安静にしてろ」
最後の最後で痛い目にあったが、これでようやく旅を終えることができる。
「メイリン、マリエラ、本当にすまなかったな。」
「本当そうよ、ああ、痛い痛い」
「ふふっ、そこまで悪態つければ大丈夫そうね」
「そして本当にありがとう、これで本当に終わりだ。今ここに帰還の呪文を唱え、神殿へと帰還する。」
ウーノが巻物に書かれた呪文を唱えると、
三人の身体が徐々に光りだしていく、やがて体が浮くような感覚に陥ると
粒子状になり、巻物の中へと吸い込まれていく。
吸い込まれた後、巻物は自然に消滅していく。
後には何も残さずに。
これにてウーノ達3人のダンジョン探索は終了した。
たった一つ
ドラゴンとの戦闘で落とした、あるものを除いて・・・。
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