第20話 灯台下暗し、僕たちの探していたものはここにあったんだ!
ついにダンジョン最下層である水神遺跡に到着した3人は、小舟を陸地へと着岸させ。
ウーノが落としたであろう、水神遺跡のピラミッドらしき建物のほうへと向かうのだった。
――――――
ウーノはメイリンのスマホから、自分のSNSアカウントを見せてもらった。
『ダンジョン踏破なう』
バカそうな面でおちゃらけて自撮り写真をアップしているウーノの呟き。
その写真から彼が最後に撮影した場所を導き出す。
「これって、結構高い場所から撮ってない?」
マリエラは写真の背景が、石造りの街並みが遠巻きに見えていることに気づいた。
「おっ、よく気がついたな?そう、ズバリこれはアソコだよ」
ウーノが指差した先は、まさしく石造りのピラミッドとも言える建築物だった。
「あれがこの辺りで、一番高い場所だからな、せっかくだし景色のいいところで写真を取りたかったんだよ。」
「うへー、結構距離もあるし、登るのも大変そうじゃない?」
「ああ、実際大変だった・・・」
ウーノ達がいる場所から、ピラミッドはかなり先に見える、それも結構な急勾配の作りにもなっている。
「でも・・・俺、帰還の術の巻物を使ったのは頂上じゃないんだよな・・・」
「えっ、じゃあどこでつかったの?」
ウーノはあの時の記憶を思い出そうとする。
確か、あの時は・・・
――――――
「ダンジョンソロ攻略完了っと・・・あーー、それにしてもいい景色だなぁ」
ピラミッドの頂上から見下ろす景色は、雄大な自然に飲み込まれた遺跡群と巨大な湖がおりなす、とても神秘的な風景だった。
達成感も得て、景色も見れて満足したことで、そろそろ帰ろうかと思った矢先。
ふと麓の方を見ると、
どうやら、そこにも遺跡があるらしい。
結構近い場所だし、最後に少し見ていくか・・・
ウーノは、ピラミッドに積まれている石を、軽く蹴りながらピョンピョンと下へと下っていった。
――――――
「あっ、そうだ!最後は頂上から見えた森に、なんか建物があるの見つけたんだ、そして、そこに行ったんだわ!」
「つまり、最後はそこで帰還したってこと?」
「ああ、そうだ・・・確か、中はごく普通の遺跡で・・・特にめぼしいものもないから、遺跡の中盤くらいで帰還したんだったかな?」
つまり、ウーノがスマホを落とした場所は、ピラミッドの頂上から、その遺跡までの間に落としていることになる。
探す範囲は狭めることが出来たが、ピラミッドまでの道は長い。
「はぁー、しんどい・・・」
マリエラはピラミッドに向かう道すがら、なんども愚痴をこぼす。
しかし、マリエラが愚痴をこぼすのも無理はない。
意外なことに、ここは湿っぽいというか、湿度が高い。
地上でいうジャングルのような場所に環境が近く、生い茂る草木も、どこか熱帯を思わせる。
「あついね、ここ」
「ああ、地下だから日差しが強いわけじゃないんだけど、空気が温かいんだよな」
ウーノもメイリンも、この特殊な環境に汗をにじませていた。
しかも、道中はゆっくりとであはあるが、坂道になっており、その緩やかな
ウーノ達は早朝からクラーケン討伐をしてから、この場所に来ている。
疲労が貯まるのも無理はない。
「ねえ、少し休もうよ・・・」
「マリエラの意見に賛成」
「わたしも・・・ふう」
3人はとりあえず、適当に座れそうな岩などを見つけ、そこに腰掛けることにした。
「はぁー疲れた・・・」
それにしても、周りは木々が生い茂っているし、本当に地下世界なのか疑うほど自然が豊かである。
とはいえ、先程までは地下とは思えない、大海原にいたわけなのだが。
天を仰げば、空も微妙に晴れてるように見える。
実際の空ではないが、天井を覆う苔なのか菌なのか分からないが、それらがいい感じに空っぽさを醸し出している。
特にモンスターもいないしで、穏やかな雰囲気ではあるが。
それでもここは最下層のダンジョン。
あまり気を抜いては居られないはずだが、どうも体力が減っていて気が入らない。
「なんか食べるものある?」
マリエラに言われて、それぞれはカバンを漁る。
お土産にもらった乾物やら塩辛やらはあるが、どれもこれだけ食べるにはもったいないと言うか、キツイ。
「す、スルメぐらいしか・・・」
マリエラはウーノに渡されたスルメをしゃぶる。
「あー・・・昨日はあんなに豪華な食事をしていたのに、なんで今はスルメをしゃぶってるんだろ・・・」
仰向けになりながら、スルメをしゃぶり、うつろな目で天を見つめる。
なんて虚しいのだろう、一度ダンジョンで贅沢を覚えてしまったことで、本来はスルメを食べれること自体が贅沢なハズなのに。
そんな幸せすら感じることができなくなってしまった。
ああー・・・鳥が飛んでる・・・このまま鳥でも捕まえて焼き鳥にして食べようかな
そういえば、メイリンが焼き鳥のタレを買ってたような・・・
そうよ、ダンジョン探索なんだから、サバイバルも必要よ。
ここは何か食べれそうなのを狩って、串焼きにして英気を養おうかしら。
じゃあ何を狩ろうかしら、ああ鳥食べたいなぁ、できれば大きくて食べごたえのある大きな奴。
そう、今空を飛んでるあのくらいデカイやつ・・・
「えっ!?ちょっとまってアレって!?」
マリエラはガバっと起きて、空を飛ぶ巨大な影を指差す。
マリエラが指差す先には、巨大な翼と長い尾をくねらせて飛ぶ、緑色のドラゴンの姿があった。
「おっ、グリーンドラゴンだな?」
ウーノは落ち着いた様子でそれを眺めていた。
「ド、ドラゴンじゃない!ここってドラゴン出るの!?」
「ああ、出るぞ、王侯騎士団が竜泉を占領してから、ドラゴンは色んな所に出るようになったな。」
王侯騎士団が竜泉を占領したことで、本来その場所を根城にしていたワイバーンやドラゴン達は行き場をなくし。
ダンジョン内のいろいろな場所に住み着くようになった。
ある意味では生態系の破壊であり、ダンジョンのバランスを壊す行為である。
王侯騎士団の竜泉占領があまり良い評判にならないのは、こういう行為が根幹にある。
「まあ、元からこのダンジョンは自然豊かだから、ドラゴンが住み着くには悪くない場所なんだろうよ。」
「・・・こわい」
メイリンは竜王の一見で、ドラゴンに恐怖を感じるようになった。
そんなメイリンを見て、ウーノは申し訳ない顔を見せる。
「まあ、こちらからちょっかいを出さなければ、襲ってはこないよ」
「ドラゴンかー・・・美味しいのかしら?」
「えっ?」
「あっ、ううん、なんでもない、気にしないで」
マリエラは改めてここがダンジョン最下層であると認識できた。
気の緩みは、空を飛ぶドラゴンで正され、マリエラは背筋を伸ばし、休息を終え。
再びピラミッドを目指して歩き出した。
――――――
あれから休むことなく歩き、だいぶピラミッドも近くなった。
道中、食虫植物や、ジャガーに肉食昆虫の群れなどに遭遇するも
ひっそりと進むことで、戦闘を避けながらここまで来ることが出来た。
近づけば近づくほど、下から見上げるピラミッドは、かの竜王にも匹敵する高さを誇っていた。
ウーノは果たしてどうやって登ったんだろう・・・
「はぁー、ここからあの頂上まで登るのかー」
ウーノは手足をプラプラさせて柔軟をしている。
「えっ、まさかここをそのまま登るつもりなの!?」
「ああ、それ以外登る方法ないだろ?」
マリエラはとてつもなく、うんざりした顔をする。
「まあ、登るのは俺だけでいいから、下で待機しててくれ」
「ウーノが登りきったら一度スマホに連絡入れるね」
メイリンは着信をかけることで、ウーノのスマホが反応するかどうかを確かめるようだ。
「ああ、悪いな、まだ充電もってくれてるといいなぁ・・・」
ウーノは勢いよく飛び上がり、天高く積まれた大きな石を、掴んでは蹴り上げ、登っていく。
「はやっ!凄い身軽ねウーノ!」
ウーノはあっというまに中腹まで登っていく。
二人が見上げていると、ウーノはどんどん上まで登っていく。
そして豆粒ほどの大きさに見えたころ、ウーノは頂上まで上り詰めていた。
「なんか、あまりにもいい登りっぷりで、つい見惚れちゃったわね」
「・・・惚れたの?」
「そういう意味じゃないわよ」
登り終えたウーノは呼吸を整えると、下にいるメイリンに手を降って合図を送る。
それを見たメイリンはスマホのからレインというチャットアプリを立ち上げ、通話ボタンを押した。
――――――
頂上で待機していたウーノは辺りを見回す、特になにか特別なものがあるわけではなく
スマホが落ちているというわけではない。
完全にここはハズレだと思ったその時だった。
テッテレ テッテレテンテン テレテレテン♪
ウーノのスマホの着信音が鳴った。
「おっ!マジか!?どこだ、どこだ・・・」
着信音はすぐ近くから聞こえる、ウーノは足元を見たが何も転がっては居なかった。
あれ?どこから聞こえてるんだ?
ウーノは地べたを這いつくばって探すも見当たらない。
だが音は聞こえている、確実にここにある!
ウーノは耳を澄ませ、音のする場所を探した・・・すると
「・・・・・・えっ・・・俺の身体から聞こえてない?」
ウーノは恐る恐る、自身がつけているプレートメイルを外して、鎧の内側を見ると。
そこには、小さい収納部分があり、そこに手を入れると・・・。
着信 メイリン と書かれた自分のスマホが出てきたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます