第19話 終着!ダンジョン最下層の水神遺跡

クラーケンを討伐することに成功した一行は、巨大なクラーケンの死体を船に見立て、マーマン達の漁村へと運ぶのだった。



「くさあああああい!」

クラーケンの死体からはアンモニア臭が凄まじく、マリエラはクラーケンの臭いに卒倒しそうだった。


「俺も、気持ち悪い・・・」

ウーノもクラーケンの臭いは苦手であり、メイリンも同じくまいっていた。


もう限界か、と思われた時

ようやく漁村が見えたのであった。


村の漁港へとクラーケンが運ばれると、さっそく解体が始まる。

クラーケンの素材は、色々と使いみちがあるようで、防具だけでなく、船の材料など色々なものに使われるそうだ。


ウーノ達は、クラーケンの素材は、壊れてしまった水上バスに使ってほしいと、自分たちの取り分を漁村側へと譲ることにした。


「アンタ達、水神遺跡に行キタイソウダネ」


観光協会のマーマンの人が、クラーケン討伐のお礼に、小舟でよければと

水神遺跡に行くことができる、水門まで送ってくれると申し出てくれた。


早速ご厚意に甘えるべく、船に乗る3人。

ついでに村のお土産を色々と貰い、漁村を出向するのだった。



水神門までの航路は穏やかで、先程まで戦っていた海とは大違いである。

おみやげに貰ったスルメ(スキュラ)を食べながら話していると、水神水門まではあっという間に到着した。


水神水門

石造りの大きな水門があり、そこは固く閉ざされている。

しかし、マーマンが水門へと登り、門の開閉装置をいじると、門はゆっくりと上にせり上がっていく。

「アンタ達アリガトナー」


門の上からマーマンが自分たちに手を降った。


ウーノ達もお返しに手を振り返す「こちらこそー」


水門が開いたことで、3人を載せた船は徐々に門へと吸い込まれていく。

水の流れはしだいに勢いを増してくる。

門をくぐり抜けると、その先は何も見えない真っ暗な世界だった。


暗闇の中で、水の流れる轟音だけが聞こえてくる。


「なんか、急に雰囲気が変わったね・・・」

マリエラは少し不安を感じる。


「言うても、さっきの海ですら結構暗いんだけどな、目が慣れたってのもあるけど」

「ねえ?この先は最下層に繋がってるのよね?」

「ああ、そういうふうになってる」


暗闇ではあるが、体感で船の速度が上がっていることに気づく。


「ねえ、なんか船が早くなってない?」


「まあ、そうだろう・・・ここから更に下層に行くわけだし」


「えっ、まって・・・ということは、やっぱり・・・」


マリエラが気づいた時、船は急にスピードを上げて下へと猛スピードで下っていく。

それはもう落下に近い勢いだっただ


「やっほおおおお!!」

ウーノとメイリンのはしゃぐ声が響く


「やっぱりねえええええええええ!!」

続いてマリエラの叫び声もこだました。




水門から流れた水は勢いをよく下っていく。

やがて暗い世界に、明かりが見え始めた。


水はその明かりめがけて突き進むように、流れていく。


そして


「イッヤッホオオオオオオオオオ!」


船は勢いよく飛び出し、水面にバシャーーーンと着水した。

その勢いに、マリエラは弾き飛ばされ水面に落下した。


「あはははは、楽しいなコレ」

「もういっかいやりたい」


ウーノとメイリンをよそに

マリエラは二度と乗るものかと誓いながら

もがくようにして船に戻るのだった。


「しかし、本当に着くもんだな・・・」

ウーノは感慨深かった。


今時分が目にしている光景は、間違いなくあの時到達した、水神遺跡であったのだ。


水神遺跡はどのくらい前からあるのかは知らないが、その風景は人々が消えてからかなり経った様子が伺える。


遺跡群は基本的に、大半が水没しており、その殆どは、わずかに残された

陸地部分にある、遺跡を指してのことだ。


石造りの道、そして石造りの家の跡、遠くには大きな城なのか、祭壇なのかわからない、ピラミッドのようなものも見える。

そのどれもがボロボロでありながらも、かつては繁栄していたんだろうなと伺わせるほど

立派な造形をしている。


天井からはわずかながら光が指しており、どういう原理かは不明だが、地上の光が遺跡を照らしていた。


その神秘的な光景に、初めて遺跡を見たメイリンとマリエラはしばらく心を奪われていた。


ウーノはしばらく二人に遺跡を見せてやろうと、小舟を漕ぎながら遺跡群を案内した。


「あちらに見えますのは、かつて先住民が暮らしていたとされる集落跡です」


観光ガイドの真似事をしながらウーノは説明する。


石造りの家は、どれも崩れて屋根がないが、それでも人が住んでいたであろう様子は伝わってくる。

大半の冒険者がここを漁っていったため、めぼしいものは無いが

それでも、街並みは誰も手を付けていない事から、ここの神秘的な風景はまだ保たれているのだろう。

そんな集落跡を、船から遠巻きに見ていると、ウーノは船の下を御覧くださいという。


言われるがまま、船から身を乗り出して、水面を見ると。

そこには水没した街並みが見えていた。

水は透き通っており、まるで空を飛ぶかのように地上の街を眺めることができる。


「実はさっきまで見えていた集落は、高い場所に建っててな、実は殆どの街はご覧の通り水没してるんだよ。」


「すごい・・・」


二人は船から見下ろすその街並みに、心を奪われていた。

水没した都市は、綺麗に形を保たれており、かつての大通りには、小さな魚の群れや色々な水生生物が、まるで先住民に成り代わり暮らしているように見えた。


「一応言っておくが、クラーケンほどではないが、デカイやつも居たりするから、あんまし船の上ではしゃがないように。」


そう、どんなに心奪われる風景であっても、ここはダンジョンである。

気を引き締めなければならない事には変わりない。



「さて、いよいよ本命の場所に着いたわけだが・・・」

そう、ようやく目的地の最下層に到着したのだ。

しかし、到着することが目的ではない、真の目的は、このダンジョンに落とした

自分のスマホを回収することである。


ついに、ウーノ達の旅は、最終局面を迎えようとしていた。

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