第18話 骨は断てぬが、肉は切れる!

クラーケンの触手はメイリンの呪術が効いていない。

この状況で果たしてクラーケンに一矢報いることができるのか?

ウーノは逆転の可能性を2人に告げた。



海底はイカれるクラーケンにより大荒れだった。

マーマン達は、クラーケンが自分たちに注目するやいなや

直ぐに海底付近まで潜り、それぞれが散り散りになりながら岩場に潜り込んだ。


そのような状況に、クラーケンは虱潰しらみつぶしに海底をひっくり返す勢いで、荒れ狂っているのだ。


そんなクラーケンをよそに、ウーノはマリエラから水中呼吸のガムを貰い、それを噛みながら。

再び水中に潜っていた。


ウーノがひとり泳いでいるのを見かけたマーマンの一人が、ウーノをつかみ、海底へと引きずり込む。


「アバレルナ アバレルナ アノママダト クラーケン見ツカル」


マーマンの特殊能力なのか、水中でも意思の疎通ができる。


「俺の声も聞こえますか?」

「キコエル」


ウーノはマーマン達にこれからの手はずを伝えた。


「ホントウにソンナコト、デキルノカ?」


マーマンは半信半疑だったが、この状況では特に打開策もないため。

ウーノの提案に乗ることにした。


マーマン達は、直ぐにウーノの作戦を仲間たちに伝える。

何人かのマーマンは、クラーケンの目を盗み、船の上に戻りはじめた。


そして、ウーノとマーマンのリーダー、精鋭のマーマン達数人で

わざとクラーケンに目立つように、泳ぎ始める


頭に血が上っているクラーケンには、それが囮であるということは気が付かない。

クラーケンはすぐさま彼らが泳ぐ、水面付近めがけて、突っ込んできた。


マーマンのリーダーはウーノを掴むと、勢いよく水面を飛び出す。

まるでトビウオのように水から飛び上がると、船のほうめがけてウーノを投げ飛ばした。


それと同時に、海面の水を押しのけるように

まるで潜水艦が緊急浮上するかのごとく、クラーケンの胴体が飛び出してきたのだ。


クラーケンの胴体は中を舞い、触手を広げると、巨大な飛空艇のようにも見えた。

一瞬だけ滑空したかのようにして、水面に落ちる力を逃がすと。

あとは津波のような波を起こし、海中へと沈むのだった。


その波で、船は大きく揺られる。

マーマンの何人かは船を沈ませまいと、船を波に向かって縦させるように水中から押していく。


なんとか波をしのぐと、今度は巨大な触手が船を取り囲むようにして水中から現れたのだ。


船の先方には、クラーケンの巨大な口も見える。

このまま船ごと丸呑みにされるのではと思うほど、巨大な口と、鋭利な歯が見えた。



「よし!今だ!!触手に向かって投げろ!!」


船上にはメイリンとマリエラ、そしてマーマン達が槍や銛をもって待機しており。


船の中心に炎をいて、槍の先端を炙りながら、クラーケンが触手を出すの待っていた。


ウーノ号令で、それぞれが近場の触手に向かって槍を投げる。

巨大な触手ということもあり、やり投げ初心者のマリエラでもなんとか当てることは出来た。


槍がクラーケンの触手に刺さると、触手の様子がおかしくなる。


槍の当たった場所から、クラーケンの体表の色が変化しだす。

穂先が炙られて、その熱でクラーケンの触手が固まり、色が変わっていったのだ。


クラーケンもうまく触手を動かせなくなっており、海面から出た口が、怒りの叫び声をあげる。




その悲鳴にも似た声を聞いて、メイリンはこの機を逃すまいと、最大まで貯めていた呪術を開放する。


「いざ解き放たれよ!ヘイデッドカース!アンティアクア!!」


その言葉とともに、メイリン達の乗る船はバラバラに砕ける。

メイリン、ウーノ、マーマン、それぞれが散り散りに海に投げ飛ばされていく。


メイリンとマーマンは直ぐに、海面に顔を出して様子を見る。


「やった!成功してる!!」


メイリンとマーマン達はその光景に歓喜した。




巨大なクラーケンは、自身の触手を天に向かって貼り付けにされるかのように、大きく足を開いて宙へと持ち上げられていた。


巨大な胴体もまた、足が空に向かうことで、引っ張られるように水面から持ち上がっていった。


クラーケンの触手は槍が刺さり、火の力が加わったことで、メイリンが放った呪術により、水との相性が悪くなり

そこに反発する呪術をぶち当てられたことで、触手が海中に居られなくなってしまった。


そして、触手は吐き出されるように、水中から飛び上がり、現在のように水に落ちることが出来ず、宙を漂うことしかできなくなっている。


なぜこのようなことを思いついたのかというと

メイリンのフレイムマインが着弾し、表面が少し焦げた触手だけが、メイリンや船に攻撃を当てることが出来たのを見て。

ウーノは、クラーケンの触手の属性が変わったのだと判断した。


それならば、その事を利用しようと、今回の作戦を思いついたのである。


耳を裂くようなクラーケンの悲鳴が辺りにこだまする。


「今まで散々とやってくれたなぁ・・・イカ野郎」

「ええ、本当に・・・キモチわるいモンスターが」


ウーノとマリエラは、海の上を文字通り立っていた。


メイリンのかけた呪術により、自身が水からはじき出される状態となっている。

今現在のクラーケンの触手と同じ状態である。


「マリエラ、俺がトライデントを投げる、あとは分かるな?」

「私にできることなんて1つよ、逆にあんたがお膳立てしなさい。」


「そうかよ、なら精一杯やらせて・い・た・だ・き・ま・す・よ!!」


ウーノは走り出す。

水面を水しぶきを立てながら勢いよく走る。


それに続いて、マリエラも剣を構えてウーノに続いた。


全身の力を込め、なおかつ前に走るスピードをつけて、トライデントをクラーケンの胴体中央に投げた。


トライデントはクラーケンの胴体に突き刺さると、突き刺さった場所が変色しだす。

このトライデントにもメイリンの炎の呪術を内包させていた。


「いけ!!マリエラ!!」


今度はマリエラが飛び上がる。


勢いよく水面を蹴り上げると、マリエラは天高く飛び上がる。

そしてクラーケンの変色した箇所めがけて、剣を振り下ろす。


「我が一刀は無名の剣、なれど、この一刀はここに刻まれる!」


「天空唐竹割りぃぃぃぃ!」


マリエラの剣は、クラーケンの胴体をキレイに縦に切り裂いた。

裂かれた胴体からは、クラーケンのキモが飛び出てくる。


「クエエエエエエエエ!!」

クラーケンは悲痛な叫び声を上げた。


その様子を見ていた、マーマン達は、この好機を逃すまいと、水中から飛び出し、槍を一斉にクラーケンのキモめがけて投げ続けた。


やがて槍が何本も突き刺さると、クラーケンは声を上げることはなくなり

絶命した。


それと同時に、クラーケンの呪いも解除されて

クラーケンの死体は勢いよく海中に叩きつけられたのだった。



あたりに巨大な波しぶきが起こるが

それ以上に、皆の歓喜の声が木霊した。


「やったぞおおおお!!クラーケン討伐完了!!」

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