第16話 クラーケン・レイドバトル
漁村の民宿で一夜明けた今日、3人は英気を養い、クラーケン討伐の集合場所に向かった。
「はぁー・・・クラーケンってあのウネウネのすっごいデカイやつなんだ・・・」
マリエラはまだ昨日のことを気にしていた。
「なんだよ、まだ気にしてるのかよ?うまかっただろ?」
「それとこれとは話は別!」
最初は口に入れるのは抵抗があったが、動いてない胴体の方の白くて澄んだ刺し身は、コリコリしてて美味しかった、しかし。
それでも、足の方のウネウネは結局こわくて口に入れれなかった。
「うう、まさかあのウネウネと戦うなんて・・・」
集合場所にはマーマン達が集まっていた。
どうやらレイド参加者のうち、人間の参加者は自分たちだけのようだ。
「時間にナッタ デハコレヨリ、クラーケン倒シに行ク」
クラーケンの討伐前に、マーマン達と一緒に水神の加護を受けるべく。
村の神社から来た、神主により、ご祈祷を受けることになった。
神主は白い紙が大量についた棒を振りながら、何か祈っている。
メイリンいわく、あの棒は
この加護があることで、水難、つまり水属性攻撃に対して耐性がついたそうだ。
本来は水上バスに使われる、大型の木の船に乗り込んで
クラーケンが出没した海域に向かう。
船の上で、マーマンのリーダー格に、水中でも呼吸ができる”海藻ガム”をもらった
これを噛んでる間は水に落ちても呼吸ができるそうなので、戦いになったら、噛んでおくといいと言われた。
なんともまあ、
マーマン達は、
弓等の射程の長い武器は見かけなかった。
「ねえ、クラーケンって凄く大きんでしょ?一体どうやって戦うの?」
マリエラはクラーケンとの戦いに不安を募らせる。
「俺もスキュラと戦ったことはあるけど、クラーケンは初めてだな」
「クラーケンはあんまし斬撃とか弓矢は効かない」
クラーケンは表面が体液で保護されており
そのせいで、斬撃などは通じないとされている。
なので、刺突攻撃を水中から当てる必要がある。
水中戦がメインになるため、弓矢などは使い物にならない。
「しかし、スキュラは魔法攻撃が通じる」
クラーケンはスキュラを巨大サイズにしたモンスターだ。
そのスキュラは魔術や呪術の類の攻撃は通じるため、メイリンとマリエラは、魔術による遠距離攻撃をすることで。
前衛になるマーマン達を援護することが今回の主な役目になるだろう。
「というわけで、メイリンとマリエラは援護攻撃よろしくな」
ウーノは二人に援護を頼む。
「まかせて」
メイリンは自信に満ちた顔で、ウーノに答える。
「あのー・・・ちょっといいかな?」
マリエラは申し訳無さそうな顔で尋ねる。
「私、まだ・・・魔術による攻撃ってどうやればいいかよくわかんないんだけど」
ウーノとメイリンは目を丸くして、フレーメン現象状態になった猫のように
口をポカンと開けた。
水上バスは無慈悲に海を進んでいく。
「いい、マリエラ、一番簡単なのは火の魔術、燃える炎をその場に留まらせるの、イメージして」
メイリンは基礎中の基礎をマリエラに教える。
マリエラはメイリンに言われたとおり、自身の杖を突き出すようにして、呪文を呟きながら、火の魔術を練習する。
しかし、火を起こす事は成功するが、その場に留まらせるのは難しいようだ。
「できの悪いライターみたいだな、ボッボッって・・・」
マリエラは何度も炎を出して、火の魔術をやり直す。
その様子はウーノがいうように、着きの悪いライターが何度も発火を繰り返すようだった。
「うるさい!!船の上で揺れて、うまく集中できないのよ!」
マリエラはできないことにカリカリしてしまう。
メイリンは周りのことは気にせず、意識を集中する事に注力しなさいと師事する。
ウーノはマリエラの事はメイリンにまかせてマーマンのリーダーの所に向かう。
「あのー・・・お話があるんですがー・・・」
水上バスはクラーケンが出没した海域に到着した。
漁村を出て1時間くらいした場所だろうか。
大型の船ということもあり、海の上では安定していたが、それでも波に揺らされる。
そんな状況であるにも関わらず、マリエラはこの短時間でなんとか炎をその場に留まらせる事ができたようだ。
「見て、見て!炎!炎!!めっちゃ嬉しい!」
マリエラはなんとか初歩中の初歩が出来たことではしゃいでいる。
そんなマリエラを見て、メイリンは温かい目で見守り、ウーノも何かを言いたいところをグッと押し殺して、メイリンと同じ温かい目で見守る。
そしてマリエラはスマホで自撮りをして、さっそくSNSにアップした。
「はじめての魔術成功!しかも揺れる船の上で成功させるなんて、私って天才かも」
普通はダンジョンに潜る前に練習しておけよという話ではあるが。
その練習をするところをウーノが強引に誘ってしまったので、ウーノに何かを言う権利はない。
「じゃあ、俺は、マーマン達と一緒に水中に潜るから・・・手はず通り、頼んます」
ウーノはメイリンとマリエラにそう伝えると、マーマン達のもとに向かう。
マーマン達と話し合った末、まずはマーマン達で水中の様子を探り、クラーケンを挑発して、海面付近まで追いやる。
その後、船上で待機している二人が魔術による攻撃を加えて
クラーケンに本命の攻撃を当てる算段だ。
果たしてうまくいくのか、不安ではあるが、この方法が正攻法だろう。
水中戦はクラーケンのが上であろうと判断したマーマンのリーダーとウーノは、なんとか水上でクラーケンにダメージを与えれるだけ与えて、それから水中で止めを刺す作戦に打って出た。
マーマン達が、船から海中に飛び込む。
ウーノも水中で呼吸ができるガムを噛みながら続けて飛び込む。
何度かこのガムを噛んで飛び込んだことはあるが、最初は鼻に海水が入り、ウッっとくる。
しかし、すぐに慣れる。
水中でのマーマンの動きは、まさに魚であり、人間の泳ぎでは追いつくことは出来ない。
なので、ウーノは、水面付近で海の下を見下ろしながら様子をうかがうことにした。
わざと、水面でバシャバシャと音を立てたりして、海面で溺れたふりをして、獲物がいるぞとアピールする。
そんなウーノを見て、マーマン達も何名か、ウーノのマネをして海面で溺れたふりをしてくれた。
どうやらこの方法は、クラーケンをおびき出すには好都合のようだ。
そのかいがあってか、海底に動きがあった・・・。
海底の岩場から、お大きな影が動いているのを、一人のマーマンが見つけた
すぐさま水面に上がり、それぞれに伝えた「デカイの見ツケタ コッチクル」
全員に緊張が走る。
ウーノ達は一旦動くのをやめて、海中に顔を沈め、辺りを見ると・・・
「マズイ!メイリン来るぞ!!船に捕まってろ!!」
ウーノの声に、メイリン達は船に捕まろうとするが、次の瞬間。
水中から巨大な柱とも言うべき、クラーケンの触手が、何本も何本も海中から突き出てきたのだ。
「嘘でしょ!あれがクラーケン!?何匹もいるの!?」
「ちがう、あれはクラーケンの触手、あれは足」
それは触手だけで30mは優に超え、肝心の胴体の部分はまったくもって見えていない状態だった。
クラーケンの弱点である胴体部分が、まだ海中に沈んだ状態ではあるが。
クラーケンレイドバトル、開幕である。
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