第14話 大海原のマーマン漁村にご招待
長い地底回廊の先には、地底湖ならぬ地底海が広がっていた。
3人は、第五層へと辿り着いた。
髑髏のあった洞窟と違い、天井は広く、よく見れば鍾乳石もあり、暗い夜の雰囲気を醸し出す、
何もない砂浜に、寄せては返す波の音、水平線は暗くてよくわからないが、あるのだろうと思わせるほど、広大な地下世界が広がる。
惜しむらくは海鳥の鳴き声が聞こえてくれば、なお良しなのだが。
狭い地下通路の果が、いまだかつて無いほどの大きさの世界であることに3人は呆けてしまっている。
海であることもそうだが、この開放感たるや、なにか集大成的なものを感じてしまい。
なんとなく、浜辺に座り込んでしまう。
「知ってはいたが、まさかこれほどまでに海だとは・・・」
メイリンとマリエラは、つい履物をぬいで、海辺に駆け寄った。
足をつけると、冷たい波が、疲れた足には心地よく染み渡る。
マリエラは水を手ですくって口に運ぶと、嬉しそうに声を上げた
「しょっぱーーーい!海の味だーーー!!」
そう、ここは紛れもなく海である。
海底ならぬ、地底世界に広がる海である。
2人はパシャパシャと波打ち際で、はしゃいで遊ぶ、張り詰めていた緊張が解け
久しぶりに、笑顔でじゃれ合うことが出来た。
ウーノはそんな2人を見てぼーーっとしてしまう。
ダンジョンは様々なものがあるが、海そのものがダンジョンになっているとは誰が予想できよう。
この地底に広がる海は、実は外の世界の海とちゃんと繋がっている。
それどころか、海流も流れており、潮の満ち引きで水位も上下する。
本来、この海のダンジョンは、海底神殿や海底洞窟などの探索がメインのダンジョンである。
しかし、その多くは、海水が殆どを占有しており、海での探索能力がなければまず冒険はできない、変わった場所である。
地下世界ということもあり、大型の舟を運ぶことは出来ないので
自前で泳ぐか、舟を運んで移動するかしないと、まともに移動することは出来ない。
とはいえ、ちゃんとそこは考えられている・・・。
メイリンとマリエラが海辺で遊んでいると、突然水中から2体の影が浮かび上がってきた。
「ひっ!」
と尻餅をつくマリエラ
そこに出てきたのは、2体のマーマン、すなわち半魚人である。
マリエラはすぐに杖を構えた、だが。
「アンサン達、ココはハジメメテかえ?」
マーマンは随分と有効的であった。
「モシ、今夜の宿を取ッテナカッタラ、是非オラ達の村に来テクンロ、安クスルダヨ」
この大海原では、マーマンなどの魚人も暮らしている。
そして、マーマン達ははこの大海原では、観光業で稼いでいるのだ。
ウーノはさっそく、マーマンに案内してもらうことにした
「デハ、2名様、ゴ案内~」
三人は小舟に乗った、その小舟には船頭のマーマンおり、もうひとりは海に潜って舟を押す役に分かれていた。
マーマンの舟を押す力は強く、中々に速い速度で海を進むのだった。
しばらくすると、マーマン達の舟は速度を緩める
「着イタ」
そこは大海原の端に位置する岬の村だった。
住んでいるのはマーマンだけ、というわけではなく、人間の観光客もちらほらいたりもする。
本当に観光と漁業だけで成り立っている村らしく、村には民宿と、お土産屋にコンビニがあったりする。
「本当に観光地って感じね・・・なんかダンジョンらしくないわね」
マリエラの言はもっともである。
今更ではあるが、ここはダンジョン内である。
「まあ、この階層のこの場所は、海底側がメインの場所だからな、海の上は平和なんだろうよ」
「平和というより、ふつうに地上とかわらない」
とりえあず、ウーノはダンジョン最下層を目指すべく
観光案内所に行くことにした。
案内所までは直ぐ近くにあり、いちいち場所をスマホで探すまでもなかった。
案内所に入り、観光協会の人(マーマン)にダンジョン最下層、水神遺跡へのルートを尋ねると
それなら、海上バスで水神水門行きのバスに乗れば行けると言われた。
「なんか、すげーすんなり行く道案内されたな・・・」
「これだったら、最初からこのルートでよかったんじゃないの?」
マリエラは嫌味っぽく言う
「しかたねーだろ、俺だって海ルート行ったこと無いし・・・というか、海を渡る方法自体、用意してなかったしよ」
ここまで奇跡的に来れているのは、単にマーマンに偶然出会ったからであり、もし出会ってなければ、自分たちで舟なりの海上移動手段を見つける必要がある。
マーマンの漁村に行く事すら、何も用意していなければ本来は難しいのである。
そんなこんなで
村の海上バスの発着場に行くことにした。
発着場のある建物を見つけ、中に入ると、観光案内をするマーマンと、観光客が何やら
言い争いをしていた。
「ええー?海上バスは今日は運行中止なんですか?」
「スイマセン、ナンデモ、クラーケンがデタソウデ」
クラーケンという言葉に嫌な予感を感じた。
ウーノはすぐに海上バスのチケット売り場に行くと、欠航の看板が上げられていた
ウーノはチケット売り場の人に訪ねた
「すいません、欠航って、いつまで欠航なんですか?明日には船が出れそうですか?」
「スイマセン、ワカラナイデス・・・」
どうやら、入り口で話されていたクラーケンが原因で海上バスが、全便欠航になっているそうだ。
「まさか、クラーケンとは・・・というか、外洋ならともかく、こんな地下でも出るんだな」
「クラーケンは滅多ニ出ナイヨ デモ、マレニ出ル時モアル。今回は5年ブリクライニ、クラーケンデタ」
観光協会のマーマン達も騒ぎを聞きつけ集まってきたようだ。
観光業を営むこの島にとってはクラーケン出没は一大事である。
「クラーケン、放ッテオケナイ、スグニデモ、討伐準備ススメルヨ」
「ねえウーノの・・・これってさ」
メイリンがウーノの袖を引っ張って囁く。
「レイド募集かけられるんじゃない?」
レイド募集、ダンジョン内で不定期ではあるが、全冒険者に対し、強力なモンスターの討伐依頼が出される事がある。
参加人数に定数はあるが、それでも依頼主と、ダンジョン管理組合、冒険者ギルドなどから報奨金が支払われるため、腕のある者にとってはかなり美味しい依頼となることも多い。
「ねえ、レイドって私初めてなんだけど参加して大丈夫かしら?」
「だいじょうぶ、このダンジョンでのレイド参加はそこまで要求値高くないから」
メイリンは心なしかウキウキしている。
「でもよう、クラーケンとか、俺戦ったこと無いぞ」
「わたしもない でも、レイド報酬はおいしい」
それからしばらくして、メイリンのスマホにお知らせが届く
「来た、レイド案内の知らせ」
メイリンはレイド案内の知らせを受け取るという設定にしているので、直ぐに冒険者ギルドからのレイドを申し込むことにした。
「3人分もうしこんだ」
メイリンはスマホの画面を見せ、レイド参加したことを2人に見せた。
まあ、仕方ない。
どうせクラーケンをなんとかせねば、先には進めないんだ。
ここは自分たちのためでもあるし、最下層を目指すため、クラーケンを討伐しようじゃないか。
「よし!クラーケン討伐!一丁やるか!!」
「おーー!」
「おーーー・・・」
マリエラは一つ言えないことがあった
クラーケンがなんなのか、よく分かっていなかったのだ。
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