第8話 登場カスミン
王侯騎士団に囚われた三人は、駐屯所の留置所に連れてこられた。
三人は横並びで椅子に座らされ、騎士団の偉そうなおっさんに尋問を受けていた。
「どうやって忍び込んだ?なんで無事でいられる?」
「・・・・・・」
「黙秘を続ける気か?なら、罰金の1万金貨を3万金貨に増やしてもいいんだぞ」
「mytube見ました!それであの大洞穴の事を知りまして!落下を緩和する呪文つけたままスカイダイビングしてここまで来たんです!」
罰金が増えると知るや、ペラペラ喋りだすウーノを見て、マリエラは軽蔑の目で見た。
「あのねぇ、君たちね。ここはどこかわかる?」
「王侯騎士団駐屯地です・・・」
「そう、ここは騎士団駐屯地です。つまり立入禁止区域なの。」
本来はダンジョン入り口に、北側及び第4層
そのため、一層の迷宮も南側に配置されない限り北側を目指す必要性がないため。初心者御用達のダンジョンと言われる理由である。
「いいかい、君たちみたいな興味本位でここに侵入しようとする子はいる。大半の子は大洞穴見て満足して返ったりするけど、わざわざあそこを降りてくるなんて中々いないよ。」
「いやー、それほどでも」
「ばか、褒めてるわけないでしょ」
マリエラはウーノの足を蹴る
「それで、ここに侵入しようとした理由だけど・・・」
おっさんは書類に目を通す。
彼らを捉えた現場の騎士団員の話では
「スマホをダンジョンの最下層に落としたんです、どうしても早く拾わないといけないのでショートカットさせてください」
と叫んでいたと、団員の調書に記載されている。
「えっ、君たち落としたスマホを拾いに行くためにダンジョンの最下層に行こうとしてたの?」
「そ、そうなんでお恥ずかしい話・・・」
「別にスマホぐらい買い直せばいいんじゃ・・・」
「いやダメなんです!アレには思い出とソシャゲの大事なデータが!あとそれから」
ウーノがまくしたてると、おっさんはわかったわかったと言う
「だとしても、ダンジョンの最下層なんて滅多に行く人いなんだからそう簡単に拾われるなんてこともないでしょ?なんでそこまでして急ぐわけ?」
「今週の土曜日に周りたいソシャゲのイベントがあるからです!!」
おっさんは呆れた顔でため息を付いた。
「とりあえず、いけないことはいけないことだからね。」
おっさんは書類を取り出した。
それは、反則切符と罰金の振り込み用紙だった。
「この罰金の振込用紙はコンビニじゃなくて郵便局か銀行でした振り込めないから」
罰金の振り込み方法を口頭で説明すると、反則者の切符を前に出した。
「じゃあ最後にそれぞれ名前書いてね、ココね、この場所」
おっさんが指し示した場所には名前を記載する場所がある、そこにサインをすれば今回の罪を認めたことになり、罰金刑だけで済まされる。
三人は名前を記載する。
「振り込み期限は2週間だから、その日数を過ぎた場合は、実刑として捕まります。わかりましたね?」
「はい・・・」、と三人は返事した。
留置所の尋問室から出される三人は、それぞれの荷物を渡される。
拘留されていた間の荷物や装備は全て預かられていた。
「忘れ物無いようにね。また忘れてここまで取りに来ないように、ガハハハ」
おっさんのムカつく冗談に愛想笑いしつつ、装備を身につける。
さて、これでようやく開放される。
この留置所に捕まってから2~3時間は経ったのではないだろうか。
せっかくショートカットしたのに、また足止めはごめんだ。
すると、一人の騎士団員がこの場に走ってくる。
「で、伝令を、伝令をお伝えします。」
団員はおっさんの元に近づき、耳元でささやく。
「なっ・・・」
おっさんは驚いた表情でウーノを見る、「まさか・・・」と呟く声も聞こえた。
ウーノ自身もなんとなく察しはついていた。
これはまた足止めを食らいそうだなと思った。
「大変申し訳ありません、お急ぎかと存じますが・・・」
おっさんは妙に改まって話しかけてきた。
「団長がお呼びです。ご同行の方もご一緒にとのことです・・・」
団長、その言葉に鼻から息をスーっと吐くと、覚悟を決めることにした。
メイリンとマリエラはウーノの様子を察してか
これから行くことになる騎士団団長との謁見に不安をつのらせた。
騎士団駐屯地 謁見の間
石造りの要塞の二階最奥にて設置された、豪華な装飾を纏いし門にも思えるほど大きな扉は、騎士団の力と威光を醸し出していた。
その重く閉ざされた扉が音を立てて開く。
部屋の中は赤い絨毯が一本道のように敷かれており、その奥には騎士団の紋章が飾られ、手前には玉座とも言えるイスが置かれていた。
絨毯を挟むように、部屋の壁にはそれぞれ何名かの団員が立っており、三人が部屋に入るのを直立で迎えている。
ウーノ達が部屋に入ると、扉は閉じ、一人の団員が玉座の方に向かって歩き、部屋の隅にあるドアを叩いた。
そして、別部屋からその男は現れたのだ。
謁見の間に最後に現れたのは、筋骨隆々のたくましい姿をしたピンクベストの男だった。
七三、くらいに分けられた髪型に浅黒い肌で、胸を突き出しながらゆっくりと歩く姿は、まさに堂々たるもの。
男はイスの近くまで来ると、その場で止まり、部屋にいる団員達を見回した。
そして、指右腕の人差し指を一本、ピンと付きたて顔の近くにまで持ってくると。
男は大声で叫んだ。
「トゥーーース!」
その号令に、他の団員も続いて「トゥース!」と叫んだ。
そして、ウーノもまた、同じ用に指を突き立てながら、その男のように「トゥース」と挨拶をした。
「土曜の夜カスミン ひとつよしなに」
男はそう挨拶をした。
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