第4話 第一層 動くよ迷宮落ちるよ迷宮

ダンジョンの入り口に入るとそこは大広間であった。

大広間には大勢の冒険者と商人たちがごった返している。


これから彼らはこのダンジョンに潜り、それぞれが目的のための冒険をする。

そしてそんな冒険者のためにアイテムを割高で売りに来る商人と

保険屋、最悪死んでも神殿で復活させるためのセーブ協会の僧侶など

さまざまな人間で溢れていた。


「今回の準備は整えたが、なにかやり残したことはないか?やるならここが最後だ」

ウーノは二人に言う

「私は問題ない、セーブ協会は入ってる」

「一応私も魂の欠片は蘇生させてくれる世界樹組合には入ってるわ」


この世界は危険がつきものだ、なのでそれぞれ所属する協会や組合は違えど

死んだときの蘇生方法がある、どちらも魂のかけらを残しておき

自身が死んだ場合そのかけらを素に死者を蘇らせる。

昔はこの手法は禁忌であったが、現在はちゃんとした蘇生手法の確立と

各国の同盟により、国際標準規格の蘇生法が制定され

あらゆる冒険者は、命を落としても甦れる安心安全な冒険生活が送れるようになったのだ。


それぞれはちゃんと死んだ時用のプランも考えている

「それを聞いて安心した、俺もいざという時のは大丈夫だ」


では改めて

ダンジョン攻略開始だあああああああああああああ!!



ダンジョンの大広間を進むと、それぞれ色々な場所に小さな小部屋がある

この小部屋に入ることで、自動で様々な場所に運ばれる。


この部屋の行き先はランダムで、どこに連れて行かれるかはかはある程度わかる

ただ、毎回正しい場所につくわけではないのが悩ましいところだ。


「たのむ、一番近い場所にしてくれー、北側、お願いだから北側・・・」

「ウーノ・・・残念だけど北側には絶対に行けないわ。」

「なら東か西だ!隣接場所隣接場所!」


三人が入った部屋はガゴンガゴンと動き出す

「ねえ?なんでこの部屋は北側には絶対に行けないの?北側なら一番早いのに」

マリエラの疑問にメイリンが答える

「それはね、王侯騎士団が北側行きの部屋を独占してるからよ」

「えっ、独占なんてできるの?しかも北側だけを?」


もともとランダムで行き先が決まるとは言うが、ダンジョンの仕組みを解き明かした時

ある程度ルートが決まっていたことが分かった。

その際にダンジョンルートを意図して封鎖、または専用ルートを作ることを王侯騎士団は成功したのだ。

そのため一般の冒険者は、手の加えられていない東と西、そして南側に配置される

ルートのみ使用が許可されている。


「最悪南だったら、中央に行って二層を通ることにする」

「・・・あんまし二層は行きたくない・・・」

「俺だって行きたくねぇよ・・・暗いし、キモいし・・・汚ねぇし」


マリエラは訪ねた

「私このダンジョンは初めてだけど、二層ってどんなところなの?」

「ああ、二層ってのは・・・」


ウーノが言いかけた時、部屋がガゴっと動きを止めた


「あら?思ったより早く着いたわね」

「あっ・・・早く着いたってことは、マズイ・・・」


部屋は再び動き出す、今度は上に登るかのように・・・

そして再び止まると、部屋のドアが開く


部屋の外に出ると巨大な壁が続く迷宮の一角に繋がっていた。

三人が部屋から出ると、扉は閉まり、小部屋は迷宮の地面に収納されるかのように

消えていった。


「さ、最悪だ・・・一番遠い南に出されたああああああああ」

「ドンマイ」


ウーノたちが出された場所は迷宮の南側であり、ダンジョン攻略最短を目指すなら北側に近いほうがベストなのだが

どうやら一番最悪を引き当ててしまったようだ。


「ねえなんでここが南側だってわかるの?」

マリエラの疑問にメイリンが答える

「上を見て」


メイリンが示した先は迷宮の天井だった

迷宮の天井はドーム場になっており高さは有に300mを超えている

このドーム状の真中辺りに丸い穴が空いており、そこから外の世界の光が漏れている。

この真中を中心に天井に緑の苔が生えている場所は南側であり

尖った岩が天井に生えている場所は東側で、なにもない岩の天井は西側である


このように自分たちがいるいる場所が迷宮の天井を見ればある程度わかるのが

このダンジョンがソロ攻略する人にもオススメな理由である。


「へぇー結構わかりやすいのね」

「だからみんな最初は中央を目指す・・・」


どの場所に放り出されたとしても向かうべき場所が分かりやすいのがこの迷宮なのだ


「それに、南側はモンスターが弱いから安心」

「そ、それはよかったわ」


「よくない!」

ウーノは叫ぶ


「くそ、今から中央に向かって二層を通るルートに変更だ、ああ、タイムロスだ」

ウーノは苛立ちながら歩む


すると、迷宮の壁がゴゴゴと音を立てて動き出した


「ちょ、ちょっとなにこれ!?メイリンなんなのこれ!?」

「落ち着いて、迷宮は定期的に内部が動き出す、壁が動いてるのは路が変わるから」


迷宮はその内部構造が定期的に動くことで、正解の順路というのは無い

しかし、あくまで壁が動くだけなので自分たちが動かなければ

中央から物理的に離れるということはない。


しかし、順路がない以上、迷宮を進まなければいけないことには変わりはない。


「メイリン、少し上を見てくる」

ウーノはそう言うと動く壁を蹴り上げるように登っていった

壁の高さは3mは超える 

そんな壁を蹴りだけで登るのは普通の冒険には難しい、なんだかんだ言っても

このダンジョンのソロ攻略者ではある。


「ふーん、やるじゃん、情けなく叫んでるだけのやつかと思ってたけど」

「ウーノはすごいよ・・・」

二人は壁の上によじ登るウーノを下から眺めている


「ふう、まだまだ壁登るくらいはできるな・・・」


ウーノは壁の上から見る景色は第一層の迷宮の中央にある大穴が見えた

距離にして600m以上、直線なら簡単に進めるだろうが

やはり入り組んだ路が連なり、壁の高さは大小様々

そして見えるのは天井には巨大なコウモリのようなモンスター

迷宮を闊歩する食虫植物と大型犬くらいの大きさの巨大な昆虫

もしこれらのモンスターに偶然鉢合わせたり、もしくは待ち伏せを喰らえば


手練の冒険者とはいえ油断はできない。

どうしたものか・・・


「ウーノ!迷宮の進み方分かったー?」

マリエラはウーノ大声でに語りかけた


「さっぱりだー 全然わからん」


迷宮は絶えず動いている、壁が止まることがあっても、別の場所では動いている

そしてまた別の場所が止まれば自分たちの場所の壁が動く。

まさに迷わせるための悪意のある迷宮だった。


ウーノはすたっと壁から降りてくる 前転するように衝撃を流し

くるりと起き上がる。


「とりあえず上から見たが中央まで600あるかなくらいだな」

「そう、結構歩くことになるね」


二人の暗い顔にマリエラは不安になった

ウーノもメイリンもダンジョン探索は慣れているはずだ

その二人を持ってして浮かない表情をすれば、初めてくるダンジョンを前にした

マリエラには緊張がこみ上げてくる


「仕方がないな・・・ここは」

ウーノは重い口開けた


「有料のナビアプリ使おう」




マリエラは前のめりにずっこけそうになったが、持っていた杖でなんとか体を支えた。


「ナ、ナビアプリなんてあるの!?」

「ああ、あるよ。ただ金取られるからさあ」



「ぶっちゃけここの層は時間さえかければ絶対に進めるから、あんまし使いたくないんだよな」

「ぼったくり」


メイリンはスマホのナビアプリをダウンロードしだす。

とりあえずそのアプリのナビに従い歩きだすことに


「メイリン、到着予定時間は?」

「たぶん1時間もかからない」

「ならよし」


「いや、なら良しじゃないでしょ」

マリエラは突っ込む

「というかここのダンジョンって壁が動いてるんでしょ?なんでアプリなんかでわかるのよ!」


「えっ?ああそのコト?あれだよあれ」

ウーノが指をさすと迷宮の天井には大きなコウモリがいた


「あいつらだよ、あいつらが上空から迷宮を観察しててその情報を逐一迷宮のナビサービスで知らせてくれんだよ」


そ、そんなことってあるの?

というかあれモンスターじゃないの?


「コウモリは超音波で迷宮を観察してるから暗くても分かるように案内してくれる」

メイリンは目を輝かせながら天井のコウモリを見つめる

「お前、コウモリ好きだよなー・・・」

「だいすき」


そんなコウモリのおかげでなんとかモンスターなどを回避しつつ無事に迷宮中央へと向かうことができた一行であった。


さて、いよいよ迷宮の中央についたわけだが、そこには・・・


直径100mはあるのではないかという大きな穴が空いていた

それぞれ西側、東側、北側がその穴を中心に見ることができる。


穴の深さにしてざっと400m ドームの頂上からあわせれば700mはくだらない

高さの空間がそこにはあった



そう、二層に行くにはこの深さ400mの穴を降りなければならないのだ・・・。

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