第54話



「……エイト」



 私は薄れる思考をなんとかフル稼働かどうさせた!

 ぐいっと無理やり起き上がりファイティングポーズを取る!


 ギリギリセーフ。カウントは『ナイン』まででんだ。林檎がまじまじと私を観察する。



「戦える?」


「……もちろん」


「次また同じ状況になったらアウトだから」



 レフェリーの林檎が忠告をする。私はそれにうなずきマウスピースを口に入れた。


 林檎が『ボックス!』と言う! 試合続行だ!



 間髪入かんぱついれずフォルネウスが迫る! 抱きついて『クリンチ』をする。私はまだ意識がはっきりしていない。ちらりと時間を見た。あと十秒で終わりだ。なんとか逃げて次に繋げたい。



 よそ見をした。その時フォルネウスから激烈なパンチがボディに入る!

 ピキッと身体のしんから聞こえた。肋骨ろっこつが一本折れた気がする。その痛みで覚醒かくせいする!


 もう一発貰いそうだったが軽やかにフットワークを使い小さく交わす! そこに意表を突く重い右ストレートが飛んでくる!


 瞬時にフォルネウスの外側に回り込み左ジャブの嵐をお見舞いする! フォルネウスはショルダーガードしながら左フックを打ち込む!



 左フックに合わせて私は左ジャブで返す! フォルネウスが左フックと見せかけて、左拳でアッパーをしてきた!


 私は右で口元をガードしていたが、まさか『左で』アッパーがくるとは予想外だ! 私はふらつく!

 強いパンチをふせぎきれずにダメージを受ける! フォルネウスの左パンチがアッパーなのかスマッシュなのかきわどいが、かなりいた!


 頭とひざがガクガクする!

 まだ倒れるわけにはいかない。次は立ち上がる自信がない。私は気を強く持つ!


 目の焦点しょうてんがやっと合う! そこに飛び込んできたフォルネウス!


 やばい……!


 今にもノックアウトされそうな刹那、ホイッスルが鳴る! レフェリーの林檎がフォルネウスを止める!


 私は命拾いをした。フォルネウスは悔しそうにグローブを殴りつけた。



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