第53話
「神木くん、ボクシングしたことない?」
林檎が静かに問う。私はそれに力無く
氷の入った袋で私の目元を冷やしている。椅子がないので私は変な
今はインターバルだ。たった一分間の休憩で
「最初から全力で
ボクシングの基本はね、小さく細かく動くこと。相手との距離感を
神木くんの弱さはボクシングを知らないこと。神木くんは洞察力が凄い。だからフォルネウスをよく見て。神木くんならフォルネウスの攻撃を全部避けられる。
体格差があるんだから同じインファイターでも神木くんに
『パーリング』『ダッキング』『ウィービング』知ってる? パーリングは相手のパンチを払ったり、ブロッキングは
神木くんなら勝てる。
これから第二ラウンドだ。足腰の状態を確認する。林檎がマッサージをしてくれたおかげで心身がかなり楽になった。
「両者、リング中央へ」
林檎の声が響く。私はマウスピースを口に
お互いに無言で
「ボックス!」
レフェリーの林檎が言い放つ! ツーラウンドの開始だ!
合図と同時にフォルネウスの
初めて見るフォルネウスのウィービング! 全身を使ってさっさと
私の左フックに合わせてフォルネウスが右のカウンターを振り下ろす! これを『チョッピングライト』という!
しかしそのパンチはフォルネウスの
私の右拳は常に自分の
私はそれと同時にフォルネウスのボディを見ながら身を
フォルネウスと距離があり軽くしか当たらない。フォルネウスがそこに一歩足を踏み入れ、さらに右アッパーを打ち上げる!
――――その時、私は低くダッキングして力を溜める!
膝を柔らかく使い全身で飛び跳ねるようにフォルネウスに接近する! 私はフォルネウスの顔を見上げる!
フォルネウスは瞬時に両腕をクロスさせ
――――どごぉおおんんん!!!
私のレバーブローがフォルネウスのボディに炸裂する!
そうなのだ。下から上に突き上げるフックを打つぞ! と顔でフェイントをしながら、そのまま後から前へとタックルを食らわせるようなボディブローを放ったのだ!
フォルネウスが
私の右ストレートにほんの一秒だけ顔を沈めるが、フォルネウスは足を踏ん張って
一瞬の
私はバックステップする! 一度フォルネウスから離れるフリをする! 熱くなったフォルネウスが体当たりをする勢いで私の
狙った通り!
私は左でガードしながら右で弓を引くように溜め、その反動と身のバネを合わせて、凄まじいボラードをフォルネウスにお見舞いした!
「ドラゴンフィッシュブロー!!!」
私は口からマウスピースを吹っ飛ばし大声で叫ぶ!!!
ボラードとはフックを応用したオーバーハンドだ。フォルネウスがキャンバスに倒れた!
藤原啓○さん大好きだ! ありがとう! 青木!!!
私はもう勝利した気になっていた。
まだツーラウンドだというのに。
両腕を天高く上げてガッツポーズをする!
――――がごおおんんんん!!!
私は横合いから強打をされキャンバスに落ちる!
フォルネウスの凶悪な右ストレートが私のこめかみに直撃したのだ!
私は意識を手放した。
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