第49話
私は焦っていた。鮫男だった悪魔のフォルネウスにボクシングで勝負を挑んだ。
しかしボクシングをするための条件が
いや待て。林檎が何か言っていたな。
ええっと、林檎がレフェリーになるって。ボクシングのルールを
いや待て。ボクシングのルールを思い出せ!
審判はレフェリーがメイン審判だろう。
んで判定の採点のジャッジするのが副審判だな。
ブレないようにタイムを
あれ? セコンドもいないぞ?
セコンドとはボクシング選手のマネージャーみたいなものだ。相手選手に攻めるための戦術を一分間休憩の時に教えてくれたり、負傷して戻ってきた味方の選手に水をくれたり。セコンドは監督でありお世話もしてくれる有り難い人なんだ。
セコンドいないのか……ボクシングはやっぱり無理かな……
いや待て。諦めるな。
林檎がボクシングのリングを創れるって言ったよな。リングを出現できるならグローブも創ってくれるだろう。
林檎さん、何でも出来るなあ。
……無能な私とは天と地の差がある。
しかしなあ、その林檎の能力をフォルネウスに見せてしまうわけだよな?
駄目じゃないか。敵に塩を送るってことだろう?
私がプライドを捨てて林檎にすべてを任せれば、林檎が確実にフォルネウスを
よく考えろ。この戦いは私の
私がくよくよしていると林檎が顔を寄せてきた!
私は声にならない悲鳴を上げて固まる!
「大丈夫。神木くんに正々堂々とボクシングをさせてあげる。何も心配しないで」
顔に熱が集まる。恥ずかし過ぎて私は
私はゆっくりと数歩後退する。林檎はふわりと微笑むと一瞬で消えた。
はて? 疑問を浮かべながら私は瞬きを繰り返し林檎の姿を探した。
林檎はいつの間にか変に折れた大木の
左手には『時の砂時計』に入ったままの美男子の悪魔だったセーレの生首を
「は〜い♡ こちらにありますのは勝者にお贈ります記念品でございます♡」
林檎はそう言うとセーレの生首を天高くぶん投げる!
えええええ!!?
セーレの生首をどうする気だ!?
は!!! 私がこんなにも
私はそっとフォルネウスを
今のフォルネウスはどこからどう見ても人間そのものの姿をしている。灰色の長い髪はボクサーブレイズになっている。要するに前髪から小さな四つの三編みをしている。途中から三編みを二本にまとめている。
ん?
フォルネウスのトレードマークの赤い目。鮫のような細長く引き締まった双眼。
……良かった。目が六つではなくちゃんと二つだ。本来の
鮫の
鮫が第六感がある。フォルネウスが第六感を使い嘘を見抜くと宣言していた。
明確な
鮫には磁場感知がある。
さて、どうしたものか。
私が人間になったフォルネウスを観察していた矢先事件が起きる。フォルネウスが雲を突き抜けたセーレの生首を追いかけるように地を
どええええ!!? セーレの生首取られちゃうじゃんっっっっ
林檎さん、どうするんすか!!?
セーレの生首の戦利品が無くなりやすよ!?
ひとりでおろおろしながら林檎を見た。
林檎は赤い光を放つ円形の魔法陣のような
バンテージ。グローブ。ボクシングシューズ。タオル二枚。バケツに入った大量の氷。
ボクシング用のゴングとバスケ用のカウンターデジタルタイマー。バスケの得点板。
バインダーにメモ帳とペン。
飲水と空のバケツ。ストップウォッチ。
最後にボクシングリングをどかっと派手に放り投げる。ずしんんん……と地響きと
ちなみにホイッスルは
このリング、林檎さんが作ったんですか?
目の前に置かれたのはしっかりとした六メートルの四角いリングだった。四方向にちゃんと白いリングコーナーポストもある。
いくらなんでも林檎さんが創れるとは思えない。後楽園ホールから
他のボクシング用品もスポーツジムからぶん取った気がする。林檎さんの四次元○ケット凄まじいですね。
大丈夫ですか。犯罪になりませんか。私は正直心配です。フォルネウスとバトルするわけでボクシングリングも粉々になりそうなんですが。
林檎さん、本当に大丈夫ですか?
いや待て。
ちょっと待てえええ!
今はそれどころぢゃない!
セーレの生首をフォルネウスに
林檎は気付かないのか!?
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