『私の辞書に不可能という文字はない!』 ――――――――第四章。『空界』とは。

第40話


*****     *****



 あれから時は飛ぶ。

 私の回想かいそうは終わった。

 そして、時はまわり始める。



*****     *****



 私の名前は神木空海かみきそみ。ちょっと物語が飛んでしまったので、私の祖父から聞いた話をする。


 私は祖父とともに修行におもむいていた。

 修行をする場所は神聖な空間だったため、私の第七チャクラの覚醒かくせい必須条件ひっす  だった。


 第七チャクラが開いていないと『壁抜け』が出来ない。そして『壁抜けの空間』は『異次元』だったため、第七チャクラが覚醒していないと『異次元』で迷子になり、永遠に時の狭間はざま彷徨さまよい続ける……という最悪の事態になるらしい。


 私は一度、『壁抜け』ができずに祖父から置いてけぼりを食らった。しかしその後、私を心配した祖父が戻ってきた。

 その時に私は、薄暗く狭いトンネルの中で胡座あぐらをかいたまま、ひとりで深く寝入っていたらしい。


 私に記憶は残っていないが、その眠っている際に『第七チャクラだけ』は覚醒したらしい。


 しかしながら困ったことに、私の第一チャクラ、第二チャクラ、第三チャクラ、第四チャクラ、第五チャクラ、第六チャクラは閉じたままになってしまった!


 まるで私が寝ているすきに、何者かによって『私の第一チャクラから第六チャクラまで』を封印されたようだ。



 そんなこんながあって、トンネルの中で目を覚ました私は、祖父に凄く心配をされたのだ。





 それから、無事に壁抜けをして『神聖な空間』で少し修行をしたのだ!

 神聖な空間の正式名称は『時の世界』らしい。

 『時の世界』は普段過ごしているこの人間界とは違う時の流れ方をしていた。


 人間界での一日は二十四時間。しかし『時の世界』では人間界の一時間が『時の世界での一日』となる。


 ちなみに時の世界での一日とはだいたい人間界でいうと一月ひとつきおおむね三十日間くらいの長さだと思う。



 うん。ややこしい。わかるぞ。面倒臭くてすまん。

 するっと流してくれ!



 人間界では日曜日の正午しょうごだった。それから時の世界へと飛んで約三時間の修行をした。

 時の世界の中では時間の流れが遅いので、おおよそ三ヶ月間の鍛錬たんれんをした。食糧があまり無かったので、祖父が修行の稽古けいこの合間に持ってきてくれた。


 私は血反吐ちへどを吐きながら、辛酸しんさんめながら、来る日も来る日も身体と精神をしごき上げた。




 その甲斐かいがあって私はぐんぐんたくましくなった。


 私の第一チャクラから第六チャクラまでは封印されているが、無理やりだったが新たに第八チャクラ、第九チャクラ、第十チャクラ、第十一チャクラ、そして第零 ぜろチャクラは開放かいほうされた。




 へとへとで死にそうな状態だったが、日曜日の夕方の六時から林檎のコンサートがあったので、死物狂いで這うように行ったのだ。


 ……林檎さんを怒らせたら本気まじでやばいからな!


 あ、勿論。身なりは綺麗にして行ったぞ!

 林檎のライブは凄かった。いやすさまじかった!


 サーカスのような曲芸を繰り出しながら、笑顔で歌い踊り……ハイセンスでハイクオリティの恐ろしいパフォーマンスをせてくれた。

 空中ブランコまであったぞ!


 無論、衣装もかなりっていた。バルーンスカート?に骨組が入っているのか、重力を無視して凄いふわふわしていた。

 残念ながら中身は白いもこもこで占領されていてパンチラはなかった! ポロリもなかった!

 非常に残念だっっっっ!!!




 林檎のコンサートの様子は一話を見てくれ! 少しだけわかるぞ。


 林檎さんがライブ中に爆弾を投下とうかしました。


 林檎が空界で修行するためにアイドルを卒業しないとならない。卒業するには理由が必要だ。

 その理由を『神木空海と交際するから』と宣言しました。全国中継で動画配信もやっているコンサートで、私は全世界を敵に回す羽目になりました。


 私のデスゲームの始まりです。


 ちゃんちゃん、おしまい☆




「おしまい☆ な、わけあるかああああああ!」



 私はコンサート会場から二駅離れた公園のベンチで、独り言を大声で叫んだ。

 私の足元にいたはとたちが一斉いっせいに飛び立つ。


 腕時計は夜の十一時をしていた。

 林檎のライブは十時に終わった。それから制限をされながら退場した。

 林檎とはこの公園で待ち合わせなのだ。


 私も林檎も中学二年生だからな。深夜徘徊  はいかいでおまわりさんに補導ほどうされてしまうぞ。


 林檎は来れないんじゃないのか?

 最後のお別れ会とかするんじゃないのか?



 マルコシアスをどうやって捕獲するのか、作戦をる時間がなかったし。




 ……あ! しまった!!!



 会話する余裕が無くてじーちゃん『神木太子  たいし』に空界のことや、ばあちゃん『神木神酒  みき』のことを聞き忘れてしまった!


 ああああ……色々考えてても、肝心なことを考えるのを忘れてた。だめじゃん。


 私はベンチから腰を上げて両手で頭を抱える。ベンチには黒い大きなリュックを置いている。食糧や着替えとか治療セットが入っている。


 林檎にスマホでメッセージを送ったが既読きどくはつかない。

 とりあえず、警察官に注意をされるまではここにいるとしよう。



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