第26話
「神木くんはポチにならない。僕の家族で、
「は? 何? 鉄槌? 馬鹿じゃん」
林檎の眼は本気だった。常人には見えない速度で、私をポチ呼びした男子生徒の頭が、つるっつるのスキンヘッドになる。
林檎が
一部始終を目撃した私は笑いを堪えた。
何故だろう?
さっきまで恐ろしかった男子生徒が、肌色の頭になっただけなのに、もう恐くはなかった。
「はああああ!!? 俺の髪がない!!?」
「日頃の行いが悪いから、いざという時に、守ってくれる神がいない、のよ。わかった?」
「ふざけんなしっっ! どんなトリックだ!?」
私をポチ呼びした男子生徒が、林檎の両肩を掴もうとしていた。私はそれを見過ごさない!
林檎と男子生徒の間に入り、男子生徒を軽く足で払い
「あは♡ 神木くんって、強いんだね♡」
「ありがとう、林檎」
私は林檎に微笑む。胸に込み上げるこの気持ちは、なんだろうか。涙が出そうで、我慢した。凄く嬉しかった。
林檎はとびきり可愛い笑顔で、私の腕に絡みついてきた。めちゃめちゃ可愛い。
駄目だ。幸せ過ぎて、私は泣いた。しくしくと
「ねえ、神木くん?」
「なんだ?」
「僕ね、神木くんに、お願いがあるの」
「……それ、恐いやつですか?」
ちょっと待った。
林檎さん、さっきのスキンヘッドは、林檎さんの
持ち上げといて、落とす!!!
私を
私の気持ちを返してえええ! もうお嫁に行けないっっ! 私の純情を返してえええ!
「あは♡ 恐くないよ?♡ はい♡ チケット♡」
「なんのチケット?」
「僕、アイドルしてるんだ。日曜日にコンサートあるから。絶対に来てね?♡」
「え? 嫌だ。行かない」
「コンサートに来ないと殺す♡」
にこにこ笑顔の林檎さん。だけど、眼だけは血走っていた。林檎さんの本気を感じた。
こ、これは、やばい! なんとしてでも、コンサートを拒否したい!!!
そのコンサート、絶対にやばいやつだろおおお!!!
ど、どうにかして、コンサートを辞退しなくては!
ち、チケット!
チケットを紛失してしまえばいいぢゃないかあああ!!!
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。