第24話




「めでたし、ぢゃなあああい!!! 日直の仕事を放棄してしまったあああ!!!」



 がばっと目覚めると、おでこに激痛が走る! 私はうずくまって、声にならない悲鳴を上げた!


 涙腺崩壊した。再び目を開けると、真っ白い世界だった。よく、よ〜く目を凝らすと、ここは八雲中学校の保健室だった。私は保健室の簡易ベッドに寝ていたらしい。


 これ、絶対に頭蓋骨にヒビが入ってる! 林檎からピコピコハンマーで殴られて、こんな羽目にうとは。


 恐るべし! 花村林檎さん!



 いやはや。完全に無防備だった。ピコピコハンマーだぞ!? 戦闘力があるわけないと、たかをくくっていたら、この有りさまだ。ざまぁない。私もまだまだ修行不足だな。



「どうする? アイ、フルボッコ。夕刊の配達。その前に、山から竹を百本。朝できなかった家事と掃除に、畑仕事。今何時だ? ――――あ!? 腕時計がない!? 犯人は林檎か?」



 私は勢いよくベッドから飛ぶ! 着地した振動により、額の傷から少し血がしたたり落ちる。私はおでこを押さえ、呻き声を漏らす!


 触ったら、めちゃめちゃでかいタンコブが出来ていた! これ、第三の眼ぢゃないのか!? めちゃめちゃ痛いんですけど!!?



「あ! 起きた? 林檎ちゃんが教室で待ってるから! 林檎ちゃんが代わりに、日直してくれたんや。ちゃんとお礼を言いよ?」



 私が保健室の緑色の床で、おでこを抱えて、痛みを抑えていた。ばたばたと耳障りな音を立て、現れたのは高梨葵。



「高梨葵。なんで君がここに?」


「林檎ちゃん、忙しいから! もう元気なら、林檎ちゃんとこに行きなさい!」


「いや、元気じゃない。見ろ、この大きなコブ。こんな不細工ななりで、林檎の前に行けるか!」


「アフロとなにが違うの? あんたいつもカッコ悪いやん! 今更どーこーなりませんって! 四の五の言わずに、腹括れや! 日曜日、林檎ちゃんライブだから、林檎ちゃんの親衛隊がラブ・コールしてるの! 林檎ちゃんに「頑張って」くらい言ってこいや!」


「ライブ? 親衛隊? 林檎はアイドル活動をしているのか?」



 ふむ。そうか。見た目だけなら、林檎は天使だからな。性格は悪魔だが。八雲中学校でアイドル活動をしていても、おかしくないのか。


 しかし。日曜日? 今週末の日曜日に、校内でイベントなんてないはずだが?


 親衛隊だけの、選抜大会みたいなのがあったのか? 会員制の林檎のライブが、八雲中学校であるのか? 私も林檎のファンクラブに加入するべきか?


 いや、しかし。私は忙しい。いくら好きだからと言って、ストーカー行為はいかんだろ。四六時中、一緒にいては、林檎から飽きられるかもしれんし。林檎はクールだからな、笑わせるネタに困るのだ。どうしたもんか。



「みみっちいこと言わずに、さっさと林檎ちゃんに会いなさい!」


「しみったれ、とか、意気地無し! って言え! みみっちいとか言うなあああ!!!」



 私は高梨葵にふうううう!!! と猫のごとし、激しく威嚇いかくする。イライラしたせいで、余計にタンコブから流血するが無視! 痛みに耐えながら、私は教室に向かう。



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