第2話
そう。事の次第は先週の月曜日からだった。
私は
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空は曇っていたが七月なので暑い。私は月曜日の朝、普段通りに中学校に登校した。早くもなく遅くもない。そんな普段の時間に校門から校舎に向かって歩いていた。
刺さるような視線を感じた。いつも私は『空気』になっていた。誰かに見られることは随分となかった。だからきっと気のせいだろう、そう思い無視をした。
月曜日、その違和感は一日中続いた。一日中見られているということは、クラスメイトが犯人だろうか。いや私は気にしない。『関わらない』ことで私は今、『平穏』を手に入れている。
次の日火曜日、そして翌日の水曜日、その視線はほぼ四六時中あった。男女別々の時はなかった。つまり私をガン見しているのは女子生徒と特定できる。
アクションがあったのは水曜日の午後。私立中学校なので教室内は冷房があり涼しい。しかし換気も必要なので窓は少しだけ開いている。そこから時折、生温い風が入ってくる。
私はいつも教室でひとりでパンを
「神木くんって、いつもひとりね。友達いないの?」
私は通路側の一番後の席だ。私の背後から声が聞こえた。私は『空気』に徹して無言で焼きそばパンを頬張る。一緒に買ってあった紙パックの珈琲牛乳も飲み干す。
私の名前は
品のある白いワイシャツ。ちなみに女子は白いブラウス。
男子は鮮やかな緑色のパンツ。女子はワンピースタイプのスカート。男女ともに鮮やかな緑色の生地をメインにしているが、
白いシャツの左肩腕部分には、
男女ともに胸元に白を
「神木くん、僕の名前は知ってる?」
私が食事を終えるのを
私は見なかったことにして、自分の机の中から小説を取り出し読み始める。『人間失格』という有名な書籍だ。人は簡単に狂っていく。だから私は自分が『狂わない』ための
「僕のこと知らないんだ。神木くんって変わってるね」
それは違う。意識して『知らない』ようにしている。万が一、クラスメイトを好きになってしまったら私は『透明人間』ではいられなくなる。学校では誰とも関わらない。
それが私のモットーだ。私に必要なのは刺激ではなく『安定』だ。
「じゃあ僕のことを、教えてあげるね?」
いやいやいやいや。遠慮します。全力でお断りします! んぐうう! 会話をしてはいかん。ひたすらスルーをする。無視をし続けるに限る。刺激はいらんっっ
「僕の名前は
私は断じて興味を持たない。意識を『人間失格』に集中させる。私はこんな人生嫌だ。自分の人生の
特別じゃなくていい。地味でいい。ただ
私は中学生だ。新聞配達のアルバイトをしている。私の家族構成が知りたいか?
祖父と二人暮らしだ。祖父の年金で生計を立てている。早く大人になって働いてお金を稼ぎたい。祖父に細やかな楽しみを満喫してほしい。それには多少のお金が必要だ。
私はまだ中学生で、世間から見たら子供だ。
何故高い予算がかかる『私立』に行っているかというと、それが祖父の希望だからだ。八雲私立中学校から徒歩十分の場所に家がある。
祖父と私は家の
自転車で三十分走るとちょっとした山がある。その
お米はご近所さんが作っているので、そちらから安く買わせてもらう。たまにスーパーでセール品の鶏肉を買う。調味料を買う。野菜の種を買う。
それでなんとか生活をしている。
「神木くん? 聞いてますか?」
昼休みの終わりのチャイムが鳴る。林檎と名乗る女子は先生が
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