9章
俺がその声に驚いて我に返った。最後の一言は、俺が言ったわけじゃない。
目の前に、弟子が屈みこんでいた。その口から発されたものだ。
「師匠。あなたがやったことが何であれ、それは正しかったと思います。誰かの正義の元行った行為は、全て間違っていない。そう教えてくれたのはあなたです」
弟子はそのまま続けていった。しかしハッと気づいたように
「少し上から目線でした。すいません」
そう言って謝った。だた、その瞳には力があった。俺は頬に熱いものが流れるのを感じた。
「いや。もういい」
弟子は、その声に驚いて顔をあげた。
「もう君は、僕の弟子ではない」
「それって・・まさか破門ですか!」
弟子は驚くほどの勢いで慌てだした。「破門だけはご勘弁を」とか言っている。
「いや。違う」
俺がそう言った途端、面白いぐらいに胸をなでおろした。
「もう君は、僕を超えた。だから、君は僕以上の魔術師だ。実力だけでなく、精神も
僕がそう言った途端。目の前が暗くなってきた。足に力が入らなくなってきた。倒れた私を弟子が支えて座らせた。これは、死ぬな。ついに来たらしい。不思議と、死に対する恐怖はない。ただ一人の魔術師を育てた満足感に満ちている。
「もうそろそろ僕は死ぬらしい。いいタイミングだ」
「え?どういうことですか?」
「僕に掛けられた呪いの本当の姿は、僕らの家の戸棚に入っている日記に書いてある。それを読め」
できれば、その呪いに関しても説明したかった。俺の口から。だが、それはわがままという物だろう。
「コナー」
僕は最後に、どうしても言いたかったことを言おうとした。もう口が動きにくくなっている。
「ありがとう」
目の前が完全に暗くなった。だが、最後に幸せそうに泣いている弟子の顔が頭に残った。
その顔には、魔術師として完成した喜びがあった。
完結
悪魔は死に、土に還る 曇空 鈍縒 @sora2021
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