6章

学都オルビドにある行きつけの宿屋に、一泊二食付きで泊まった。ここの宿は、部屋はともかく飯はうまい。学都の研究者なんて、何食って生きてるのかわからないやつも多いから下手な店には入れない。


その点、この店は魔術鑑定で食品が汚染されていたりしないし、品質も保たれているから安心だ。


かなり早起きしてに朝食を食べて、朝五時には出発した。


次に私たちは、歩いて隣の国に向かった。それなりに遠く、一日中歩くことになるが、朝早く起きたから多分宿を探す時間はあると思う。


隣の国は魔術学が全く行われていないと言ってもいいほど行われていなく、その代わり、科学というものが盛んにおこなわている。常に工場から煙が立っている。排気ガスを大量に発生させ、さらに近くの森をどんどん切り崩している。空気がまずい国だ。


「人前で魔法の話をしたり、魔術師を名乗ったりするなよ。この国で魔術師は差別されている。若い世代には、魔術なんて存在しない思っている人が多い。最近は、そういう国も増えているんだよ」


私がそういうと、弟子は信じられないというように目を見張った。


確かに、我々魔術師は長年の歴史で確かに戦争にもかかわった。ただ、医療現場や、その他諸々の部分で数多くの人も救ってきた。


「私の師匠ファウストは、人々に慕われていた。魔術師は、皆頼られていた。今から五百年前の話だ」


時代は変わったんだよ。と、私はつぶやいた。コナーは黙って聞いていた。


その国に使づけば近づくほど、機械が目に付くようになってきた。車、電燈、などなど。弟子は全て見るのが初めてで、私は一つ一つどんなものなのか説明する必要があった。


それら一つ一つに弟子は驚いていたが、一番驚いたのは、やはり巨大な工場群だった。大量の工場が動いている。煙突が立ち並び、煙が大量に空へ送り出されるこの様子はめったにお目にかかれない。


魔術で作れる最大サイズのものは都市一つなのだが、それをはるかに上回る巨大都市が、そこにはそびえたっていた。


「大きいですね」


圧倒されたようにコナーがつぶやいた。

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