3章


徐々に日が傾いて来た。もう夕食時だ。窓の外から、買い物をするにぎやかな声が流れ込んでくる。


わが弟子コナーは、最後の調節を慎重しんちょうに終えると


「できた!」


喜びの声をあげた。彼の作った魔法陣は彼の魔力の色である淡い青色をしている。


魔力には色があり、濃い方は、魔力が濃く威力の高い魔術を、薄いと魔力が薄く精度の高い魔術を、扱いやすいと言われている。


彼の作る魔法陣は実際に、繊細だ。まるで芸術品のようだ。


「ほお。これは火を使う魔法陣か。この魔法陣上だったら自由に炎を出現、操作できるんだな。見事だ。素晴らしい」


一般的に、料理に便利なので類似品は結構流通している。価格も安い。


ただ、この魔法陣は一万分の一ミリレベルまで炎を調節できる超高性能だ。このレベルのものは、研究所だって持っていない。


コナーは嬉しそうにしていたが、掛け時計が鐘を打つと、窓の外を見て、夕食の用意がまだだったことに気づいた。


「買い物行ってきます!」


コナーは、慌てて玄関に走った。その背中を温かい目で見つめる。


「階段に気を付けるんだよ」


我が家は二階建てだ。研究室は二階。一回では、自動人形オートマタが、魔術製品を売る店がある。私たちの作る魔術道具は、結構評判だ。


「はーい」


と声が聞こえた。思わず、口元が緩んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る