第11話
「どうしたの、小野? 今日ずっと寝てるじゃん」
「深夜の通販番組見る趣味でもできた?」
昼休み。中村と愛ちゃんにそう声をかけられた。
私はむっくり起き上がって口を開く。
「ちょっと調べごとしてて」
寝不足の理由は、調べごと。お弁当作戦に失敗した私は、どうすれば、気になる男の子と関わりを持てるかを調べまくった。が、途中でてきた、ふにゃふにゃ時間を聴いて号泣し、ピュアな心で日曜日を思い出してふけってしまったため寝不足である。いや、寝不足の理由は調べごと、何一つ成果はなかったけど、調べごとのせいである。
「隈できてるじゃん、小野。そんなんじゃあ三大天の座から落ちるよ」
「三大天って何?」
初めて聞いた単語を尋ねると、中村は意気揚々と語り出した。
「ほら、入学からもう2ヶ月経ったわけじゃん? そしたら、可愛い子に目星がつくわけじゃん?」
「はあ」
「小野、水城さん、帝ちゃんの飛び抜けた美少女三人を三大天って呼ぶの」
「うさんくさ〜。誰が決めたの、そんなこと?」
尋ねると、愛ちゃんが答えた。
「この学校の、三大天候補以外の女子とほぼ全ての男子」
「思いの外、大規模」
「男子の六大将軍ってのもあるけど、知りたい? ちゃんと最後の一席は空席だよ?」
「知りたくない。もっと言えば、三大天に選ばれてることも知りたくなかった。めちゃくちゃ恥ずかしいよ、なんだよ三大天って。トップスリーとかでいいじゃん、いやそれも恥ずかしいけど」
恋の悩みでいっぱいいっぱいだというのに、悩みの種を増やさないで欲しい。
「あぁでも、帝さんかぁ」
つい漏れた私の独り言に中村が反応する。
「どうしたん、帝さんに何かあるの?」
「う〜ん、難しいんだよね。会うたびに勝ち誇った感じだされてるから……って、あ」
中村の顔が曇ったのを見て、話を止めた。
「それはごめん」
「いやいやいや! 中村のことじゃないって!」
慌てて否定したけど、中村は申し訳ない顔のまま。ちょっと気まずい空気が流れてから、中村が口を開いた。
「いーよ。実際、僻んでたし。でも、今はもう負の感情は持ってないから。許してくれとまでは言わないけど、それだけは信じて」
しばらくの沈黙のあと、私は声を出した。
「……うん、信じる♡」
「うわっ、小野からハートが飛び散った! 何これ、直視できない!?」
「やば。魔法少女にでも変身するの?」
「嬉しいんだから仕方ないじゃん」
中村が気兼ねない、ちゃんとした友達になって嬉しいんだから仕方ない。それに中村だけじゃない。角が取れたのだから、他の子たちとの関係も改善しているはずなのだ。
ああ、好き。湊くんのことが、どんどん好きになる。
「ねえねえ、中村、愛ちゃん」
二人の視線を集めたところで、悩み事を口にする。
「気になる男の子と関わりを持つにはどうすればいいかな?」
「うーん。小野なら、デートに誘えばいいんじゃない? 小野に誘われて意識しない男なんていないでしょ」
「じゃあどこ誘ったらいいかな?」
「男の好きなところ誘えば余裕っしょ」
男の好きなところ、どこだろう?
早速、男 デート で、ぐぐり、適当なサイトを開く。
なになに、『デートは我慢して女性に付き合ってあげましょう。どんなに苦しくても、ホテルでのお楽しみのために耐えましょう』って読む記事間違えたなあ。
別のページを見ようとしたとき、ぽこん、と音が鳴ってメッセージがきた。
『小野さん、お話があります。屋上に来てもらえませんか?』
あまり関わりのない女の子からのメッセージ。だけど、それが告白のためのメッセージであることは見た瞬間にわかった。
中学生の頃、今みたいな身体になる前は、女の子からの告白ばっかだったんだよなぁ。
立ち上がったとき、愛ちゃんに声をかけられる。
「あのさ、結衣」
「ごめん、愛ちゃん、ちょっと急用で行かな……」
言葉が途中で途切れた。それは愛ちゃんが今まで見たことないくらいに、真剣な、冷たい表情をしていたからだ。
「水差すのもなんだから、言うのを躊躇ってたけど……」
愛ちゃんは重く深く響く声で言った。
「橘が相手なら諦めたほうがいいよ」
「え……」
時が止まったような錯覚を覚える。が、スマホが震え出して、再び時が流れる。
「ごめん、行かないと!」
着信のバイブレーションに急かされるように、わけもわからないまま、そう言って、教室を出る。すると入れ違いに銀髪の美少女が隣を通って、教室に入っていった。
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お読みくださりありがとうございます。
続きを書くモチベーションになりますので、一言でも何でもいいのでコメントや、☆レビューしてくださると嬉しいです。
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