第一章

 木々の隙間から、燦々と降り注ぐ太陽と、空高く飛ぶ鳥の姿が見えた。俺にも羽があれば、わざわざ歩く必要なんてないのに。そう思うのと同時に、あの鳥に手が届くのであれば、この飢えも満たせるのに、という原始的な欲求も湧き上がってくる。両親の仇が立ち去った方角へ歩いてきたが、奴の痕跡どころか、ここ三日三晩、まともなものを食べていない。

 ……このままじゃ、あの吸血鬼に辿り着く前に、俺が餓死しちまう。

 そこで俺は、苦渋の決断をし、ある場所を見つけるため、木々が生い茂る小高い丘を登っている。途中、木の枝で頬の皮膚が裂けて血が出るが、それに構うことなく、棒のような足を引きずるように動かし、汗をボロボロになった服で拭いながら、歩みを進めていく。やがて緑が薄れ、木々を揺らす風が、俺を置き去りに空へと逃げていく。丘の頂上に、たどり着いたのだ。木に体を預けながら、俺は辺りを見渡した。

 ……ここなら、ある程度遠くも見渡せる。だから、あれを見つけられるはずだ。

 見つけられなければ、俺はここで餓死するしかない。見つけられたとしても、そこから先、命の保証はどこにもない。それでも、今死ぬよりはマシだった。

 果たしてそれは、予想に反してすぐ見つけることが出来た。岩を積んで作られた城壁。来るものを拒むような堅牢な城門。そして、天を穿つかの如くそびえ立つ、塔の数々。その塔が連結し、一つの城を作り出していた。

 あれは、吸血鬼の『集落』だ。

 俺は歯ぎしりしながら、その『集落』に向かって歩き出す。その足取りは、丘を登る時よりも、重い。

 俺は今を生き残るために、再び『牧場』に入り、吸血鬼の家畜になることを選んだのだ。

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