第2話


ウーロン茶を持って席に戻るとシーザーサラダも届いていた様で美雨が取り分けてくれていた。


クルトン多めに取り分けてくれてる辺りが私の好みを分かってるからこそなのだと少し嬉しくなる。


奏汰とのやり取りの事は一度頭の端っこに置く事にして、美味しいご飯を堪能する事にする。


私が戻って来るのを待っててくれた美雨が私が座るのを確認し、イタダキマスと小さく手を合わせてフォークとスプーンを上手に使いパスタを食べ始めた。


私も小さくイタダキマスと呟いて、フォークを持つとまずシーザーサラダの皿を持ち食べ始める。


暫くは美味しいとか、あの店に行きたいとか、当たり障りない会話を中心に食事を堪能した。


食べ終えて、ウーロン茶を飲みながら私から話を振る。

これも毎回のパターンかも知れない。


「奏汰にはお別れメールするよ、私が1番じゃないのなら嫌だし、私はセフレになりたい訳じゃないんだもん。」


出会った半年前は沢山好きと言ってもらえた。

毎日の様に会っていた。デートだってした。

それからちょっとずつ会う頻度が減って行って最近は週1か2週に1回のペースで会っていた。

そして、会う=行為になってしまっていたのも事実だ。


「好きになるモノは仕方ないかも知れないけど、ちゃんと考えて行動しなささいね?」


食後のアイスティーにポーションを入れてミルクティーにして飲みながら美雨が激励ついでに条件を示してくれる。


「いーぃ?今後は簡単に信用しない事、すぐに関係を持たない事、ちゃんと彼女として扱ってくれる人を好きになりなさいね?」


「はぁい、努力しまーす。」

「ホントに分かってるんだか……はぁ。」


半分呆れられながらも美雨が優しくしてくれてたから良しと思い、帰り支度を始める。


美雨も上着を羽織り帰り支度をしてバックを肩にかけ伝票を持って会計へと向かう。


私も慌ててバックを持って美雨に付いて会計へと行く。


「お会計、3220円になります。」

店員さんが淡々と告げた言葉に財布を広げた

「2000円出すから後、よろしく」

サラリと美雨はそう言い残して入り口から外へと出ていった。

これも毎回のパターンで、いつも美雨が多めに払ってくれているのだ。ありがとう、美雨。


会計を終わらせて私も入り口から出ようとした所で不意に声をかけられた。


「あの、すみません。もしかしてスマホ、テーブルに忘れませんでした?」

振り返るとスーツ姿のちょっと年上位の男の人がスマホを手渡してくる。


よく見なくても自分のスマホケースだとすぐに分かった。

「あ、私のです、ありがとうございます。」

ニコッと笑顔を向けると相手は、パッと顔を反らし「良かった、じゃぁ」と入り口のドアを開けて席に戻ろうとした。

髪で見えにくいが耳が真っ赤になっている様に見えた。

「あ、待って。」

私は呼び止めてバックから急いで単語帳を取り出し自分の番号を書いて彼に渡した。


「きっとスマホ無くしたら困ってたので、ありがとうございました。お礼したいので気が向いたらで良いので連絡してください。」

自分でも普段しない様な行動にちょっと驚きつつ、無くしたら困るスマホを届けて貰ったからと思って相手に伝えた。


相手も驚いたようで手渡された番号のメモを見てビックリしていたがすぐにじゃぁ俺も…と番号を単語帳に書いてくれた。


「それじゃ…」「ありがとうございました」


微妙な空気で親切な彼と別れて待っている美雨の所へ行く。


「今の方はどなたかしらー?」

一部始終を見ていたらしい美雨がジトーっとした目で私を見ながら説明を求めてくる。


さっきまでの私の話聞いてた?もうナンパされてんの?と言いたげな目と口元だ。


「テーブルにスマホ忘れちゃってたみたいで届けてくれた親切なサラリーマンさん、お礼したいのでって連絡先交換した。名前聞いてないから名無しさんだね。」


「ふぅ~ん。まぁ、良いけど。ちゃんと真っ直ぐ帰れる?送ろうか?」


私よりよっぽど可愛らしい外見の美雨に格好良い事言われた!

腕時計を見て時間を確認する。

時刻はまだ夜の8時前だ。


20歳を越えているならばここから飲みに行くという事もあるかもしれないが私はまだ未成年だ。

美雨は20歳だけど。


「ちゃんと真っ直ぐ帰ります。美雨はどーするの?」

私がいつもファミレスで話した後は真っ直ぐ帰宅しているのを知っている美雨は満足そうに笑い、美雨はこれから彼氏の家に行くと教えてくれた。


「いきなり呼んじゃってごめんね、ありがと。彼氏さんの分もごめんねとありがとう美雨にしとく。美雨は私の事分かってくれてるから大好き。いつもありがとう。」


ファミレスの駐車場で別れ際にギューッと抱き着いちゃうのも何回目だろう。

「はいはい、ちゃんと関係終わらせておくんだよ、流されちゃ駄目だからね。」

軽く抱き着き返しながらポンポンとアドバイスをくれるのもいつもの事。


バイバーイと手を振って駐車場で別れて私は帰路についた。


いつもの場所から家まで10分。

街灯や行き交う車などで比較的まだ明るい時間帯での帰宅だ。


(珍しく帰りの道中ではスマホを見なかったなぁ。)


そう思いながら家に着く。


鍵を開けて部屋に入り、すぐに鍵を閉めてチェーンをする。

靴を脱いでそのままベッドへ直行する

ボスッとそのまま倒れ込みのそのそとスマホを持ち上げて画面を見つめる。


これから奏汰へのメールを打つのだ。


セフレになるつもりはない事、彼女だと思っていた事を書いて最後にサヨウナラと書いて。

深呼吸してからメールを送る。


えいっ。


ポチッと送信ボタンを押してふぅ~と息を吐いた。


少ししてから不意にスマホが

ヴヴヴヴヴヴッと鳴った。


普段使わないショートメッセージを受信したらしく珍しくバイブ通知が鳴ってビックリしてベッドから起き上がった。


知らない番号だ……。

普段なら気にも止めないが、バックから単語帳を取り出し番号を確認すると、一致したので先程の親切なサラリーマンさんからのショートメッセージの様だ。


私はタップしてメッセージを開いた。


『先程、ファミレスで番号を渡した者です。あの場で丁寧にお礼されていたので改めてのお礼等は大丈夫ですよ。』


これ以上のお礼は大丈夫と言われたので私は返信を打った。


『丁寧だなんて…、優しいんですね。でも本当に助かったのは事実ですよ。ありがとうございました。』


『いえいえ、どういたしまして』


今までの男性達に無い優しい文面に戸惑いながら私は返信した。

落ち込んでいた自分の心にも少し明るさが取り戻されたことで動く気力が出てきて化粧を落としたりする為に私はシャワーへと向かった。




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