彼女として好きになってくれますか?
遊真野 蜜柑(ゆまの みかん)
第1話
私は今日も自分じゃない誰かに身体を預けるの
好きになった相手と共に過ごす時間はどんなに短時間だろうと
行為だけの関係になろうと
とても心地良い物で
私に沢山の幸せな夢を見せてくれるのと同時に
酷く喪失感を伴う物だったりする
今日も貴方の下で愛されていると実感する為の筈の
愛を確かめ合う筈のこの行為を受け入れる
緩く浅くベッドが軋む音と共に男女の吐息が交じる。
「………っンぅ…」
「………ハァ……ハァ」
呼吸を整えながらゆっくりと布団に潜る様に身体を滑らせた
私に背中を向けて寝転んでいる奏汰は煩わしそうに腕を除けて布団から出てベッドに座り直し背中を向けてスマホをいじっている
(最近は冷たいなぁ…。前は腕枕とかギュッて抱き締めてくれたりしてたのに……)
交際期間が半年にもなればこんな物なのか…と小さく溜め息を吐いた私は軽くシャワーを浴びたくなって布団から起き上がった。
丁度、スマホを操作するのを止めた奏汰が立ち上がる。
タイミングが合ったのかと嬉しく思い自然と口元が緩み出していた私を仏頂面で見下げてくる奏汰は淡々と告げた。
「これから彼女と会うから帰るわ、聖。」
私は数回瞬きをして首を傾げてそのまま固まった。
(ここは私の家で、奏汰は私の彼氏で、今までラブラブしてたのに一体どぉゆー事???)
私が固まって思考回路をフル回転して考えている内に素早く服を整えて鏡の前で身支度を完全に終えてバックを持ち私の前に戻ってくる。
軽く私の頭を撫でてくる奏汰の行動に対して私はまだ混乱したままだ。
「じゃぁ今日は帰るわ。」
撫で終わりの合図みたいに頭を2回ポンポンして奏汰は離れようとした。
その手をギュッと握り何とか私は問いかけた。
「……えっ?彼女ってどーゆー事?私が彼女だよね?!」
訳が分からないと困った様な縋る様な私に対して奏汰は訳が分からなくて迷惑そうな顔で私の手を退かしながら言う。
「聖とはセフレだろ?何言ってんだよ 。」
爆弾発言を残して部屋を出て玄関へと向かう。
「じゃぁ俺行くから。またな。」
さっさと靴を履いて奏汰は行為が終わってから1度も私と目を合わせないまま帰っていった。
ーーーーーバタンーーーーー
扉が閉まる音が響き私は悲しくなってベッドに前のめりに倒れた。
そしてまた
虚しくなった。
5分程ベッドでゴロゴロと繰り返し私はサイドテーブルに置いてあるスマホを手に取りメールを打つと少し待つ。
既読マークが付いたのを確認しすぐに電話をかけた。
ーーーープルルルルーーーープルッ
「ねぇ、話したいから6時にいつもの場所でいい?」
今はまだ4時だから軽くシャワーして化粧したとしても間に合う時間を指定した。
電話口で相手が了承してくれたので素早く電話を切り服をかき集めてシャワールームへ行く。
シャワールームなんて言ってもただのユニットバス何だけどね。
先程かき集めた衣類達をネットに入れたりしてから洗濯機へと放り込んでシャワーへ向かう。
手早く全身を洗い、髪を乾かしてアイロンで緩く巻きながら服装をどうしようか考えた。
いつもの場所ならオシャレする事も無いか…と思い簡単にゆるふわ系のレイヤードのセットアップをチョイスした。
ブラウンがメインの落ち着いた感じだがトップスにベルトがあり腰の位置を高く見せてくれて、同色のスカートはチェック柄で裾部分が色んな長さでヒラヒラしていて可愛い、そんな服。
着替えを終えて軽く化粧をしていく。
ベースに下地にファンデーション。
慣れた手付きでナチュラルメイクをしていく。
全ての作業が終わる直前に口紅の代わりに色付きのリップを塗る。
きっと話しながらご飯になるだろうと考えてあえてリップにしたのだ。
ーーーーーーーーーーーー
もうすぐ目的地に着きそうで上着のポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
……腕時計を付けているけどスマホを触るのが癖になっている為にどうしてもスマホを見る回数が増える。
画面のロック解除しても、どうやら奏汰からの連絡は入っていない様でちょっと淋しい気分になってきた。
スマホをポケットに戻し再び歩き出そうとした所で「聖華!こっち。」
と前から可愛らしい声が聞こえてきて、前を見ると親友の
無事に合流して他愛ない会話をして目的地であるファミレスに着くと席についてメニューを決めて私はオムライスとドリンクバー、美雨はパスタとドリンクバー、そして分ける用にシーザーサラダを注文する。
ドリンクバーを取りに席を立ち、戻ってきて自分のアイスティーを飲みながら美雨が切り出した。
「それで?今日は彼氏とデートって言ってたのに呼び出すなんてどうしたの?喧嘩でもした?」
一生懸命平静を保って居たけれど内心はもうパニック状態だった私は机に突っ伏したくなる気持ちと泣きそうになる気持ちを抑えながら美雨に向かって話す。
「喧嘩なんて可愛いモンじゃないよぉ、もう。ホントに病み案件だよ。」
持ってきたグラスの中のオレンジジュースと氷をストローを使ってカラカラと廻しながら私は続けて話す。
「奏汰がね、終わった後スマホいじってたと思ったら……いきなりこれから彼女と会うから帰るって言い出したの!!私、ビックリして一瞬固まっちゃったよぉ!あ、でもね、ちゃんと聞いたんだよ?私が彼女だよね?って」
私は捲し立てる様に早口になりながら言い、カラカラと廻していたのを止めグラスを握り直した。
全てを察した美雨はまたかと顔をしかめ、アイスティーをズズーっと飲み干してグラスをコトリとテーブルに置いてから可愛らしい外見と声には似合わない言葉をズバッと発した。
「聖華はセフレだってまた言われたの?」
シュン…と項垂れる私の無言を肯定と捉えた美雨がもう何度目か分からない位言われ慣れた言葉をくれる。
「だから簡単に人を好きになって関係持ち過ぎだって言ってるじゃん、もう。聖華だってもうすぐ20歳なんだよ?少しは考えて行動しなって…。」
バッと顔を上げて私はいつも通り反論する。
「でもでも、奏汰だって私の事好きって言ってくれたし、沢山優しくしてくれてたから……彼女だって思ったんだもんー。聞いたら重いかなって思って聞けなかったんだよぅー。」
手で顔を覆う私に美雨は慣れた様に言う。
「それで、結局彼女じゃなかった聖華ちゃんはこれからどーするんですかー?」
相変わらず可愛いのに私に優しくしてくれる気は丸っきり無い様だ。
いっそ清々しい。
美雨は私にどーするんですか、と聞いておきながら2杯目のアイスティーを取りに席を立つ辺りも私の相手に慣れてるからだろう。
その間に私は心を決めておく。
「お待たせしました、こちらオムライスとトマトとモッツァレラチーズのパスタになります。」
店員さんさんが注文の品を置いてすぐに立ち去る。
そこに美雨も戻ってきた。
私はグラスに残っていたオレンジジュースを飲み干して、新しくウーロン茶を取りに行く事にした。
ご飯食べる時はジュースよりやっぱりお茶の方がさっぱりして落ち着くからね。
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