第99話 初デート(翔太ver)
「来たね」
「ああ」
俺たちが翔太を見守ること5分。
ついに待ち合わせの相手がやってきた。
「待った?」
「いや、待ってへんで?今日は来てくれておおきにな、森山さん。」
翔太がニコリと笑うと、待ち合わせ相手の夏奈はすっとそっぽを向く。
「別にいいよ。」
だがその顔はほのかに赤く染まっており、今の夏奈の気持ちをうかがい知るのには十分だった。
そしてそれは鈍感二人組にも伝わったようで……
「うわ、今の森山さんの顔見た?むちゃくちゃ乙女の顔やな」
「見たよ!あれは完全に翔太のことが好きになってるね」
一方で、一番大事な翔太にはそのことは伝わっていなかったようで、
「そうか?おおきに!じゃ、行こか」
といってニカッと笑う。
その様子に夏奈は顔の赤さが濃くなったのであった。
◇◇◇
両片想い状態の二人が電車を乗り継いで最初に訪れたのは、デートの定番スポットとも言える、『スポッティ』。
いわゆる屋内アミューズメント施設だ。
アウトドア派の二人にとってここが一番気楽に行けるのかもしれない。
森山さんにバレないように後をつけて、スポッティの中に入る。
ボーリング、ビリヤード、ダーツ、バッティング……
色々な選択肢がある中、二人は入ったものの何もせずに近くの席に座ってしまった。
「どしたんだろう?」
「いつもの二人ならすぐにでもなにか遊びそうなのにね……?」
その様子に、裕太と貴司も困惑しているようだった。
しかし、俺はその様子をどこか温かい気持ちで見守る。
おそらく、二人は異性と一対一で遊びに来るのは初めての経験。
きっとどうしたらいいのか、分からないでいるのだろう。
現に、ふたりとも、やってみたいスポーツの方にちらっと目を向けるものの、相手に言い出せずにいる様子だった。
ふと、翔太と目が合う。
泣きそうな顔をしている。
犬系彼女は流行っても犬系彼氏は流行らないぞと思いながら、俺は翔太に向かってサムズアップしてみせた。
それを受けて、翔太は覚悟を決めたようにうなずいた。
◇◇◇(翔太視点)
スポッティに入ることができたのはいいものの、急に同接したらいいのかわからなくなってしまった俺は健太に視線を向けて助けを求めてみる。すると、帰ってきたのはサムズアップだった。
ここは迷わずにいけ、という意味だろうか。
怖いけど、ここは彼女を持っているやつを信じるしかない。
「夏奈?」
「…ッ!」
「最初、ボルタリング行かへん?ずっと気になっとったんやけど……どう?」
よし。なんとか話しかけられた。
あとは夏奈の返答次第でどこに行くか決めたらいいだろう。
「……いいと、思う。」
いつものようなツンツンした感じではないのが気になったが、同意してくれてよかった。
ホッとした俺は夏奈に笑いかけてボルタリングの方に向かって歩き出した。
__________________________________________________________________
すっごい久しぶりの更新になってしまいました。すいません‥‥
少しずつ戻していきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます