第98話 尾行

 次の休日。

 俺は裕太と貴司と一緒に翔太の尾行をしていた。

 にもかかわらず翔太は俺たちに対してサムズアップを向けてきた。


 尾行対象にバレているから尾行になっていない気がするが、これはれっきとした尾行である。


 というか、なぜ俺らが尾行しているのか。


 それを思い出すために屋上での会話の続きを思い出す。

                  ◇◇◇

「実はそろそろ想いを伝えたいと思うとるんやけどな、そこで問題があってな…」

 深刻そうな顔で翔太が話し始める。

 いつも元気いっぱいの翔太がここまで悩むことなのだから相当な困難にぶつかっているのだろう。

 それならば俺たちがその相談に真摯に乗ってあげなければ。

 さぁ翔太。その悩みに俺たちに言ってみろ――


「多分あっちは俺のこと好きとかいう感覚で見てないと思うんよなぁ。」


「あぁ」

「うわぁ」

 裕太と貴司が同時に声を上げる。


 ふたりとも「聞いちゃいけないこと聞いちゃった……」みたいな顔をしている。


「なんか、こう、最近LINUで会話しとるっきもそっけないしさ、目も合わしてくれへんし、目を合わしたら合わしたで急に怒鳴ってくるし……」

「……」

「……」


 もうふたりとも目を伏せて何も言わないでいる。


 その二人の姿を見て俺は残りの二人が俺と同じ気持ちなのだと気がついた。

『翔太のゴールインは近い』と。


 だから俺は三人を代表して翔太に声をかける。

「そんなことないよ!それは順調に行っている証だと思うぞ!頑張れよ!」

 これで裕太と貴司が翔太に同じように激励の言葉をかければ、きっとこのまま翔太は告白して付き合うはず……!

「えっ?」

「へっ?」

「はっ?」


 が、俺の予想に反して帰ってきたのは三人からの困惑の声だった。

「健太……。お前今の話聞いてた?」

「え、うん。聞いてたけど……?」

「じゃあなんで今の話を聞いて順調だって思うんだよ?」

「だって、そりゃあ…」


 そこまで言って俺は気づく。

 たしかに今の話を聞いただけなら、順調だと考えるのは難しいということを。


「まぁとにかく大丈夫だから!俺を信じてみてよ!」


 が、俺は知っている

 翔太の好きな人と仲がいい人――鈴音から、その人は好きな人に対してはツンデレになってしまうところがあると聞いていたのだ。


 もちろんそれを言うのは無粋なんpで、言ったりはしないが。


 すると翔太は俺をまだ不安げに見ながら言った。

「ほな、今度デートに誘ってみようと思っとるんや。せやからその時俺らのことを尾行してくれへん?」

「……へ?」


 こうして尾行対象の一人にバレている尾行が始まったのであった。

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 翔太の関西弁のところ一個一個調べながら書いてるんですけど、間違ってるところがあったら教えて下さい!

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