第97話 翔太の決意
「翔太、最近何かあった?」
「え、なんで?」
「最近いつもの元気がない気がするんだけど…?」
「いやいや、そんなことないで?」
昼。
もはやおなじみとなった俺、裕太、翔太、貴司の四人で昼ごはんを食べていたときに貴司がふと思い出したように言う。
ただ、思い当たる節がないのか翔太はご飯を食べる手を止めて首をう~んとかしげる。
裕太も思い当たる節がないのか、気のせいじゃね?とつぶやく。
が、しかし。
俺も思い当たることがあったので翔太にそのまま尋ねることにした。
「いや、貴司が言うように俺も最近元気がないような気がするぞ。野球部の練習で今まで馬鹿みたいに声を出していた翔太がここ最近大人しくなったって先輩たちも言ってたぞ?」
その瞬間、翔太の目が泳いだ。
「いやぁ、いつまでもガキみたいにするわけにはいかへんかなーと思っただけやで、うん。」
「嘘つき」
間髪入れずに貴司が突っ込んだ。
「な、なんでや!なんで俺が嘘を付くなんて言うんや!」
少し驚き、そして怒ったような口調で翔太はまくし立てた。
一方で貴司は、落ち着いた様子で淡々と自分の意見を口にしていく。
「いやいや、俺たち何年間の付き合うやと思ってんの?お前が嘘を付く時の癖ぐらいわかるって。」
「なんやて⁉」
まあ、どんな癖か教えると、お前が対策しちゃうから言わないけどさ、と呟いてから翔太に向き直る。
「俺らが相談乗ってやるから、悩んでること相談してみてよ。」
すると、観念したのか、翔太はため息を付いて、そして周囲をちらっと見回してから、
「ここじゃ言いにくいことなんや。せやさかい、ご飯終わったら屋上みんなで一緒にいかへんか?」
「わかった。」
そうして、急遽翔太の悩みの相談に乗る会が開催されることになったのだった。
◇◇◇
屋上に出る。
もうすぐ12月になるとだけあって少し肌寒く感じ、思わずブルっと身震いしてしまう。
そんなわけで、俺たちは自然と互いの距離が近くなってしまい、結果的にひそひそ話に丁度いい距離になった。
翔太が一つ息を吐いてこちらを向く。
「あの、さ。俺には今好きな人がいるねんなぁ‼」
そして意を決したように俺らに話し始めた。
「うん」
「うん、知ってるよ」
「それで?」
と貴司、俺、裕太の順番に返答する。
「……え、なんか思ったより反応が薄いんやけど?」
居を疲れたように目をパチパチさせながら俺たちに訪ねてくる。
「まあ、もともとわかってたし、なぁ?」
「うん。文化祭のときもお前いなかったじゃん?」
「俺らの中では割と常識だったよ?」
と貴司、俺、裕太の順番に返答する。
「な、なんやそれー!あれやで、俺この事お前らに伝えるんむっちゃ緊張しとったんやで⁉」
「無駄な緊張だったな」
「なんやねん…」
翔太はガックリと肩を落とす。
そんな翔太のもとに俺ら三人は更に距離を縮めた。
「それで、そのことに関する相談なんだろ?早く聞かせてくれよ。」
「あぁ、なんや、熱がすごいな。まあええわ。今俺の悩んどるんはなぁ…」
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翔太が誰のことを好きなのか知りたいなぁって思った人は文化祭のあたりを読んでくれるとわかると思います!
特に74話とか読んでくれるとわかりやすいと思います!
さてさて。
昨日まで開催されていた第1回カクヨム短歌・俳句コンテストの二十句連作部門にエントリーしてみました!
読んでくれたら嬉しいです!
https://kakuyomu.jp/works/16817330658854131265
ついでに近況ノートも更新してるんでそれも読んでくれたら嬉しいです!
https://kakuyomu.jp/users/unberagorou/news/16817330660111702113
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