第94話 金庫の中身②

「な、なにこれー!」


 お母さんに伝えられた暗証番号を入れて金庫を開けた鈴音は叫んだ。


 目の前には大量の0.01の文字。(たまに0.02もある。)


 これってまさかしなくても……

「わかったかしら?私達からのプレゼントのコンドーム」

「だよねぇ?一瞬私自分の目を疑ったけどこれってゴムだよねぇ⁉」


 電話が繋がったままだった良子に大きな声を出して問い詰める。

 少なくとも鈴音の常識の中では親が子供にコンドームを渡すという行為は非常識だと考えていた。

「ねぇっ!どういうつもりなの?」

「どういうつもりもなにも……将来いるだろうから私達からプレゼントしただけなんだけど?」

「ああ、そういうこと……じゃなくて!普通におかしいよね⁉」

 良子を追求しようとする。

 が、

「すずー?どうかしたの〜?」

「ッ!」

 下の階にいた健太が不審に思ったのか階段を登ってくる。

 鈴音はとっさに電話を切り、金庫の扉を締めた。


 健太がひょこっと鈴音の部屋に顔を出して鈴音に尋ねる。

「どうかしたの?なんか『ゴム』みたいなことを叫んでいたのが聞こえたんだけど?」

「ああそれは……」

 鈴音は頭をフル回転させた。


 健太の前でコンドームを見て興奮したとは口が裂けても言えない。

「輪ゴムが……飛んでいっちゃっただけだよ〜」

 私、馬鹿なの⁉

 心のなかで自分の発言を思いっきりなじる。

 もっとそれっぽい言い訳ができないかなぁ⁉

 こんなんじゃ健太くんが信じるわけ……

「………あ、そうなんだ?」

 信じてくれたぁ!

 健太くんは私のことをそんなに信用してくれているのだろうか。

 そう思うと嘘をついた自分に心が痛む。

「そうそう、だからなんでもなよ?心配してくれてありがとうね!」

「ううん。とんでもないよ。ごめんね一人の時間邪魔して。」

 そうやって健太は鈴音の部屋から出ていく。

 そんな健太の背中に嘘をついてごめんなさい、と思う鈴音だった。

                  ◇◇◇

 その日の夜。

 鈴音は再び金庫の扉の前に立っていた。

 顔はスマホから飛び出してくる光によって照らされている。

「うわぁ、これ一つ1000円近くするのかぁ」

 自分のスマホに表示された画面を見て鈴音は呟く。


 目の前には20個近い0.01とその半分くらいの0.02が同じようにスマホからの光を浴びて怪しく輝いていた。


 そして―――鈴音は自分に言い訳するように呟く。

「まぁ、捨てるのはもったいないしね。別に私が使いたいわけじゃないけど?万が一ってこともあるかもしれないから?捨てるのは勘弁しておいてあげようかな?」

 そう言って鈴音は金庫の扉を締めた。


 ――来るかもしれないこの扉を開ける日のことを想像して顔を赤くしながら。

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 星やハート、フォローもよろしくお願いいたします!


 以下私事。

 近況ノートにも書いてるんですけど今日から修学旅行なんですよね。(北海道)

 だから更新は泊まります。よろしくおねがいします!

 では!

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