第93話 金庫の中身①

「でね、そのあと健太くんとランチに行って食べ放題食べたんだけど、そこの店のマルゲリータが美味しくてさ!私お腹が空いてたからすごい勢いで食べちゃったんだけど、それ見て健太くんがなんとも言えない表情してたんだよね〜ちょっと恥ずかしかったなぁ」


 夕方。


 鈴音は自室にこもって母親の良子と電話をしていた。

 健太と同棲をし始めて一週間が立つが、母親とも話をしないと落ち着かないということで、毎日一回は電話をして、その日にあったことをネタに30分ほど会話に花を咲かせていた。

「あらあら!仲がいいようで結構なことじゃないの?」

「うん!今の所、喧嘩の一つもなく仲良くやってるよ!お父さんとお母さんも喧嘩してない?」

「私達は相変わらずよ!今日も昼間からホテルに入ってね、それから」

「うんわかった。それ以上は聞きたくないかな。」

 鈴音は良子がすべてを言い切る前に言葉を遮った。

 良子と鈴音はとても仲がよく、休日に友達のようにお出かけすることだってある。

 だが、だからといって、親の性交渉の話を聞くのは鈴音には抵抗があった。


 しかし、そんな鈴音を弄ぶように良子はクスクスと笑う。

「あら?私達は今カンボジアに引っ越して日が浅いから、まだ家ができてないのよ?昼間からホテルに入るのは当然じゃないの?」

「あ」

「あらあら?鈴音は私達がナニをしているんだと思ったのかしら〜?」

「〜〜ッ」

「鈴音もむっつりスケベね」

「す、スケベじゃないもん!別に変な勘違いとかしてないし!」

 良子にうまく遊ばれてしまい、鈴音はあたふたとする。


「まあ、やることはやったんだけどね。」

「もう私騙されないから。どうせ、お酒飲んだとかそういうことでしょ?二回も同じ手にかかると思わないでよ!」

 同じようにからかってくるとおもった鈴音は怒りを込めた声で言い放った。

 しかし、良子は不思議そうに「え?」と声を上げると、さらっと言った。

「いや、普通にやることって、セック」

「それ以上言うなーーー!」


 鈴音は涙目になりながらも良子の言葉を遮った。

 顔を真っ赤にしている。

「もう!それ以上言うなら電話切るよ!」

 怒ったように鈴音が言うと、良子は笑いながら鈴音を宥める。

「まぁまぁ、今日は鈴音に一個伝え忘れた事があったから伝えておこうと思ったのよ。」

「伝え忘れたこと?」

 その言葉を聞いて鈴音は溜飲を下げる。


「そうそう。鈴音の部屋にロックが掛かった金庫みたいなのがあったと思うんだけど、わかる?」

「あー、わかるよ。3桁の暗証番号がかかっているやつだよね?」

「そうそう。アレの暗証番号を伝えないと思ってたんだけど、伝えるのを忘れてたのよ。あの中にはが入っているから早めに伝えようと思って。」

「そういうことね。」

 自室で電話していた鈴音はすぐにその金庫の前に立った。

 どこか重厚感のある金庫を前にして、僅かな緊張を孕んだ声で良子に問いかける。

「じゃあ、暗証番号教えてくれない?」

「わかったわ。暗証番号は129。これで開くと思うわ」

「129と……じゃ開けるわね。」

 カチッと小気味良い音がなったのを確認して金庫の扉を開けた。

 すると中には

 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.02 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.02 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01…

「な、なにこれー!」

 鈴音の悲鳴が家中に響き渡った。

__________________________________________________________________

 129=避妊具

 星やハート、フォローもよろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る