第92話 ピザ鈴音

 結局『幽霊ウォッチ』のカセットだけを買って店を出る。

 買ったのはこれだけだったが、すずの幼少期の様子を少し垣間見ることができてとても有意義な時間になったと思う。


 それはすずも同じなのか、カセットの入った袋を持って鼻歌交じりに歩いていた。


 が、

 その時は突如としてやってきた。

 ――キュルルル

「?」


 すずの鼻歌に混じって変な音が聞こえてくる。

 なんの音だろうと思いとなりで歩いていたすずを見ると、徐々に顔を赤くしていた。

 そのままこちらをロボットのように振り返って……

「今、聞こえた?」

 と恥ずかしそうに聞いてきた。

「えっ」

「聞こえた?」

「うん。『キュルルル』って音なら聞こえたけど」

「〜〜ッ」


 有無を言わせない用な口調で尋ねてくるすずに変な音なら聞こえたと言うとすずは顔を更に赤く染め上げた。

 まるでトマトのようである。

 しかし、一方の俺はなんの音かわかっていないから、状況が把握できず困って、すずを眺める。


 お腹を擦りながら、顔を赤くするすず――

 そんな様子を見てようやく合点がいった俺は納得するように独りごちた。

「あーなるほど。お腹がなったってこと」

「わざわざ言葉にしなくていいじゃないの!バカッ!」

 ペチペチと俺を叩いてくるすずのかおは更に赤く染まっている。

 まるでタバスコのようだ。


「……ご飯、行こっか。」

「…………………」

 結局、その後、すずが落ち着いてご飯に行くまでにはかなりの時間を要したのだった。

                  ◇◇◇

 やってきたのはイタリアンの食べ放題がある店だった。

 食べ放題と聞いて、「健太くん……からかってるの?」と聞いてきたすずだったが、その口角は上がっており、ワクワクしているのが隠しきれない様子だった。

 まぁ、それもしょうがない。

 今日一日中慣れない都会のど真ん中で、ずっと歩き回って家電を見ていたのだ。

 お腹が空くのは当たり前のことであった。

 それに、すずと同様に俺もお腹が空いている。

 俺もここに来てワクワクが抑えられないのであった。

 いっぱい食べるぞ、と胸を躍らせながら席についたのだった。

                  ◇◇◇

「お待たせいたしました。国産のトマトをふんだんに使っマルゲリータになります!お好みでそちらのタバスコソースをお使いください。」

 店員さんがまず持ってきたのはマルゲリータだった。

 ホカホカと湯気が出ていて、とても美味しそう。

 美味しそうなのだが、


 ――トマト、タバスコ


 その言葉によってふと先程のすずの様子を思い出した俺は、思わずくすっと笑いを漏らしてしまう。

「健太くん、どうしたの?」

「ううん、なんでもない。」

 そう答える俺を見て不思議そうな顔をしながらも、すずは自分の皿にマルゲリータを取り分けて自分の口に持っていくのであった。

 ――タバスコはつけずに、だが。

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 個人的な話ですが、今日17歳の誕生日を迎えました!

 一年前のこの日に投稿したのは38話だったので1年で50話くらい書いた事になるんですね。

 多いような少ないようなって感じです。

 来年は高3だから受験勉強に追われて執筆の時間も取りにくくなると思います。(片手間に勉強できるほど自分の実力に余裕がないので……)

 だから、それまで精一杯がんばります!

 応援よろしくおねがいします!

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