第91話 赤ちゃん用の玩具
「あ!これも懐かしい!」
かごに『幽霊ウォッチ』のゲームのカセットを入れたまましばらく店内を見て回っていると、すずが先程と同じように声を上げる。
今度はなんだろうと思い近づいてみると、そこには……
「あぁ、見たことあるな。えーっと…」
「リサちゃんだよ。昔、わたしも家で一人でいるときはよく遊んでたなぁ」
「へぇー。どんなふうに遊んでいたの?」
あいにく俺は男子だから、親は俺に対して戦隊モノの人形とかを買ってくれていてこの類の人形とは縁がなく、愛着は全然湧いてこないのだが、昔すずがよく遊んでいたと聞くだけで興味が湧いてきた。
「えーっとね、ミルクを与えたり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり……とかかな!」
「おー」
遊んでいると言うよりは、お母さんの真似事をしているだじけじゃないか?
そう思ったが、口にすることはない。
まあ、そんなものなのかもしれない。
いずれにせよ、幼少期にリサちゃんと遊んでいたことによって今のすずの人格が形成されたのだと思うと、感慨深いものがあった。
「あ、でも」
そう言って、思い出したようにすずが苦笑いを浮かべる。
どうしたのだろうか。
すずは少しの間もじもじしているが、観念したように白状した。
「リサちゃんの髪の毛を整えてあげようとして髪の毛を全部切っちゃってお母さんに怒られたこともあったなぁ」
「全部⁉」
「うん…」
自分の人形の髪の毛を笑いながら全部切ってつるっぱげにしている幼少期のすずのことを想像する。
――うん。サイコパス以外の何物でもない。
「うわぁ、サイコパスだー」
「違うからね⁉昔の私がそうだったってだけで、今の私は違うからね⁉」
「はいはい、わかったわかった。」
「絶対わかってないよねぇ⁉ちょっと!」
拗ねてますよ、と言わんばかりにフグのようにフグのようにほっぺたをふくらませるすず。
が、もちろん本気で拗ねているわけではないので、すぐにそのほっぺたを引っ込めるとクスクスと笑い始めた。
俺もそれに釣られて笑う。
すずと過ごすこんな穏やかな時間が同棲を始めてから増えていて、俺はその時間がとてつもなく好きなのだ。
そんな中、ふとすずが一人で呟くように言った
「私達の子供ってどんな子だと思う?」
「え、そうだなぁ。うーん」
俺とすずの間に子供が生まれたときのことを考える。
いやぁ、すずの子供なんだから、男の子でも女の子でもかわいいんだろうなぁ。子供はやく欲しい……ん?子供
「〜〜ッ」
そこまで考えて俺は思い当たった。子供を作るにはあの行為をしないといけないことを。
そして、それはすずも同じだったようで
「これは、まだ早いよね……」
「そ、そうだな……」
二人して顔を真っ赤にするのであった。
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ふたりともかわいい。
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