第90話 ウィンドウショッピング?
「さて、どうしようか?」
「そうだね……」
いま、俺とすずは悩んでいる。
「なんにも考えずに来ちゃったからね。」
「うん。新生活だし家電を揃えよう!っていうノリで来ただけだもんね。」
「そうそう。だって私達の新居って必要最低限の家電は揃っているもんね。」
素直に白状すると、深く考えていなかったのだ。
すでに海外に飛び立っていったすずの両親から家で使っていたテレビや冷蔵庫、洗濯機といった大型家電を譲ってもらっているし(というか、今日朝ごはんを作る時バリバリ冷蔵庫使ったし)、エアコンやIHクッキングヒーターなんていうものは家に来たときからついていた。
だからぶっちゃけ、今特に欲しいものがなかったりする。
が。
もう来てしまったものは仕方ない。
俺は切り替えてすずに話しかける。
「まあ、ウィンドウショッピングみたいな感じでどんな物があるかだけ見て回ろっか。」
「そうね、せっかくだしね」
すずも同じことを考えていたのか、ふんわりと笑いながらこちらの提案に同意してくれた。
そんなすずに俺も笑い返すと、目の前の人混みの中に俺たちは飛び込んでいくのであった。
もちろんお互いの手を取り合って。
◇◇◇
「これだけ大きいからなんとなく予想はできたのかもしれないけどさ……思ったより色々なものがおいてあるんだね」
すずは目の周りに広がる家具のジャングルを見ながらしみじみとつぶやく。
一口に家電と言っても様々な種類、バージョン、色があり、すべてを丁寧に見て回っていると、一日じゃとても足りないような量がおいてある。
とは言っても、俺たちがしているのはあくまでもウィンドウショッピング。
本当に買うつもりはないので、こんなのもあるんだね〜という程度で流しながら見ていく。
しかし、今まで一切足が止まらなかったすずの足があるコーナーでピタッと止まった。
「あっ!」
「ん?どうかした?」
「健太くんこれ知ってる?私が小さい頃初めて持ったゲームなんだけど!」
そう言ってニコニコしながら手に取ったゲームを俺に見せてくる。
そこにあったのは10年近く前に一世を風靡したゲーム『幽霊ウォッチ』というゲームの最新版だった。
特に小学生に人気があったゲームで、当時小学生だった俺もご多分に漏れずハマっていたゲームだ。
「あ〜。これね!懐かしいなぁ」
「ね!友達と対戦して勝ったときとかレアな幽霊が仲間になったときとかはその日一日中テンションが高くなっちゃったことを覚えてるなぁ」
すずが昔を思い出すように遠いところを眺めながら呟く。
そんなすずを見て俺は話しかける。
「じゃあこれ買おうよ!」
「え?なんで?」
すずは俺にそんなことを言われると思っていなかったのかキョトンとしている。
なんで、か。
すずが昔のことを思い出している顔をしているのを見て自然に思ったことだけど、強いて理由を言うなら……
「昔俺もやってたし、二人で楽しめるからかな」
そういうと、すずは少し嬉しそうに目を細めながら
「二人で、か。うん、そうだね。これ買おっか!」
「うん」
こうして、俺たちは『幽霊ウォッチ』の最新版を買い物かごに入れたのだった。
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ウィンドウショッピングとは。
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