第87話 お出かけ
「お待たせ〜!」
「全然待ってないよ。もう行けるの?」
「うん!ばっちり!」
「じゃあ行こっか」
俺とすずは二人でほほえみ合いながら玄関を出る。
今日のすずは休日ということもあって、ナチュラルメイクを施している。
すっぴんでもすずは美人なのだが、化粧をすることによって更に目鼻立ちが目立ち、唇の色が鮮やかになっている。
そんな姿に俺は少なからずドキドキさせられてしまっているのであった。
そんな様子を見てすずが少し意地悪に俺に笑いかけてくる。
「どうよ?今日の私を見てなにか言いたいことがあるんじゃないの?」
そんなすずに観念しながらも、俺は仕方なく心のなかにだけとどめておこうと思っていた思いを告白する。
「すっぴんでも可愛いけど、今日はまた一段と可愛いです」
「ふぇっ⁉」
しかし、俺が正直に告白すると、すずは驚いたように声を出す。
なぜ変な声を出したのかわからず首を傾げながらも、俺はそのまま思っていることを鈴音に伝える。
「いつもより目鼻立ちがくっきりとしてるのがまず可愛いでしょ。それから唇がいっつもより血色が良くなっててそこもいいと思う。それだけで正直むちゃくちゃドキドキしてるんだよね。あとね……」
「ちょっと待って⁉ストップ!ストーップ!」
「んぐ⁉」
しかし突如としてすずは慌てながら俺の口を抑えてくる。
突然のことに俺はびっくりしながらもその手を優しくのけて、すずに向き合う。
「どうしたの?」
「な、な、な」
「すず?」
「なんで急に私のことを褒めだすのよ!」
「え?」
ふとすずの顔を見ると完熟したトマトのように顔が真っ赤になっている。
何をそんなに恥ずかしがっているのだろうか?
「だってさっき、言いたいことがあるなら言えって言ったから…」
「そういうことじゃない!私が言ってほしかったのは他のところなの!」
「他のところ…?」
そう言われてすずの姿を軽く見回す。
今日のコーディネーションはデニムジャケットにベージュ色のロングスカートを組み合わせていて、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
でも、この服装、どこかで見た気が…
「あ」
「わかった?」
「たぶん…その服装って俺と初めてお出かけしてたときに来ていた服装だよね?」
「そう!そういうことなの!」
この服装フルシーズン着られるし私の一番のお気に入りなんだよね!と嬉しそうに教えてくれるすず。
そんなすずを改めて褒めることにした。
「よく似合っていると思うよ。可愛いと思う。」
「えへへ、ありがとっ!」
今回は取り乱すことなく素直に嬉しそうな顔をしてお礼を言ってくれるすず。
しかし、俺はそんなすずの様子を見て小さな疑問を抱いた。
「ねぇ、さっき最初に褒めた時、なんでびっくりしてたんの?」
「それは思ってないベクトルから褒められたらびっくりするじゃんか⁉」
「あぁ、そういうことか。嫌ではなかった?」
女性に化粧を褒めるというのは俺が知らないだけで本当はとても失礼なことなんじゃないかと密かに恐れていた。
だが、すずは首が飛んでいきそうなくらいブンブンと首を振ると、
「そんなことないから!むしろ嬉しいし。ただ、単純に…」
「単純に?」
「単純に心の準備ができてなっかっただけだから。気にしないで…」
そう言って顔をまた赤らめるすず。
一方で俺もすべての疑問が解決してスッキリするとともに、すずの可愛さを再確認させられたのであった。
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お久しぶりです。
なんの予告もせずに1ヶ月も休んでてまじで申し訳ないです。
WBCに熱中していたり、部活が忙しかったり……すいません言い訳ですねw
ぼちぼち上げていきます!
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