SS バレンタイン大作戦③

 板チョコ

 純ココア

 顆粒状インスタントコーヒー

 バニラエッセンス

 ホイップクリーム


 買ってきたものを台所に並べた鈴音が、改めて驚いたようにつぶやく。

「”アレ”ってこんな少ない材料からできるんだね…」

「ね、私も意外と少なくてびっくりしてる。」

「本場のものはもっと使うのかもしれないけど、これだけで、本場の味が再現できるならいいよねー」

「うん!じゃあ、作ろ?夏奈ちゃん!」

「わかったわ。じゃあ、私がこのサイトに書いてあるとおりに言っていくから、言われたことをしていってね?」

「わかった!じゃあ、最初は何?」

「えーっとね…まず、ミキサーってある?」

「うん!ここにあるよ〜!」

「じゃあね、それに氷水150gと牛乳50g、板チョコ15gに顆粒状インスタントコーヒー小さじ半分。後、バニラエッセンスを少々入れてくれる?」

「うぅ…多いよ〜!ちょっとまってね?」


 すずは、そう言いながらも、ちょこちょこと、計量カップに材料を入れたり、それを計量したり、重さを測ったものをミキサーに入れたり…と、台所の中を奔走し始める。


 一生懸命やっているのはわかるのだが、どこかその動きの中には小動物感があり、微笑ましい光景になっていた。


 もちろん、夏奈は女子だし、男子の気持ちはわからないが、こういうところが、男子の恋心をくすぐるのかな、とふと思う。


 まあ、かと言って自分には小動物のように動くのは無理な話だと思いなおしていると、鈴音が夏奈の方を見ながら、笑顔で、

「終わったよ!」

 と言う。


 そんな鈴音に、夏奈も笑顔で返す

「早かったね!いつもそんなに動き俊敏じゃないのに、びっくりしちゃった!」

「えへへ、健太くんに上げるんだと考えながら作ったら、一瞬でできちゃったんだ!」

「おー!恋する乙女後からってことですな?」

「もうっ!うるさい!で、次はどうしたらいいの?」


「えーっとね、レシピには『全体的になめらかになるまで撹拌する』って、書いてあるから……まぁ、一分くらいミキサーのスイッチ押しといたらいいんじゃない?」

「わかった。じゃあ、スイッチが……ここか!スイッチオン!」



 ――ブォォォォン

 ――ブォォォォン

 ――ブォォォォン

 ――ブォォォォン

 ――ウォォォォォォォン………



「こんな感じかな?」

「うん、いい感じじゃないかな?じゃあ、これをコップに移して氷水につけとこうか。」

「オッケー、これで終わり?」

「うん!」

「よかったー!どうにか間に合ったねぇ!夏奈ちゃんありがとう!」

「いいってことよ〜!じゃあ、私帰るから!また明日!」

「うん!ばいばい!」




 協力したおかげで思ったより早く作り終えた二人は、上機嫌で別れる。


「じゃあ、ごはん作ろっかな?」

 余談だが、今日は父親の孝則と、母親の良子は結婚20周年の記念で、夫婦水入らずで旅行に行っていた。


 以前不審者に襲われてから、家のセキュリティーが強化されたとはいえ、家に一人というシチュエーションには不安が残るのも事実だった。


 しっかりと、家中のドアや窓の鍵を締めた後、足早にキッチンに歩いていく。


「うぅ…怖いし早く夜ご飯作って食べて、お風呂入ってから寝よう……」



 だがキッチンに付いた時、鈴音は息を呑んだ。

「あれ、さっき作ったこの飲み物ってこんなに美味しそうだったっけ…?」


 先程、夏奈と一緒に作ったチョコレートドリンクがいい具合に冷えてとても美味しそうになっていたのだ。


 ゴクリと、喉を鳴らす鈴音。


「ちょっとくらい、味見してもいいよね…?」

 そう自分に言い聞かせながら、その中から一口分だけ飲む。


 鈴音は目を見開いた。


 ――これ、おいしい…!


「もう一口だけ…」「もう一口だけ…」「後一口…」


 夢中になって、鈴音は一口ずつストローを使って飲んでいく。



 しかし、その夢のような時間は突如として終わりを告げる。


「後一口…」

 ――ズズズッ


「っ!」


 弾かれたように、チョコレートドリンクを入れていた容器から離れる。


 底には先程作ったドリンクの90%がなくなってしまっていた。

「あ」

 鈴音は崩れ落ちた。


 ――その後、鈴音が夏奈に泣きついたのは言うまでもない。

 __________________________________________________________________


 ということで作っていたのは、ス◯バのダークモカフラ◯チーノでした!

 もはや、ラブコメじゃなくてフラ◯チーノの作り方動画になってるw


 本編でもいずれバレンタインはやってくると思うんですけど、そのときは全く違う感じになると思います!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る