第82話 香川家にて①
――やっぱ無理!朝っぱらからちょっと寝ぼけててかわいいすず見せられるとか俺の身が持たない!
俺は、心のなかで絶叫する。
何故こうなったのかを説明するには一ヶ月前にさかのぼらないといけない。
◇◇◇
「改めて来るとすごい家だなぁ」
すずと付き合う事になって2日くらい過ぎた頃。
俺の恋に協力すると言ってくれていた孝則さんに挨拶に行くことになっていた。
以前から知り合っていた孝則さんと、娘の彼氏という立場で会うのはむず痒いと同時にこういう関係になるまで時間が要したので、感慨深い物があった。
そしていま、俺は香川家の目の前に来ている。
前回来たときは窓が割れているのを見て焦って中に入ったので、大きな家だったということしか覚えていなかったが、改めて見てみると圧倒されてしまう。
もちろん、よくテレビで見るアメリカのセレブの豪邸!みたいな家ほど大きくはない。
でも、その敷地を使ったら、普通のマンション一棟くらいは立つのではないかというくらい広いのだ。
呆然としている俺をみてすずがクスクスと笑う。
「もう!健太くんったら!初めてきたわけでもないでしょう?」
「お、おう」
「じゃあ大丈夫ですよ!行きますよ。」
そう言い残して、すずは踵を返してスタスタと家の敷地の戻っていく。
おいていかれるわけには行かない俺は「お邪魔します…」と口にしながら、すずの家の敷地に足を踏み入れたのだった。
中に入って奥に進むと、孝則さんと上品そうな女性がリビングのテーブル座っていた。
「おお健太くん!よく来てくれたね!こちらは僕の妻で、鈴音の母の良子だ。」
「
「あ、はい…こちらこそすず…鈴音さんにお世話になっています。」
すずのお母様の良子さんはとても若く見える。
すずがいるんだから少なくとも40歳手前だと思うのだが、20歳と言われても疑わないレベルだ。
こういう
とにかく、『この母あって、この娘あり』って思ってしまうような方だった。
思わず見とれていると、後ろから視線を感じたのでぱっと振り返った。
するとそこには冷たい視線を浴びせてくるすず………ではなく、寂しそうにこちらを見つめてくるすずがいた。
尻尾がついていたらすごくしおれているんだろうな、と自然に考えてしまうようなすずの顔を見て少し後悔する。
俺の彼女はすずなのだ。
お母様がいくら美人だったからって、見つめるのは良子さんにも、すずにも失礼というものだろう。
そう思い直して、前を向く。
そして今日来た本題を切り出そうと思ってふと、さっきの良子さんの発言を思い出す。
「娘と仲良くしてくれてありがとうね!」
……これって俺のこと、すずのただの友達だと思っているよねぇ⁉
俺がすずの彼氏だって思ってもいないような言い方だったよねぇ⁉
ここで「実は娘さんと付き合うことになりました」なんて言ったときには取り乱してしまうかもしれない。
「どうしよ……」
どうやら俺は家に来て早速詰んでしまったようだ。
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