第76話 びびりな鈴音とラッキースケベ

「きゃあああああァァァァァ!?」

「すず落ち着いて、、、これおばけでもなんでもないから、、、」


 お化け屋敷に入って数秒だと言うのに、俺はもうすでに頭痛を感じ始めていた。


 といっても、お化け屋敷が怖すぎたからではない。

 自分で言うのも変だけど、幽霊やおばけみたいなオカルト系に対しては強いうえに、驚かされてもあまりビビらない俺は、お化け屋敷に向いていない。


 今まで、いろんな遊園地のお化け屋敷に入ったが、怖いと思ったことは一度もないのだ。

 今日もこの文化祭のお化け屋敷に入ったのも、すずが変の反応をするからで、もともとは興味のかけらもなかった。



 じゃあなんで頭が痛くなるかと言うと、すずが想像以上のビビリだったからだ。



 まだ入ってすぐのところで、おばけも出ていないのに、骸骨のイラストを見ただけで大きな声で叫んでいる。


 ―――これお化け屋敷から出るまでに何分掛かるんだ?


 いちいちイラストに反応していたら、何年間経っても出られない。


 大丈夫だろうか?、と本気で心配し始めた時、事態は急に動いた。

「もういやぁぁぁ‼早く出たい!」

 すずが半泣きになりながら、走り出したのだ。


 よく見ると何も見ないように目をつぶりながら走っていて、ところどころ壁に激突しながらも、めげずにゴールまで向かっていく。


 俺はそれを見てどうにかなりそうだな、と思いながらすずのあとを小走りで追いかけた。



 しかしゴールが遠くに見えた時、事件は起こった。

「ううぅぅぅぅぅ」


 この終盤でおばけ(人)が初めて出てきたのだ。


 お化け屋敷であまり驚かない俺でもこのお化け屋敷は人が出てこないタイプなのかな?と思っていたので少しビクッとしてしまった。


 そんな不意打ちにすずが耐えられるわけもなく、、、

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」


 悲鳴を上げて後ろに倒れ込んできた。そしておばけが出た驚きでフリーズしていた俺が支えられるわけもなく

 ――ドスッ

 俺もしりもちをついてしまった。

「いてててて、、、ん?」


 ふと自分の手が何かを掴んでいることに気がつく。このふにふにとした柔らかい感触…なんだ?


「健太くん⁉は、恥ずかしいから、、、手を離してぇ」


 すずの声で状況を理解した。


 俺は顔に血が登るのを自覚しながらも急いで手を離す。


 お化け役の人が「こんなところでイチャイチャラブコメすんなリア充爆発しろ」みたいな視線で見てくるので、とりあえず腰が抜けているすずの手を取って出口まで輸送した。



 お化け屋敷から出て手を放すと、すずはヘニャヘニャと座り込む。

 顔を真っ赤にしている。

 両者の間に気まずい沈黙が流れる。


 しかし俺はこの時初めてお化け屋敷に「また来たい」と思ったのだった。

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 連続投稿5日目‼(ってことにしてくれ)


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