第72話 交渉
「すずー!」
「ん?どうしたの夏奈ちゃん?」
「あのね!ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
夏奈ちゃんが私のところに駆け寄ってきます。
ちょうど作業に疲れて休憩しようかなと思っていた私は話を聞いてみることにしました。
「うん。何?」
するとななちゃんにとって聞かれたくない話なのか、顔を私の耳に近づけます。
「あのね、」
「フャッ⁉」
「ど、どうしたの?」
「ううん、くすぐったかっただけだよ」
ただちょっと場所を変えよ?と言いながら、私は立ち上がった。
今気づいたことですが、私は耳が弱いらしいです。
今、夏奈ちゃんが耳元でそっと囁いたときに、力が抜けそうになってしまいました。
これ以上耳元でなにか言われたら耐えられないかもしれない、、、そう思って場所を変えることを提案したのです。
よいしょ、と立ち上がりながら、私の頭にふとあることが思い浮かびます。
(もし健太くんに耳元で囁かれたら私どうなっちゃうんだろう?多分一発で体に力が入らなくなって……って、私はなにを考えてるの⁉)
あらぬ想像をして顔を赤くしながら歩いていく私を、夏奈ちゃんがニヤニヤしながら見てきます。
まさか、私が今何を考えていたかはバレてない、よね?
◇◇◇
「で、お願いって何?」
その後、階段の踊り場に行って、ニヤニヤしている夏奈ちゃんを無視して一方的に言葉をかけました。
こういうときは、だいたい先手必勝なんです。
すると、夏奈ちゃんも元の要件を思い出したのか、幾分真面目な顔に戻って―――それでもまだニヤニヤしていましたが、―――話し始めました。
「ああ、それなんだけどね…交渉したいことがあるんだ」
「交渉?」
「うん。手短に言うと、文化祭のクラスパートの担当の日を交換してほしいの。」
「つまり私が一日目担当になって、夏奈ちゃんが二日目担当になるってこと?」
「そうそう。どう?互いにとって悪くない話だと思うんだけど?」
私にとっては願ってもみない話でした。
もともと私はキャンプファイヤーが見たくて一日目を希望していたし、何よりも健太くんも一日目担当だったのです。
だから私は二つ返事で承諾したかったのですが、、、
一応気になったことがあったので尋ねてみました。
「互いにとって悪くない話って、夏奈ちゃんにはどんな悪くないことがあるの?」
「それは………が今気になってるんだよね」
「あー。………くんはクラスパートの担当が二日目だったもんね。」
「そうなの。だからお願い。」
目の前の夏奈ちゃんははさっきまでのニヤついた顔ではなく、一人の恋する乙女の顔をしていたのだった―――
だから、
「うん、わかった。頑張ってね!」
「私のこと気にする前に自分のこと気にしなよ!」
………おっしゃるとおりです。
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第72話読んでいただいてありがとうございました。
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