第65話 朝練にて

 ―――ブンッ

 ―――ブンッ

 ―――ブンッ

「おーい健太ー」

 ―――ブンッ

 ―――ブンッ

 ―――ブンッ

「おい!」

「ああ、ごめん。おはよう。」


 昨日のことを思い出してバットを振っていたら裕太の挨拶に気が付かなかった。


 しかし裕太は気にしていないように首を一回横にふると言葉を続ける。

「おはよう、昨日はマジでありがとうな」

「いやいや俺だけの力じゃないから!打球がたまたま落ちただけだし」

「それでも、あの場面でヒットを打ったのは紛れもないお前なんだ。感謝してるよ」

「、、、わかった。ありがとう」


 素直に受け取るようにした。

 裕太の真剣な顔を見ているとそうしたほうがいい気がしたのだ。


 そんな俺を見て裕太は満足したようにうなずくと、に入ってきた。


「で、いつ香川さんに告るんだ?」

「ああ」

 さっきまでとは打って変わってニヤニヤした顔で聞いてくる裕太。

 内心苦笑いしつつ答える。

「間があくと尻込みしたりしちゃうかもしれないから、来週にある文化祭で告白することにするよ」

「文化祭ねぇー。なんか青春って感じがあるな」

「たしかにねー」

「まあ言うまでもないかもしれんけど、、、告白成功したらいいな。」

「ありがとう。なにかできることがあるかわからないけど頑張るよ!」

「その心意気だ」


 偉そうにフンスと鼻息を鳴らしながら答える裕太。一体何者のつもりなのだろうか。

「お前も雰囲気の割には恋愛初心者なのにね」

「ちょっ、お前!クラスのみんなには絶対に言わないでくれよーーー!」

「はいはい、わかったわかった」


 裕太は小学校まではものすごく地味な見た目の少年だった。しかし本人はそれをものすごくコンプレックスに思っていたらしく、中学校に入って見た目を陽キャ風にしたのだ。


 しかし、いままであまり目立たなかった裕太がいきなり陽キャとして中学デビューするのはハードルが高かったらしく、ただの陽キャ風の陰キャができあがってしまったのだ。


 それでも腐らず中学校の真の陽キャの行動や仕草をずっと観察して、今、無事高校デビューした裕太があるのだが、小学校時代や中学校時代の裕太の様子は一部の生徒の間の中での秘密となっていた。


 だから彼の恋愛経験は豊富そうに見えて、皆無なのである。


「まあ、見とけ。俺もそのうち香川さんよりももっと美人な彼女を作ってみせるから」

「はいはい。がんばれー」

「お前思ってないだろ!」


 こうやって二人で話しながらする素振りはとても趣のあるものだった。

 ________________________________________________________________________________________

 裕太の生い立ちが明らかになりましたね



 更新一週間サボってしまいました。

 お詫びに次回の投稿日を発表しておきます。


 次回は金曜日の19:00に投稿予定です!


 あと星2つで200いくのでまだの方はぜひお願いします。

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