第53話 嬉しい変化

「すずおはよう!」

「すずの弁当美味しそうだね!」

「またね!」

 こんな感じで明るくすずに声をかけ続けて一週間。

 いつも気のない返事を返されていて、そのたびに俺のメンタルは削られていった。


 すずに非がないことはわかっているし、すずを攻めるつもりはない。

 それにこのように行動すると決めたのは、自分なのだし。

 それでも進展の気配が見えない現状に対して無性に腹が立ち、それをすずのせいだと考えそうになって、更に自分の情けなさに腹を立てる、、、という負のスパイラルに陥っていた。



 それでも気持ちを切り替えて、今日も挨拶する。

「すずおはよ!」


 いつものように無愛想にされるだけなのではないか――その不安が胸をかすめる。

 やはり覚悟していてもそれをとてつもなく怖いものだと感じてしまっていた。


 ―――好きな人に無愛想にされるほど堪えるものはない


 以前の俺ならばそのようなことを考えもしなかっただろう。


 でも一度経験してしまってからは、そのようにならないようにと必死に願うようになった。


 この経験が、将来笑い話になるかならないかはこれからで決まってくるよな、なんて考えているとすずが声を出した。


 俺の期待とは違った答えが。


「お、お、おはよう健太くん!」

 そうして俺に笑みを向けてくる。


 笑みと行っても、あの事件が起こる前に比べると遥かにぎこちない笑み。


 それでも僕の方を向いて笑ってくれるということがにわかには信じられなくて俺はフリーズしてしまう。


 そのあとすずは俺に向かって必死に言葉を繋げていく。

「あの、ね。今まで心配かけてごめんね。多分まだまだ立ち直れてはいないと思うけど、あの事が起こる前の状態に戻れるように頑張るから!それじゃ」


 少しすずが顔を赤らめて、俺に背を向ける。

 そこでようやくフリーズしていた状態から抜け出した俺は周りをキョロキョロ見てみる。


 すると森山さんが俺に向かってサムズアップしているのがわかった。


 ―――森山さんには適わないや。

 俺は思わず、そう思ってしまった。


                  ◇◇◇

 久しぶりに健太くんとちゃんと言葉をかわすことができた気がする。

 前日に少し練習した笑顔は少しぎこちなくなってしまった自覚はある。

 もとに戻すのはかなり大変なことなのかもしれない。


 でも、


 好きな人と言葉をかわすことがこんなにもかけがえのないものだとは思わなかった。

 ―――このことがいつかいい経験と振り返ることができるように頑張らないと。―――

 そして私は、そう決意したのであった。                   ________________________________________________________________________________________

 少し関係に改善が見られた二人。


 一度疎遠になってしまったことでふたりとも得られるものがあったのかもしれません。


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 あと時間がある方は、僕のカクヨム甲子園に出している小説を読んでくれると嬉しいです!

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