第51話 きっと、努力は報われる

 その後、夏休みは特にこれと言ったこともなく過ぎていった。

 先生が働き方改革のおかげ、、、じゃなくてせいで野球部の練習の時間を取りにくい中、時間が取れるときは先生の指示で練習、先生がいないときは各自、自宅で練習する日々だった。


 学校の宿題との両立が難しかったが、宿題をどうにか予定通りに進め、無事に終わったときには、気持ちの良い開放感を味わった。


 しかし、すずに関しては、疎遠になってしまった。


 LIMUでも俺からは、振ったあとだからかすぐには言葉をかけづらく、すずも話しかけてこなかったことで、完全に話しかけるタイミングを失ってしまった形だ。


 とはいえ、すずのことを諦めたわけではない


 裕太や翔太に貴司、森山さんと今後のことについて話し合っただけでなく、すずのお父さんの孝則さんともかなり密に連絡を取り合って、家でのすずの状況を教えてもらった。


 そうこうしているうちに、夏休みは開け、二学期が始まった。

                  ◇◇◇

「夏休み終わったからな。気分転換に席替えをしよう。」


 教室に入った先生の口から放たれた言葉に教室はざわめきに包まれた。


 ざわめきと言っても二種類ある。


 前の方の席の人は、歓声を上げ。

 後ろの方に座っている人は、悔しそうな顔をして、ブーイングを始める。


 ―――ちなみに俺は、どちらかと言うと前者である。―――


 それをにこやかに見守った川口先生はその声に反応することなく、をカバンの中から出し、生徒を呼んで、順番に引かせていった。

                  ◇◇◇

「じゃあ、今日からこの席になります。移動してください。」


 そう言いながら、先生が席の表を張り出す。

 俺は、、、窓側の後ろから二番目か。

 ラッキーだな。


 そう思って、席を動かす。


 ―――これで、めんどくさい授業で少しは内職できるかな。


 そう思っているうちに、席を動かし終わり、ぼーっとしていると誰かから視線を感じた。

 誰かと思ってみてみると、、、


 すずだった。


 その目の中にあるものは、未だ虚無。いや、虚無に近い怯えか。


 そんなすずに思わず声をかける。


「よ。もしかして、俺ら席近かったりする?」


 できるだけ穏やかに笑いかける。


 しかしそれに対してすずは、気まずそうに目をそらして、無愛想に「そうかもね」と言って、友達のところに行ってしまった。


 でも実は、、、こうなることは予想できていた。



 孝則さんから、家庭でのすずの様子を教えてもらっている。


 一見、何事もなかったかのように振る舞っているが、俺の話になると、

「もうその話はやめてよ!もう健太くんとは話せないんだから‼」


 と、泣きながら叫ぶらしい。


 つまりまだ心の傷が癒える前に、ふさがってしまって言う、というところか。


 正直、わかっていたとしても辛い。


 それでも、すずには話しかけ続ける努力をしなければならない。

 それでも、すずが一人で悩みを抱え込まないように注意深く観察する努力をしなければならない。


 それでも。 

 ―――きっと、努力は報われる。

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 このピンチ。皆で乗り切ってこそ、ですね!


『ヒット・フォー・ユー』

 pv増えました!ありがとうございます!

 もうちょっと増えたらいいな―っていう魂胆で、リンクを再掲しときます!

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556540516922

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