第50話
家の前に停まる豪華な車。
もしかして、、、――きのうすずを襲っていた人の一味だろうか。
あいつが暴力団の一味で、その仲間が復讐に来ているのだとしたら、、、俺一人で対抗できないだろう。
このまま交番に逃げ込んだほうがいいのだろうか、、、
そう考えていた時、その車のドアが開いた。
中から出てきたのは、、、優しそうに見える壮年の男性だった。
一瞬油断しかけたが、、、すぐに気を引き締める。
人は見た目によらないのだ。きっと。
それに、俺にようがあるとも限らないじゃないか。気にしない。気にしない。
「君が森下健太くんで合っているかな?」
―――俺に用なんかい‼しかもなんで俺の名前しってるの?
俺は、相手に失礼だとわかりながらも、思わず身構えてしまった。
しかしその男性は、それを咎めるわけでなく、むしろ申し訳無さそうにしながら、俺に話しかけてくる。
「香川鈴音の父です。少し話を伺いたいんだけど、一緒についてきてもらえるかな。」
―――え。
すずのお父さん⁉
俺は戸惑いながらも、ついていくことにした。
◇◇◇
結局俺らは近くのファミレスに入った。
ふたりともドリンクバーを頼み、適当なドリンクを取ってきてから互いに向かい合う。
「そういえばまだ名乗っていなかったね。私はこういうものだ。」
そう言って差し出してきた名刺に、恐る恐る目を通す。
すると、
弁護士
と、事務所の住所や電話番号とともに書いてあった。
しかし俺はある驚きにとらわれていた。
この人まさか、、、
そう思い尋ねてみる。
「もしかして、最近テレビに出演されたりしましたか?」
すると孝則さんは頭をかきながら、まぁ といった。
―――すずのお父さんってこんなにすごい人だったのか⁉
家が広い事に驚いてはいたが、こんなにすごい人だとは思わなかった。
孝則さんは、照れながら、「そんなことはまた今度でいいんだ。」東都真顔に戻った。
「娘が襲われたところを身を挺して守ってくれたと聞いたんだ。鈴音の親として言わせてくれ。ありがとう。」
そう言って、頭を下げる孝則さん。
俺は慌てて、
「頭を上げてくださいっ!」
というとともに再び暗い気持ちが差し込んでくる。
「僕はたしかにすず、、、鈴音さんを助けたかもしれません。でもそのあと、良くない対応をしてしまい、その結果鈴音さんの心を傷つけてしまったかもしれません。」
そう言うと、俺はうつむく。
すると、その話を知っているのか、困ったような顔をして、
「しょうがないよ。好きでもない人に、好きっていうのは難しい。だから、気にする必要は」
「違うんです!」
思わず、言葉を挟んでしまう。
孝則さんは怪訝な顔をする。
それでも俺は自分の言い分を言うことにした。
さっき、過去のことをネガティブに振り返らないって友達三人と決めたから。
「俺は、あの場ですずからの告白のOKしたら、すずが俺と会うたびに昨日のことを思い出してしまうと思ったんです。僕はすずが好きだし落ち着いたら、すずに僕から告白しようと考えていて、それで」
「もう。君の気持ちはわかったよ。」
言葉を遮られ、孝則さんの顔を見る。
孝則さんは穏やかに笑っていた。
「君と鈴音が両思いだったとは思わなかったけど、そう知った以上は二人の恋を応援するよ。障害はたくさんあるかもしれないけど、頑張れ!陰ながら応援するよ。」
俺の目からツーっと涙が流れた。
「ありがとうございます!」
「任せたよ」
「はい」
俺は涙を拭いながらも微笑んだ。
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すずのお父さん。いい人すぎる!
50話達成!
ここまで続けられると自分でも思っていなくてびっくりしてます‼
読者の皆さんのおかげです!
これからもよろしくおねがいします!
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