第47話

 森山さんから送られてきた地図を元に、道を走っていると、少し大きくて古めかしい家が出てきた。


 ―――ここが、すずの家?デカすぎだろ⁉


 すずの親は国会議員や医者レベルのお金持ちなのだろうか。

 そんなことを思いながら近づいてみると…なぜか一つの窓が割れていることに気づいた。


 すずは外出していると言っていたが、こんなに派手に割れている窓を放って出かけるはずがない。


 その後、気がつくと、俺は割れた窓からすずの家に侵入していた。

 直感に従って突き当り右の部屋に入ると、そこでは……


 男がすずに馬乗りになって服を脱がせていた。




 え?



 思考が一瞬フリーズする。


 男は30歳くらいだろうか。


 小太りでメガネを掛けている。


 そしてすずの様子は…天井を見上げているが、その表情はまさしく”無”であった。


 それを見て、男を思い切り投げ飛ばす。


 もともと力が弱い俺だったが、野球部の練習のおかげだろうか、簡単に投げ飛ばすことができた。


 そしてその男は、俺の姿を見るやいなや、「クソッ!もう少しだったのに!」と独り言を言いながら、走って逃げよう窓の方に走っていった。


 俺も追いかけようとしたが、走り出す直前にすずの姿が視界に入った。


 先程と一緒で目に映るのは”無”。


 そんな彼女をほっていくという選択肢は健太にはなかった。


「すず大丈夫か⁉」

「・・・・・・・・・・・・・・」


 何も反応しないすずを思わず抱きしめる。


 するとすずは、最初肩をびくっと震わせたが、ゆっくりと、弱々しくはあるが、俺に抱きつく力を強めていった。


「ねぇ、健太くん…」

 しばらく抱きしめていると、ふとすずが言葉を発した。

「どうした?」

 大変なことが起こった後なので、刺激しないようにできるだけ優しい声で尋ねる。


 でもすずに言われたことは、そうやって配慮することをも一瞬忘れてしまいそうになるような内容だった。


「健太くん……すきだよ。すきだよ。すきだよぉ…お願い。私と付き合ってください。」

「ッ!」


 驚いて俺は息を呑む。


 それはあまりにも突然の告白で対応することができなかったのだ。


 すずがうつろな目でこちらを見ていることに気づき、我に返った。


 相変わらず、すずの目に映っているのは”虚無の世界”。


 それを見た俺は一つ息を吸って覚悟を決め、すずに向き直った。

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