第41話 きっかけ

「それで、いつ告るんだ?」

「うーん、、、」


 すずに告白することを決めたのはいいが、いつ告白するのか決めきれずにいた。


 その様子を見た裕太は、

「俺が思うには、お前にはきっかけが必要なんだと思うんだよね?」

 と言った。


「きっかけ?」

「うん。言い換えたら告白せざるを得ない状況を作るってことかな?」

「なるほど、、、? 具体的にはどんな感じ?」

「そうだなあ、、、」


 裕太はウンウン悩んでいたが、やがてなにか思いついたようにぱっと顔を上げて、俺に

「今度野球部で秋の大会があるじゃん!」

「まだ、夏の大会も始まってないけどな。」

「どうせ俺たち1年はレギュラーで出られないでしょ。」


 そうなのだ。

 今の野球部には、高1が3人、高2が6人、高3が5人所属している。

 だから夏の大会はベンチ入りはできても試合には出られないだろう。

「まあな。でもそれがなにか関係あるのか?」

「大ありだ。俺たちは秋の大会からはレギュラーになるわけだ。」

「あーそういえばそうだったけな?」

「おまえ、、、自分のことなんだからしっかりしてくれよ、、、」


 裕太が苦笑を漏らす。

 正直高校から本格的に野球を始めた俺が、試合に出ることになるなんて頭では理解していても、なかなか実感が開かないものなのだ。


「まあ、いいや。俺がその試合でヒットを打ったら、香川さんに告れ。」

「ブッ!なんでそうなるんだよ!論理が飛躍しすぎだろ‼」


 俺が突っ込むと裕太は大真面目な顔で言った。


「こうやって決めておいたら、おまえは告白せざるを得なくなるだろ。」

「そりゃそうだけど、、、」

「しかも罰ゲームみたいなのりで軽く行けるかもしれないしな。それでいいだろ」


 裕太がこれでもか、というドヤ顔をしてくる。


 しかし俺には一つ引っかかるところがあった。


「うーん。なんかそれって俺が告白するのかどうかって他人任せってことになるんだよな。」

「そういうことになるな。」

「それってなんかモヤモヤするんだよな。」

「どうして?」

「うーん、、、なんか俺は罰ゲームってノリで言いたいわけじゃないし、、、なによりそれはすずへの告は、、、というより俺が好きな人への告白をするときのマナーとして失礼だと思うんだ。」


 俺が真剣に裕太に言った。すると、裕太は急に幸せそうな顔をし始める。情緒不安定なのだろうか。

「どうしたの、急に?」

「いや、尊いなぁと思って?」

「なにが?」

「そんなに香川さんのこと考えてるってことだろ?やっぱり初心というかなんというか、、、ほんとに尊い。」

「は、恥ずかしいからそんなこと言わないでよ!」

「ははは!耳まで真っ赤じゃん!」


 全く!急にからかってこないでほしい。



 ひとしきり笑ってから、裕太は俺にもう一度真面目な顔をして向き直った。

「で?それじゃあどうするの?」

「俺、、、自分でヒットを打ったら、そのってことで告白することにする!」

「そうか。――頑張れよ!応援してる!きっと俺だけじゃなくて翔太も、貴司も。」

「ありがとう!」


 そう言って、二人でがっちり握手した。

「ヒット打てるように頑張ろうな。」

「ありがとう!」


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健太えらいなぁ。裕太もよく引っ込み思案の健太をここまで持っていった!

健太がヒットを打てますようにと思う方は、星とハートをください!

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