第26話 体育祭準備

 ゴールデンウィークが終わり、みんなが学校で再び顔を合わせた。

 みんなの顔は生き生きしていた。その理由は、なんといっても、この月末にある体育祭に向けての練習が始まるからだろう。どんな学校でも体育祭の練習の時期になったら、盛り上がるだろうが、うちのような進学校も、その例外ではない。むしろ、普段からしなければならない勉強から解放されるのだから、その盛り上がり方は尋常ではない。さらに一部の男子は、女子にかっこいいところを見せようと躍起になるので、このシーズンになったら、うちの学校は全体的に高揚感に包まれる。


 ところで、うちの学校の体育祭は、男子、女子ともにクラス別対抗リレー、徒競走、借り物競争のどれかに出場しなければならない。特にリレーは配点が高いので、クラスで一番足が速い二人ずつが出て、後の人たちは自由という感じだった。


 そして、なんとその男子二人のなかに、裕太と貴司が入ったのだ。研修旅行の時に、走るのが、二人とも抜群に早いとは、思っていたけど、まさかこんなに早いとは思っていなかったのでとても驚いた。


 そして、あまりものの俺と翔太は、仲良く徒競走に出場することにした。ちらっと女子の方を見ると、すずは借り物競争に出るらしかった。すずは何を借りることになるんだろう?大きなボールとかそんな感じかな?すずは男子のこと苦手だから、お題で『男子』とか出なかったらいいな、と思った。

                  ◇◇◇

 そんなこんなであっという間に体育祭前の最後の練習の日を迎えた。

 リレーの選手たちは最後までバトンパスの練習をしたり並び順を変えてみたりして試行錯誤していた。また、借り物競争の人たちは、お題を引くまでの障害物を簡単に通過できるように、一生懸命練習していた。それに対して、僕ら徒競走の選手たちは、ただ走るだけなので練習もへったくれもなかった。


 今日も、本番前最後の練習だったが、徒競走の選手の間に、あまり緊張感はなかった。


 ただ、俺と翔太は違った。


 俺と翔太は同じレースで走るので、二人の間に優劣が付く。だから、練習のたびに負けた方が勝った方にジュースを一本おごるという勝負をしていた。かなりいい勝負で、今までの対戦結果は三勝三敗と、拮抗していた。


そして今日勝って通算成績で勝ち越してやる、と二人とも意気込んでいた。


そして俺らの走る順番がやってきた。


「位置について、よーい、どん!」

体育教師の掛け声で俺たちはいっせいに駆け出す。

スタートダッシュでわずかに遅れてしまった俺は、なかなか翔太を追い抜くことができない。抜くタイミングをうかがっていたら、すぐに最終コーナーになってしまった。


―――くそ!今回は負けてしまうのか⁉


そうあきらめかけたその時、俺の視界にすずがうつった。

視界にうつったすずは、俺の方を向いて、

「がんば!」

と叫びながら、応援してくれた。

それを見た瞬間、急に、

―――負けられない!

と思った。そして、気づいたら翔太を抜き去って一位になっていた。

「なんだよ最後のスピード!速すぎやろ!」

と、悔しそうに翔太は言っていた。


それにしても、なんで、すずが視界に入った瞬間に俺は負けられないと思ったんだろう。


そう思ったが、ついにその答えはわからなかった。


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 さて、書きながら気づいたんですけど、最近鈴音と健太の直接の会話があんまりなかったです。申し訳ない!

 でも、次の話で久しぶりに出てくると思うので楽しみにしておいてください!


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