第22話 力試し

  放課後。

 俺は、やっと慣れてきた部活に行って、キャッチボールをしていた。

 うちのチームには、チームを組める最低限のメンバーしかいないから、俺ら一年生も今の高三が引退したら、レギュラーとしてどこかで出ないといけない。その時に恥ずかしくないように、今のうちにできる練習はしておこうと言う考えだ。


「一回練習やめて!先生に礼‼︎」

 しばらく、裕太と翔太とキャッチボールしていると、突然キャプテンの吉田琢磨先輩が大きな声を上げた。

 続いて、他の先輩たちも頭を下げながら、

「お願いします!」

 と言った。

 何が起こったのかわからず俺ら一年生がキョトンとしていると、みんながお辞儀をしていた方向から、優しそうな男の人が歩いてきた。

 そして、俺らの方に近づいてきて、

「君たちが新しく入って来てくれた、一年生かな?」

 と話しかけられた。すると、そのタイミングで吉田先輩がこっちに走って来て、

「大橋監督こんにちは!この子たち3人が野球部の新入部員です!」

 とニコニコしながら声をかけた。

 吉田先輩の言葉を聞く限り、この男の人が野球部の監督なのだろう。

 すると、その言葉を聞いた男の人が、

「ちょっとついて来てくれるかな?説明しないといけないことがあるから。」

 そう言って、ホームベースの裏側にあるベンチに向かって歩き始めた。そして俺らも、その男の人について行った。

                  ◇◇◇

「さっきの会話からもわかったかもしれないけど、僕が野球部の監督兼顧問の大橋です。よろしく!」

 最初にそう声をかけてくれた大橋監督。そして、そのあと急に声を若いかんじにして、

「でも監督なんて呼ばないでください。BIGBRIDGE!BIGBRIDGEって呼んでください‼︎」

 と言いながら、おなじみのマークを右手で作って、ニヤッとした。そう、あのBIGBOSSのモノマネを入れてきた。入れてきたのだが、

 ――――いや、そのままやないかーい!

 そのままやないかーい!

 無駄に高いギャグセンスに、急に監督に呼ばれて緊張していた俺ら3人は一様に吹き出してしまった。


「で、冗談は置いといて、野球部監督の大橋です。ただし、監督なのは肩書きだけで、野球のことはほとんどわかりません。ですから、うちの学校では、サインはキャプテンが出すようになっています。普通の学校とは違うということを留意してください。」

「「「はい」」」

 うちの学校は部活のことを考慮せずに教員を採用するため、ちゃんとした顧問がいることは珍しいと聞いていたので、それは3人とも想定済みだった。

 その反応を見た大橋監督(BIGBRIDGE)は満足そうに頷いて、

「では、先輩たちを呼んできてもらえるかな?」

 と、俺達に言った。

                  ◇◇◇

 先輩たちを呼んできた俺たちは再び監督の話を聞くために整列していた。

「急に呼んですまない。限られた練習時間を邪魔したくないから、手短に言おう」

 そこで言葉を一度切って、こう告げた。

「ゴールデンウィーク中に練習試合を行う!」

 その言葉を聞いた先輩たちはガッツポーズをして喜んでいる。

 そんなに試合がしたいのだろうか、そう思っていると、吉田先輩が驚きながら、

「あんなに頼んでも練習試合をセッティングしてくれなかったのにどうしたんですか?」

「まあ、気分だよ」

 と言う会話を交わしていた。多分、この監督、不思議な人なんだな。

「で、相手はどこなんですか?」

 違う先輩が尋ねる。すると待ってましたと言うふうに、大橋監督はニヤリと笑って、

「桜井学園だよ」

と言った。



「「「「「「「「「「、、、えー!」」」」」」」」」」

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