第20話 初デート(仮)④

「と、とりあえずこれ着て!」

 これ以上このままいたら、すずが風邪をひいてしまうかもしれないし、この後ずっとドキドキしっぱなしになってしまいそうだったので、とりあえず、俺が持っていた上着を羽織ってもらう。

 そうしているうちに、慣れてないのにさっき俺のことをからかったのが恥ずかしくなったのか、ただでさえ赤くしていた顔を今にも弾け飛びそうな真っ赤なトマトのような色の顔をしていた。

「すず?行くよ?」

「あぅぅ。はい、、、」

 恥ずかしがっているすずもかわいいのだが、ずっとこのままだと、流石にすずがかわいそうだと思い、ある提案をする。

「この後食事する前に、一回お土産屋さん行こうか!」

「何で?」

「いつまでも俺の服着てるの嫌だろ?お土産屋さんにはたぶんTシャツくらい売ってると思うから」

「、、、じゃないよ。」

「ん?」

「別に嫌じゃないよ!その、むしろ、、、気づかってうれしいかも」

 忘れていた。すずは男子としゃべることができないのが、自分のせいだと思うくらい優しいのだ。そんな優しい彼女が、服の持ち主の俺に向かって、嫌なんて言えるはずがない。

 そこで俺はこう言いなおす。

「いや、水族館の絵がプリントされてる服って、多分可愛いのが多いから、多分すずに似合うと思うよ?」

「そうなのかな、、、まあ、健太君がそういってくれるのなら行こうか!」

 そういって、先にお土産屋さんに行くことにした。

                  ◇◇◇


「うわー!すごい!!かわいい服がたくさんあるね!」

 お土産屋さんの服売り場に来たすずはそう言って目を輝かせている。ただ、少しすると、目を伏せて、

「でも、日ごろクールキャラの私には合わないから普段使いはできないかな・・・」

 と悲しそうに言った。そしてその表情を見て、俺は気づいた。

「いや、そんなことないと思う。むしろ、こういうかわいい系の方がすずに似合ってると思うし、その、好きだよ?」

「っっっっっ!かわいい⁉好きっっっっっ⁉ぅぅぅ、、、まあ、健太くんがそうやって言ってくれるなら、なら、これのタグを切ってもらってくるね!」

 俺が言った言葉にすごく過剰に反応していたが、そのあと、嬉しそうに、ゴマアザラシがプリントされた服を手に持ち、タグを切ってきてもらいに店員のところに行こうとする。しかし、

「ちょっと待った!」

「ふぇ?」

 俺は小走りで、行こうとするすずを引き留めた。

「あ!ほかの服の方がよかったのがあった?」

「いや、そうじゃなくて、、、」

 そういって、俺はのようにすずを抱き寄せて耳元でささやく。

「すず、またナンパされちゃうよ?俺が彼氏のふりするからちょっと芝居に付き合って」

 そういうと、すずが顔を赤くして俺についてきた。きっと顔を赤くしたのは、ナンパをされる可能性を忘れていたのが恥ずかしかったのだろう。そう思ってくれているほど俺といるとき気が抜けるようにすずがなったのなら、今日のデートの意味があったな、と俺は頬を緩ませた。

                  ◇◇◇

「今日はありがとうございました!」

「こちらこそありがとうね!」

 あのあと一緒に水族館の中のレストランでいろいろあったが食事を済ませ、その後1時間くらいしてから水族館を後にした。

 そして、今日の集合場所だった、俺らの学校の最寄駅に戻ってきた。

 ただし行きの時と違う要素が二つ、

 一つ目は、俺が香川さんのことをすずっていうようになったこと

「あの――。そんなに改めてまじまじと見られたら少し恥ずかしいんだけど?」

 二つ目は今日の朝はデニムジャケットとロングスカートという大人の雰囲気のコーデだったが、今は、デニムジャケットが、可愛いゴマアザラシのTシャツに代わっていることだ。あれだけ大人の雰囲気を醸し出していたロングスカートも上の服が変わるとかわいい雰囲気が出ていて不思議だと思った。

「いや、ごめんごめん。やっぱりかわいい人が、何を着ても服が映えるのかなーと思って」

 素直に思ったことを口にすると、すずは顔を真っ赤にしながらうつむいて、

「からかわないでよ!そんなこと言ったって何もおごらないんだからね!」

 といわれた。


「そんなこと期待してないよ!じゃあ、もうお互い帰ろうか!じゃあねー!」

「うん!またどこか連れてってね!」

 また、か と健太は思った。

 早く男子への苦手意識を払拭してもらいたいという気持ちの一方で、また二人でどこかに出かけられることに対して喜んでいる気持ちもあり、なんでそんなことを思ってしまうのか、健太にはまだわからなかった。________________________________________________________________________________________

 これでデート(仮)は終わりです

 2人の距離が縮まってよかったですね!

 2人の食事の様子まで書いてしまうと冗長になってしまうと思ったので、書くとしたらまた何かの記念に書くSSにしようと思います!

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