第19話 初デート(仮)③

 その後、すずが落ち着き、人前に出た。俺はさっきの反省を生かし、すずがナンパされないようにそばにぴったりついていた。そしてなぜか、すずの顔がほんのり赤くなっていた。

 このあとは、しばらく水族館を回って、昼ご飯を食べてから、昼の1時のイルカショーを見ようと思っていたのだが、時間が無くなってしまったので、昼ご飯を後に回すことにした。


「うわー!すごいねー!」

「ほんとに色鮮やかなサンゴだね!」

 まず南国の魚が集められた水槽のゾーンに行った。特に意図もなく、ふらっと立ち寄っただけなのだが、かなり部屋が明るく、ナンパの心配もないし、なによりさっきの出来事で沈みかけた気分が少し上がってきたのでよかった。


「…きれいだね。」

「フェ⁉そそそそういうのはそんなさらっというもんじゃないよ!」

「そうかな?すずもそう思うでしょ?」

「そんな、、、自分のことをそんな風に言うなんてできないよ、、、」

「…ん?何のことをすずは言ってるの?サンゴのことだよ?」

「……そうだよね。うんきれいだね。」

 俺の言葉に急に過剰に反応したら、顔を真っ赤にしながら、棒読み、さらにジト目をしてきた。一体なんでそんな表情をするのかわからなかったが、とりあえずそんな表情すらかわいくて少しドキッとしてしまった。

 そんな気持ちをごまかすように笑うと、

「もう、笑わないでよ!」

 と怒られてしまった。

                  ◇◇◇

 その後、適当に回ったあと、早めにイルカショーが行われるプールにいった。

 もうすでに、前の方の席が埋まっていて、俺らは前から3番目に座った。

「ねぇねぇ、このショーって水飛び散ってくると思う?」

「いや飛び散ってこないだろ。」

 ここは三列目だが、高さが結構あるので、イルカがすごい勢いで水に飛び込まない限り、水ははねてくることはないだろう。そう思っていた。




 、、、、、、ショーが始まる前の自分を呪いたい。ショーが終わった後の健太はそう思った。

 すずを慰めたときに冗談で、

「どうせこの後のイルカショーで濡れちゃうから気にするな」

 みたいなことを言ったけど、本当のことになってしまった。

 とにかく勢いがすごかったのだ。いきなりイルカが5mくらい飛んだかと思うと、そのまま水にダイブしてその勢いで水がかかった。

 そのあとは圧倒されっぱなしであまり覚えていないが、1分に一度くらいのペースで水がかかってきたような気がする。とにかくびしょぬれになってしまった。


「結構水かかっちゃったね」

 そういいながら鈴音を振り返った健太は不覚にも目を見開いてしまった。

 鈴音は水分を取るために着ていたデニムジャケットを脱いでパタパタふっていたのだが、その下まで水でぬれていて、それが肌に密着していたのだ。すると、あまり意識しないようにしていた女子特有の凹凸がくっきりと浮かび上がってしまっていたのだ。


 思っていたよりも主張が激しい凹凸に目が釘付けになっていると、

「そうだね、って何をそんなにまじまじ見て、、、キャッ!」

 視線に気づかれてしまった。

 そしてそのあとに気づく。

 ―――中2の夏祭りの後から、年頃の男子の下心丸出しの視線が苦手なんだよね。

 以前のすずとのLINUでの会話の一文だ。それなのに、唯一頼りにしてくれていた俺がそんなところに視線を釘づけるのは、最低の行為だと思った。

 これはどう謝ってもゆるされることじゃない。そう思いながら、

「すいませんでした!」

 と言って、がばっと頭を下げた。


 恐る恐る頭を上げてみると、顔を真っ赤にしながら

「健太くんのむっつりスケベ」

 と言われた。あまりにも予想していた反応と違っていたので、思わず

「おこってないの?」

 と訊くと、

「へー!健太君も男子なんだね!そういうの興味ないと思っていたので意外だなー」

 とからかってきた。

 ただ、すずも恥ずかしいのか、顔が真っ赤だった。一方の俺もさっきの恥ずかしさに顔を真っ赤にしていたので、双方HPは0だった。

________________________________________________________________________________________

 この話から呼び方だけでなく健太の思考の中でも「すず」になりますので、よろしくお願いします。(第三者目線では健太、鈴音のまま)


さて、筆者は鼻血を出さなかったこ健太をほめるべきだと思います。

ただ、普通なら嫌な視線を許してしまった理由を、鈴音本人はもう自覚していたりするんじゃないかなー。

ここまで読んで、わからない読者の方がいたら、あなたは健太と同じ鈍感系主人公です!

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