第18話 初デート(仮)②
ナンパしていた男の前から、鈴音を連れて逃げてきたが、内心は本当にビビっていた。健太は、勉強はできても、運動はできない。ましてや、人と殴り合いになったら勝てるわけがないと、自分で思っていた。
しかしチケットセンターから帰ってきた時、鈴音が泣きそうな表情をしているのを見て、咄嗟に駆け出していた。そのあと、翔太の真似をして関西弁を使って少しでも威圧感を出して、逃げたのだった。
◇◇◇
水族館の中に、さっき買ったチケット2枚で入り、人気のなさそうな場所に連れて行く。
そこでようやく俺は、振り返ると、そこには震えながら、どうにか笑みを浮かべた香川さんがいた。
「健太くんと話せるようになったから、他の男の人とも話せると思ったんだけどな、、、私ってダメだね。」
その笑みが、あまりにも痛々しくて、健太は思わず鈴音を抱き寄せていた。
「ケ、ケ、健太くん⁉︎」
「鈴音!まず鈴音を置いていって悪かった。俺の完全な不注意だ。本当にごめん!」
「、、、だから、それは私が悪か」
そうして、自分を責めようとする香川さんの言葉を遮って、俺は言葉を紡ぐ。
「違う!そんなことない!中2の時のことがフラッシュバックしたんだろ?しょうがないことなんだ!悪かったのは、それを知っておきながら、鈴音を一人にしてしまった俺だ!」
「でも、、、」
それでも、自分に責める原因を探し続ける香川さん。彼女は優しいから、きっと男子と話せないことを悩んでいた間、ずっと自分を責めていたのだろう。
そんな香川さんを、俺はさらに強く抱きしめる。
「でも!俺はそんな怖がるようなことはしないから!あと、さっきの後に言っても説得力がないかもしれないけど、俺がついてるし、いざとなったら守るから!だから、、、」
そこで一回言葉を切って、
「辛かったら、一人で抱え込まずに、泣いていいんだよ?」
スッと、一筋の涙が頬を伝った。
その一筋の流れが二筋、三筋と増えていき、、、
「ウッ、、、ウッ、グスッ!」
嗚咽をあげた。
いつも、学校では男子とは話さず、女子の前ではクールなキャラで定着している鈴音。
一度作り上げたキャラを変えるのは難しく、きっと誰にも打ち明けることができなかったのだろう。
誰にも弱みを見せられない。
その考えが崩れた香川さんは俺の胸に顔を押し当て泣きじゃくっていた。
「怖かったね。ごめんね。」
その背中をさすってあげることしか、今の俺にはできなかった。
◇◇◇
「ふー、健太くんありがとう。もう大丈夫だよ。それで、えーっと、、、とりあえず恥ずかしいから一回離れていいかな?」
10分くらい泣き続けようやく落ち着いたのか、泣き止んだ香川さん。しかしその言葉で自分が今何をしているのかに気づき、香川さんのそばから飛び退いた。
「ほんっとにごめん!」
「フフッ!大丈夫。彼氏みたいで安心したよ!ありがとう!」
そう言って、許してくれた。
「というか、こっちも健太くんの服汚しちゃってごめんね?」
「それは全然いいよ。どうせこの後のイルカショーで濡れちゃうから」
「それとこれとは違う気がするんだけど、、、まあいっか!もうちょっとここにいてもいい?人に泣き顔見られたくないから」
「そうだね、もうちょっとここにいようか」
そういうと、香川さんが、何事か思いついたような顔をする。
「そういえばさっきナンパから私を助けてくれた時、私のこと彼女って言ったよね?」
「それは、、、すいませんでした!」
「私、初めて彼女って言われたんだけどなー。この責任はどうやって取ってくれるのかなー?」
これは完全に俺が悪いな、と思った。いくら頭に血が上っていたとはいえ、あれは良くないと思って自分でも反省していた。
「、、、なんでもします。」
「言ったね?」
何かを企んだ顔をした香川さん。そして、
「じゃ、私のことをすずって呼んで!」
「えっ、、、それは、、」
「なんでも、でしょ!」
「、、、はい。」
いきなりすぎて、恥ずかしかった。でも香川さんと、いやすずとの距離が縮まったのだと考えたら嬉しかった。
そして思った。
――今日のすずは大胆だなぁ________________________________________________________________________________________
更新が遅れて、ごめんなさい!
表現について色々考えてたので遅くなりました!
ナンパを助けて、泣きはらした後の鈴音は大胆でしたね!
でも、その前に手を繋いだり、抱きしめたりした健太の方が重罪のような気が、、、まあいいか。
二人の中の距離感もだいぶ近くなったみたいです。
すず!ナイス!
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