第6話 なんでもしますから、、、
その後ホームルームが終わり、初日の学校は解散となった。最後に研修旅行の班長に押しつけられたのは納得がいかないが、高校での新しい友達ができたのはよかった。我ながら、かなりいい高校生活の滑り出しだったと思う。
そして今、俺は一人で靴箱に行って外履に履き替え外に出た。他の3人のうち、裕太と横田くんは野球部に、残りの柴田くんはテニス部に見学に行くらしい。俺は運動も苦手で、文化部にも興味がないので、どこにも見学に行かず、まっすぐ帰ることにしたのだ。これで帰宅部のエースとなるわけだが、悪いことばかりではない。これで放課後に、友達と遊ぶこともできるし、彼女ができた暁には部活の時間を気にすることなく、デートすることができるのだ!
そんなことを考えながら、校門に向かって歩いていると、
「も、も、森下くん!」
と誰かに呼ばれた。
振り返ると、そこには香川さんが顔を俯かせながら、俺の袖をチョンと摘んでいた。
(うわ!かわいい、、、じゃなくて、なんだろう?)
「えーと、香川さんだよね?どうかした?」
内心動揺していたのを隠しながら、平静を保って訊ねる。
すると、
「こっちにきてください!」
そう言い残して、どこかに歩いていった。それを見て、
(今日身体を触ったことに対して文句でも言われるのか?それならあまりにも理不尽なんだけど)
と思いつつ、ついていった。
◇◇◇
連れて行かれた先は、人気がほとんどない校舎裏だった。
あまりにも人気がなかったので、香川さんのSPか誰かにこの後殴られるのではないかという考えが頭を掠め、ゾッとした。
しかし、当の香川さんは、何かを言おうとしては、口を噤みもじもじする、というながれをさっきから何回も繰り返している。
痺れを切らせた俺は、これ以上印象が悪くならないように細心の注意を払いながら、
「どうかしましたか?」
と訊ねる。
すると香川さんも意を決したようにこっちを見て、
「まず今日の朝は助けていただいて、ありがとうございました。おかげで、助かりました。・・・それにもかかわらずその後、感謝の言葉も伝えずに逃げるみたいに行ってしまって、ごめんなさい!これのお詫びになることがあればなんでもしますので許してください…!」
と、一息に言った。
『なんでも…?』
なんて、言葉を聞いてあんなことやこんなことをお願いしたりはしない。まぁ一瞬想像してしまった自分もいるのだけれど。
さっきもじもじしていたのは、俺が無理な内容をリクエストした時に対応する覚悟を決めていたのだろうか。
そんなことを考えながらも、
「いや、朝助けたのは人として当然のことだと思うし、気にしてないから。あと逃げたって言ってたけど、俺だって危険が迫ってるのに気づかず、異性に助けられた後は気が動転するだろうし、だから何もしなくても、大丈夫だよ。」
と言ってあげる。これで安心させられたらいいな。
しかし、それを聞いて彼女はしばらく黙ったあと、
「ワワ、分かりました!えーとしし、失礼します!」
そう言って走り去ってしまった。女心はわからんと思っていると、彼女の顔が見えた。
ーーー頬がほのかな朱色に染まっていた。
________________________________________________________________________________________
ようやくラブコメ要素が入ってきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます