第82話 統率の外道
米軍がフィリピンに来寇したとの報に接し、連合艦隊は捷一号作戦を発動した。
これを受けて砲戦部隊の第一艦隊と第二艦隊、それに機動部隊の第三艦隊は慌ただしく抜錨、同地で戦う友軍の救援そして米上陸部隊ならびに輸送船団の撃滅をその目標として出撃した。
第一艦隊
戦艦「大和」「武蔵」「信濃」「紀伊」「尾張」「駿河」「近江」
重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」「利根」「筑摩」
重巡「青葉」
駆逐艦「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」
重巡「衣笠」
駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「黒潮」「親潮」「陽炎」「不知火」
第二艦隊
戦艦「長門」「陸奥」「金剛」「榛名」
重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」「妙高」「羽黒」「足柄」「那智」
重巡「古鷹」
駆逐艦「清波」「玉波」「涼波」「藤波」「早波」「浜波」「沖波」「岸波」
重巡「加古」
駆逐艦「長波」「巻波」「大波」「朝霜」「早霜」「秋霜」「清霜」
第三艦隊
甲部隊
「加賀」(零戦五六、九七艦攻三、四式艦偵一六)
「龍驤」(零戦二四、九七艦攻九)
「日進」(零戦二四、九七艦攻三)
軽巡「阿武隈」
駆逐艦「秋雲」「夕雲」「風雲」「松」「竹」「梅」「桑」
乙部隊
「蒼龍」(零戦四八、九七艦攻三、四式艦偵六)
「瑞鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
「祥鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
軽巡「五十鈴」
駆逐艦「朝雲」「山雲」「桃」「桐」「杉」「槇」「樅」
丙部隊
「飛龍」(零戦四八、九七艦攻三、四式艦偵六)
「千歳」(零戦二四、九七艦攻三)
「千代田」(零戦二四、九七艦攻三)
軽巡「鬼怒」
駆逐艦「満潮」「霞」「樫」「榧」「楢」「櫻」「椿」
第一艦隊は「金剛」型戦艦が抜けた代わりに「大和」型戦艦の五、六、七番艦である「尾張」と「駿河」、それに「近江」が新たに戦列に加わっている。
これら三隻は書類上では「大和」型戦艦と同型扱いされているが、艦底が二重底から三重底に、高角砲が八九式一二・七センチ連装高角砲から九八式一〇センチ連装高角砲になるなど、防御力や対空能力が強化されている。
「尾張」ならびに「駿河」と「近江」には「大和」や「武蔵」それに「信濃」や「紀伊」から転属してきた者以外に、マリアナ沖海戦で撃沈された「伊勢」と「日向」それに「山城」と「扶桑」の四隻の戦艦の生き残った将兵らが新たに乗り組み、決戦を前に連日にわたって猛訓練を重ねてきた。
一方、大勢の乗組員が転出した「大和」と「武蔵」それに「信濃」と「紀伊」には「比叡」ならびに「霧島」の元乗組員らがその穴を埋めている。
それら第一艦隊の七隻の「大和」型戦艦と六三門の四六センチ砲は帝国海軍の最強戦力であり、また最後の希望でもあった。
機動部隊はマリアナ沖海戦で「赤城」と「龍鳳」、それに「瑞穂」の三隻の空母が撃沈されて数が減ったために第四艦隊が解隊され第三艦隊のみとなった。
また、同海戦では行き過ぎた空母の集中運用によってそれらが同時に撃破される憂き目にあったことから、空母は三隻でひとつのグループとしている。
ただ、こうなってくると護衛艦艇が不足してしまうので、海上護衛総隊から旧式軽巡と戦時急造駆逐艦を引き抜き、それらを臨時に組み込んでいる。
戦時急造駆逐艦である「松」型は量産性を優先させた結果、一二・七センチ高角砲が三門に五三センチ六連装魚雷発射管が一基という弱武装のうえに二七ノット強という駆逐艦としては極めて脚の遅い艦となってしまった。
だが、一方でソナーをはじめとした対潜装備は最新式のものを備えており、マリアナ沖海戦で猛威を振るった米潜水艦に対する心強い用心棒として期待されている。
第一艦隊は「マーシャルの猛将」として名高い角田中将、第二艦隊は鉄砲屋のエリートである宇垣中将、第三艦隊は海軍航空の第一人者である大西中将が甲部隊を直率し乙部隊と丙部隊は二航戦司令官と三航戦司令官がそれぞれ指揮を執る。
これらのうち第三艦隊は予想戦闘海域に到達すると同時に索敵機を出すことになっていた。
索敵機は帝国海軍では初めてチーム単位とし、一機の四式艦偵に対して一個小隊四機の零戦がこれに同行する。
これら零戦のうち半数の二機は四式艦偵の護衛ではなく、別の目的があった。
その腹には増槽ではなく爆弾を抱えている。
第三艦隊司令長官である大西中将をして「統率の外道」と言わしめたそれは、搭乗員に十死零生を強いる、もはや戦法とすら言えないものだった。
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